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山田玲司のヤングサンデー【第34号】「ゲスの極み」と言いたい真面目な人達
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山田玲司のヤングサンデー【第34号】「ゲスの極み」と言いたい真面目な人達

2015-05-25 06:00
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    山田玲司のヤングサンデー 第34号 2015/5/25

    「ゲスの極み」と言いたい真面目な人達

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    先週はモーニングの新人賞を取ったある漫画が話題になってました。

    それは一言でいえば「変な人にならなければ愛されない」(と思い込んでいる)女の子の「心の叫び」を漫画にした作品で、そんな彼女(主人公)の「本当の自分」に向き合ってくれる存在は、彼氏ではなく「彼のペニス」だけだった、という悲しくも恐ろしい話です。

    いわゆる「メンヘラ女」や「不思議ちゃん」の内面の魂の叫びであり、「仮面の告白」みたいなものでもあります。

    そんな「変わった人でなくては愛してもらえない」と思っている人や、そんな彼女たちに翻弄されて傷ついた男たち。
    男であっても同じように「変な人」になって世の中の居場所を確保しようとしてきた人などがこの国には大量にいたため、今回の大騒ぎになったのだと思います。
    本当の自分は「つまらない人間」だという思いから「私は変な人になる」というのも悲しいけど、そんな人の悲しみを恋人は理解できずに逃げていく、というのも悲しい話だ。

    そんなわけで、毎月開催している「銀座水曜会」でもこの漫画(この件)を議題に大いに盛り上がりました。
    (東村アキコ先生も今月から合流することになり、会場の温度が3度は上がってました)


    ・普通の幸せに乗れない孤独

    バンドブームが起きた80年代後半も同じような「変な人旋風」が吹き荒れました。

    「ナゴムレコード」で検索してもらえればその時代の「不思議戦争」がいかなる熱気であふれていたかがわかると思う。
    実はその時代は同時に「とんねるず」や「トレンディードラマ」の時代でもあって、そういう華やかで「普通」に恋愛を楽しめる人たちに乗れなかった人たちの「愛を求めて」とった戦略が「不思議ちゃん」や「変人バンド」だったのです。

    しかし、これもすべて「好景気で何でもアリの空気」の中で、特別な事をして認められたい思いを抱えた人たちの「ささやかな文化祭」みたいなもので、今振り返るとみんなが「普通」だし「真面目」に見える。

    「自由という言い訳のできない世界で、自分は何者でもない、という残酷な現実を突き付けられて、それから目を逸らすための悪あがき」にも感じる。

    そう、みんなどうしようもなく「普通」だった。

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    ・真面目な「ゲス」

    ここ数年「ゲス」という言葉がやたらと飛び交っている。
    「ゲスの極み」というギャグから「ゲスの極み乙女」というバンドもハネている。

    そんな「ゲス」を連発している人は総じて「真面目」で「普通」で「一生懸命」に見える。
    (本物の「ゲス」はスーツとか着て「まともそうなこと」を言っている人達の中にいるのだ)

    それもこれも全部、今回の漫画の「変でいないと愛されない問題」と同質のものだ。
    普通の大学生が普通のサークルとかで、普通に飲んで暴れて「俺たちってイカれてるよな」なんて「特別ぶる」とか、サークル内で付き合う相手を打算的に変えまくるだけの事で「私ってゲス」なんて特別ぶる。
    そのすべてが、多くの人が1度は心あたりがある痛い話だ。

    そして突き詰めていくとこの問題はいつもの「そのままの自分を受け入れてもらえなかった子供達の苦悩」といういつもの問題にたどり着く。
    「成績が良ければ認めてもらえる」が「可愛いと思ってもらえたら認めてもらえる」「変なヤツって喜んでもらえたら認めてもらえる」と変化していく流れだ。

    「認めてもらえる」とは、つまり「愛してもらえるかもしれない」という儚い希望だ。


    ・肉体という希望

    今回の漫画では、そんな絶望的な状況の彼女を彼の頭と心は理解できないが、彼の「ペニス」だけはモノ言わず「本当の彼女」を受け入れる。

    その辺の文学性こそが、評価されるべきこの作品の「核」だと思う。
    心や頭では彼女を受け入れない彼だが、彼の肉体だけは彼女を受け入れる。
    つまり、生き物としては男女はまだ繋がれるという「悲しい希望」が未来に続くのだ。

    パワフルな真実だけど、あまりに切ない。

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    ・迷うヤリチン

    そんな時、僕の所に「とあるヤリチン男」がやってきた。

    彼は自分の「女とやりまくりの人生」を売りに、ネットなどで「ゲスなヤリチンキャラ」を仕立てて活躍している(誰もが殴りたくなる)ハイスペック(高学歴、高身長、高収入)のイケメン男だ。
    彼は僕に「正直な話、迷っているんです」と言ってきた。

    「ヤリチン」という「変なヤツ」で売っていることに限界を感じてきたと言うのだ。
     
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