M.Oさん のコメント
このコメントは以下の記事についています
第265号 2018.4.11発行 「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…世の中には、一般の常識・良識とは真っ逆さまの理屈を「常識」「良識」だと、大真面目に主張する人たちがいる。自分に都合の悪いことは一切見ようとせず、一般社会の方がおかしいと思っている。世の大多数から批判されると、迫害されたと被害妄想を抱き、同じ理屈を共有する者だけで結束を固めて閉ざしていく。時には存在しない「敵」を想定し、それを攻撃することで自己を正当化する。そうして主張はどんどん先鋭化し、より一層、一般常識から乖離していく。今、その最たる存在が安倍晋三信者たちだ。
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…3月26日発売の産経新聞社『別冊正論31号 「日本型リベラル」の化けの皮』がスゴい。櫻井よしこ、酒井信彦、高橋史朗、八木秀次、足立康史、有村治子、山口真由…等々が厚顔無恥なネトウヨ妄言を垂れ流しているが、ひと際異彩を放つ存在が、動物学研究家・随筆家の竹内久美子氏!論考のタイトルは「動物学で日本型リベラルを看ると―睾丸が小さい男はなりやすい!!」。睾丸に拘り過ぎる、想像のはるか斜め上をぶっちぎりで駆け抜けていく“トンデモ”リベラル・ヘイトを見よ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!若さの秘訣は何?合理的に説明出来ないものは、伝統ではなく因習?昔のCMで印象に残るCMは何?首相の母・洋子氏がすべてを昭恵氏のせいにして、息子を庇うのはおかしいのでは?桜の花に見とれるような事はある?やる気を削がれた時はどうしてる?日本女子相撲連盟がオリンピック競技入りを目指して活動しているのはアリ?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第272回「一般常識を敵にする安倍信者」
2. しゃべらせてクリ!・第223回「ジョーズ出現!貧ぼっちゃま絶体絶命!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第76回「“睾丸小さいとリベラル”世にも奇妙な『別冊正論』の世界」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第272回「一般常識を敵にする安倍信者」 世の中には、一般の常識・良識とは真っ逆さまの理屈を「常識」「良識」だと、大真面目に主張する人たちがいる。
一般人から見ると「頭がおかしい」としか思えないが、その人たちは自分に都合の悪いことは一切見ようとせず、一般社会の方がおかしいと思っている。
世の大多数から批判されると、迫害されたと被害妄想を抱き、同じ理屈を共有する者だけで結束を固めて閉ざしていく。時には存在しない「敵」を想定し、それを攻撃することで自己を正当化する。
そうして主張はどんどん先鋭化し、より一層、一般常識から乖離していく。
読売新聞社の全国世論調査では、佐川前国税庁長官の国会における証言に75%が「納得できない」と回答している。
安倍昭恵を国会に呼んで説明を求めるべきだとの意見は60%で、「そうは思わない」の36%を大きく上回っている。
国有地の8億円値引き、そして公文書の改ざんという前代未聞の不祥事を官僚が勝手にやるわけがなく、もし官僚が忖度して勝手にやったとしても、安倍昭恵の存在なしにこんなことが起きたはずがないというのは、ごく真っ当な一般庶民の常識的感覚だ。
ところが、無条件に安倍昭恵が「潔白」だと信じ、その証人喚問を求めることは 「人権侵害」 だと主張する、「頭がおかしい」としか思えない人がいる。
産経新聞の「エース記者」、 阿比留瑠比 だ。
しかも産経にはこれに賛成する読者がいるようで、阿比留は4月5日の産経新聞コラム「極言御免」で、そんな読者の声を紹介している。
「昭恵さんの証人喚問が実現すれば日本の社会に大混乱をもたらすだろう。知らぬ間に隣人や知人に犯罪容疑者にされる恐怖が社会全体に疑心暗鬼を生むからです」
昭恵は「知らぬ間に」疑われたわけじゃないでしょう! 怪しすぎる状況証拠が山積みでしょうよ!!
安倍昭恵を証人喚問したら、社会全体が恐怖に覆われ、日本社会が大混乱に陥る!? どこのノストラダムスだ!?
「知らぬ間に犯罪容疑者になる恐怖」だったら「共謀罪」の方が百万倍大きいと思うが、この人は共謀罪に反対したのだろうか?
