━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
山田玲司のヤングサンデー 第324号 2021/1/11

「不良」と「本質」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今年も「ペギラの季節」がやってきました。


長年メルマガを読んでくれてる方にはお馴染みですが、僕は寒くなると必ず「怪獣ペギラ(ウルトラQ)」の事を書いてしまう。


「怪獣ペギラ」を調べると「南極に生息する怪獣。大国同士の核実験の放射能の影響でペンギンが突然変異したと言われており・・」とある。


え?あいつ元ペンギンなの?!


にしては顔は鳥じゃないんだ。羽は生えてるけどコウモリ系・・

とかツッコミ所はあるけど、物語が凄い。


「第14話では東京に襲来。南極が原子力発電所の事故で温暖化して生存に適さない温度となったため、北極へ向かう途中に東京で休憩したところを万城目に推測された。周囲を極低温に氷結させて自衛隊も返り討ちにし、東京を蹂躙する。元零戦のパイロットであった浮浪者・沢村照男の操縦するセスナ機の体当たりで、爆薬を混合したペギミンHを浴びて逃げ去った・・・」


なんてウィキに書いてある。


重くて鋭い社会派ドラマで、物語に作り手の体重が乗っているのがいい。


ウルトラQが生まれた時代「核実験」「原発」「戦争の犠牲者」「公害」「失われていく人間性」みたいな事が問題になっていて、作り手はそれらを「子供達」に伝えようとしたわけですね。


そんなわけで当時の子供である「山田玲司」はこんな感じになったわけです。


「このままじゃやばいぞ!君がみんなを助けるんだ!」

「うん!僕が世界を救うよ!」


・・なんて言っている時代は良かったけど、2021年の世の中は本物の「世界の終わり」が来てしまった感じだ。


日本海側の大雪に加え世界的なコロナの波が凄まじい勢いで襲いかかっている。

ロンドンでは「ロックダウンしても手に負えない」という悲鳴が聞こえる。

アメリカでは1日約4000人の人が感染で亡くなっているという。

そんな中アメリカ連邦議事堂が暴徒に襲撃されて占拠され、4人が死んだとか・・


SNSには「コロナは存在しない」とか「バイデンはすでに逮捕されている」とか意味のわからない言葉が乱れ飛んでいる。

「病床は限界」と「大混雑の初詣」のニュース。

「半端な緊急事態宣言」に「業者の悲鳴」なぜか決行される「駅伝」と「大相撲」・・


ペギラは追い返せばいいけど、この複合的な混乱は単純に解決できそうにない。




【俺のバッドボーイズ】


そんな中、我らがおっくんがSNSにこんな投稿をしていた。


『俺の憧れたバッドボーイズ達は何をしてるんだろか


どの時代にもいる、不謹慎で破滅的で不敵なクソ野郎たちはこの時勢に何をしてるんだろか


調べる気もないが、そんなことばかり考えてる


結局は平時だからイキがれただけなのか


この自粛の全体主義に馴染めなさすぎて資本主義を愛してしまいそうだ』


なんて言ってる。

「資本主義を愛してしまいそう」はよくわからないけど「俺の憧れたバッドボーイズ達は何をしてるんだ」って感じはわかる所もある。


僕にとってはそれは「ウルトラQ」を作っていた「正しい大人達」なのだ。


そんなわけで僕はおっくんに電話して「バッドボーイズ問題」の話をした。


御存知の通り我らがヤングサンデーは去年の感染拡大から基本的にリモート放送を続けている。


ヤングサンデーの強みでもある「現場のグルーヴ感」を奪われての放送はやってる方も苦しいけど、出演者もスタッフも多い僕らは「リモートで面白い放送をする」という決断したわけだ。


おっくんもそこは十分理解していて、彼も自粛を続けている。


ヤングサンデーの目的は「ご機嫌に知的好奇心を満たす」というのがメインなので「誰かが感染してもスタジオでやる!」なんてのはちょっと違う。


ほとんどの「障壁」に関しては「うるせーやってやる!」てなノリで進んできたヤングサンデーだけど、今回ばかりはそうもいかない。


「6時間ぶっ通し放送」「ヤンサンフェス」「ヤンサン美術展」とは違うのだ。


その辺「ヤンサンの孫悟空」であるおっくんは理解しつつも「暴れられないジレンマ」にもがいているわけだ。


何よりもきついのは「社会がどうだろうがやりたいようにやる」と言っていた「ロック」や「パンク」や「不良の美学」を掲げてきた「バッドボーイズコンテンツ」の人達の「地味な動き」なのだろう。


「いつもは吠えていたのに、肝心のときには何もできないの?」

かつてのヒーローがそんな風に見えてしまうのは辛いだろう。




【正しいバッドボーイズとは?】