聖なる不謹慎 2
こんにちは 山田玲司です。
今週は前回に引き続き未公開小説をお届けします。
今回の内容は僕が何度も言っている「ミラー現象」の話なので「また言ってるよ」と思う方もいるかと思うのですが、このシーンがないと成立しない作品なのでご了承下さい。
勘のいい人はこの回でもう「誰の話」かはわかってしまうと思うのですが(笑)
言わぬが仏ということで1つよろしくお願いします。(してもいいですけどね笑)
この小説は長編ではないので、普通のメルマガを期待してくれている皆様はもう少々お待ち下さい。
来週のヤングサンデー本編ではあのジンベエザメの水槽番長「下村実さん」が登場してくれます。
生き物関係なら何でも答えてくれる凄い方なので質問を募集しますね。
「ペンギンってどうやって飼うの?」みたいな質問をお待ちしておりますー。
メールはこちらです。
reiji.yamada.ys@gmail.com
それでは「聖なる不謹慎」第2章をどうぞ!
第2章
オオカミの男
【薄暗いBER】
うさぎ男がくれた本の表紙には何も書いてなかった。
中には何やら「仏教らしき事」が書いてある。
「宗教か・・こういうの苦手なんだよな・・」
そうは言っても、謎の「うさぎ男」から本をもらうなんて、ちょっと面白いし、あの時見た「謎の宮殿」も気になる。
何か関連のある事が書いてある気もする。
何しろ「宮殿の地下」に幽閉されていたのは「自分」だったのだ。
僕は仕事帰りにたまに来る古いBARのカウンター席に座って、ビールを注文した。
ここで本を読もうと思ってきたものの、どうも内容に入れない。
基本的に僕は「神だ仏だ」というスピリチュアル系のものが苦手なのだ。
そもそも僕は「目に見えないものを信じる人達」がどうも理解できない。
「占い」だの「パワースポット」なんかも「怪しい」と思うタイプだ。
「根拠がないものを信じる」って事は、何かに「騙されている」ようにも思う。
それよりは「全ての背後には『お金のため』ってのがある」と考える方がリアルに感じる。
結局「宗教」ってのは誰かが「お金儲け」をするためにあるんじゃないか、とも思う。
僕はうんざりしながら本のページをめくった。
しばらくの間、無理して「その本」を読んだのだけれど。どうにも意味がわからない。
その本には「念仏を唱えれば、誰でも極楽浄土に行ける」みたいな事が書いてある。
「死んだ後『天国』に行きたいなら祈りなさい」みたいな話だろう。
学校の授業かなんかで聞いたことがある。有名な「南無阿弥陀仏」の話だ。
とは言っても「成仏」だの「浄土」だの言われても、そもそも僕は「仏」になりたいわけでも「天国」に行きたいと思っているわけでもない。
それ以前に「天国」ってものが初めから信じられない人間だ。「地獄」だって冗談みたいにしか思えない。
なので、それが「救い」とか言われてもピンとこないのだ。
だめだ。こんなもの信じられるわけない。
そもそも「宗教」ってのが怪しいんだ。こういう本は基本的にいかがわしい感じがする。
「インチキだよなあ・・」
「何が?」
声をかけてきたのは、タバコを咥えたオオカミだった。
カウンターの1番奥の席で、ポルノ雑誌を開いてバーボンを飲んでいる。
「サングラスにスカジャン」という、これまた冗談みたいな格好をしている。
「今度はオオカミ男か・・」
呑みすぎたな。ひどい幻覚が見えてる。この前の「うさぎ男」も幻覚だったのかもしれないな。
「どうも・・オオカミさん」
「オオカミ?俺が?」
「あ・・すみません、つい・・」
「いいって(笑)そんなようなもんだ」
【良い事すると天国行き、というトリック】
隣のオオカミがバーボンのロックを呑んでいる。やっぱり僕は呑み過ぎてる。
オオカミ男が僕に言った。
「何読んでる?」
「あー・・その・・仏教ってわかります?」
「ああ・・9歳から勉強してるからな」
オオカミは答えた。
オオカミが「仏の教え」を勉強してる?
僕はどうでもよくなって、オオカミに本を渡して聞いてみた。
「じゃあ、この本・・意味わかりますか?」
「どこがわからないんだ?」
「極楽往生ってなんすか?成仏とか」
「ふむ・・」
「死んだら天国に行けるってのが『救われる』ってことなんすか?」
「そんなの知らねえよ」
「ですよね」
「死んだら天国に行ける、って言われても無邪気に喜べねえよな」
「僕もです」
酔った勢いで僕は持論をオオカミにぶつけてみようと思った。
「『良い事をしたら天国に行ける』って言うじゃないですか。『悪い事したら地獄行き』とか。僕あれ意味ないと思うんすよね」
「ふん・・」
「幸せになりたいのは『今』なんですよ!死んでからじゃ遅いんです。そもそも臨死体験とかで『死後の世界』を見たとか言う人の話、あれ単に脳の異常が起こした幻影でしょ?寝てる時に見る夢と変わんないと思うんすよね、そもそも死んだ後なんて・・」
「幸せになっちゃうんだよ」
「は?」
「生きてるうちに」
「あの・・どういうことです?」
オオカミはバーボンのグラスを回しながら言った。
「もしここに『病気で死にそうな人』が2人いたとするだろ?」
「はい・・」
「で、お前は『物凄く効く薬』を1個だけ持ってる」
「はあ・・」
「で、その2人はお前の知り合いで、1人はお前に会う度に『お菓子をくれた優しいおばあちゃん』で、もう1人は、『会えば必ず嫌なことを言ってくるイヤミなババア』だったとしよう・・」
「はあ・・」
「どっちに薬をやる?」