阿比留はさらにこんな読者の意見も紹介する。
「臆測で『裁判』にかけられるようになったら自由に意見も言えなくなる。何とかまっとうな世の中になってほしい」
あまりの無知に、唖然とする。
国会の証人喚問は「裁判」ではない!
時には「公開裁判」のように見られることもあるが、これはあくまでも議院証言法に定められた、国政調査のための証言を求める制度である。証人は「被告」として扱われているわけじゃないし、そこで裁きを受けることもない。
安倍は「真相究明に全力を挙げる」と言っているのだから、それならば真相究明のために安倍昭恵の証言は必要不可欠だと思うのは、全くの常識である。
ところがこの読者は、昭恵の証人喚問を求めたら「自由に意見も言えなくなる」、「まっとう」ではない世の中になるという。
そして阿比留はこれに全面的に賛同し、こう書くのだ。
日本社会の現状に深い閉塞感を覚え、今後の日本のあり方についても憂慮しているのが伝わってくる。現代の魔女狩りに、おぞけをふるう人は少なくない。
証人喚問は裁きの場でもリンチの場でもなく、国政調査のための証言の場でしかない。本当に潔白なら、堂々と出てきて潔白だと言えばいいだけのことだ。それに「深い閉塞感を覚え」、「現代の魔女狩り」呼ばわりして「おぞけをふるう」とまで非難する意味が全くわからない。
ひょっとしたら、阿比留も産経読者も実は内心、昭恵が「真っ黒」だと思っていて、証人喚問に出したらオシマイだと予感しているから、こうもヒステリックになっているのではないか?
続けて阿比留は、野党やメディアが昭恵の証人喚問を求めることをこう非難する。
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!
竹内久美子の「睾丸論」、唖然としました。
この人、20年以上前にドーキンスの利己的遺伝子論について俗っぽく解説した『そんなバカな! 遺伝子と神について』(文春文庫)という本で一躍脚光を浴びた方でしたね。
この当時、講談社ブルーバックスとかで進化論にかぶれていた私は、この本を楽しく読んでいた思い出があります。
確かに乱婚制のチンパンジーの睾丸は大きい、ということに既に触れられていましたが、そこに拘るのではなく、様々な動物による「種の保存(あるいは、遺伝子の保存)」のために奮闘する生態を面白おかしく描写していた内容だったと思います。
ところが、男性が浮気性なのは少しでも多くの遺伝子を残したいから、という考えに端を発して、シリーズ2冊目ともいえる『賭博と国家と男と女』あたりから雲行きが怪しくなります。
男性のあらゆる行動様式について、「これがあったからこそ、人類の文明は進歩したのだ!」と言わんばかりの「男性賛美」が目に付くようになります。
そして、女性については、「男性に選んでもらえるように、あれこれ画策している」という、えらく受け身――場合によっては姑息ともとれる行動様式が身についてしまった、という論調でした。
この時点で、私は竹内久美子の本は読まなくなったのですが、多分この人、すさまじいまでの「男系固執派」だろうなと想像してしまいます。
そもそも利己的遺伝子論って、庶民の一般的な幸せ――結婚とか出産とか――をことごとくシニカルかつ即物的に見てしまうものなので、これにハマると極右か極左に振れてしまうように思います。
何しろ、人間を含む生物は、遺伝子の「乗り物」に過ぎないという考え方ですから、情も何もあったものではなく、生物をモノとしてでしか見られないという恐ろしい考え方です。
その上で、遺伝子の意向に逆らわずに人生を送っていれば、少子化などが起こるはずもなく、いわゆる「伝統的な家族のかたち」が維持できるはず、という機械的な考え方に到達してしまうのでしょう。
そういう意味において、竹内と産経ネトウヨ派の両者は親和性があるのだろうと思います。
そして行き着いた先が、睾丸の大きさ(笑)!
もはや全ての行動の原点は「遺伝子を残すこと」であり、そのためにはモテなければいけないわけであり、モテるか否かも全ては物理的に決定されており、その基準は客観的に確認できなければならず、その答えが――睾丸の大きさ!(笑)
京大の生物学者で霊長類研究で輝かしい功績を残された今西錦司先生が泣くぞ。
ドーキンスも「私はそこまでは言ってない」とたしなめてくるかもしれない。
大衆週刊誌の連載コラムに、暴論じみたかたちで掲載するのならともかく、よもや『正論』に堂々と鎮座する記事となるとは、確かに産経新聞、末期的症状ですかね。
Post