the_kさん のコメント
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第440号 2022.7.5発行 「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…仮にも西部邁門下を名乗る知識人たちが、臆病者の戦後民主主義サヨクと全く同じ心性によって価値相対主義に陥り、誰一人わしの『戦争論』にも追いついていなかったという事実には、唖然とするばかりだ。「表現者クライテリオン」7月号の巻頭コラムには「今回のプーチンの決断を眼にした際に思い浮かべるべきは、〈ヒトラー〉などではなくて、むしろ、追い詰められていった先で暴発した戦前の日本だろう」などと書かれており、「戦前の日本」と「プーチン・ロシア」は同じだと主張しているのだ。言ってることが全て間違っている!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…7月1日、東京都内で熱中症の疑いで301人が救急搬送された。21人は重症だという。たった1日での数字だ。今年は、すでに昨年を上回るハイペースで救急搬送が増えている。さらに重度の熱中症にかかると後遺症を抱えることもある。厳しい暑さの中、未だにマスク着用を徹底している日本人は頭がおかしいとしか思えない。コロナなんかよりもはるかに恐ろしい熱中症の実態を知れ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…銭湯と、自宅の風呂やホテルに付いているような個室の風呂、どっちが好き?どっちもどっち論の主張の根底にあるのは○○では?「引退」についてどう考えている?中共が台湾に侵攻した際にも「価値相対主義・どっちもどっち論」を唱える識者は現れるの?藤井聡氏らは「西部イズム」を誤解しているのでは?テレビの討論番組に出た経験は何かの糧になっている?聴覚障害を理由に損害賠償額が減額された件をどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第469回「ロシアと戦前の日本が同じだと?」
2. しゃべらせてクリ!・第396回「へむむ~っしゅ! 男の涙は武器にならんとでしゅか?の巻【前編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第263回「マスクは本気で危ない!熱中症は恐ろしい!」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第469回「ロシアと戦前の日本が同じだと?」 先週予告したとおり、「戦前の日本」と「プーチン・ロシア」は同じだと主張する「表現者クライテリオン」7月号の巻頭コラムを徹底批判する。
それにしても、仮にも西部邁門下を名乗る知識人たちが、臆病者の戦後民主主義サヨクと全く同じ心性によって価値相対主義に陥り、誰一人わしの『戦争論』にも追いついていなかったという事実には、唖然とするばかりだ。
問題の巻頭コラムで、匿名の筆者(どう見ても編集長の藤井聡氏だろう)は、次のように述べている。
さらに言えば、今回のプーチンの決断を眼にした際に思い浮かべるべきは、「ヒトラー」などではなくて、むしろ、追い詰められていった先で暴発した戦前の日本だろう。 (中略) 戦前の日本がアメリカと衝突する直接の切掛けを作ったのは、「日本の利益線・生命線」であるところの満州――ロシアにとってのウクライナ――であったことを想い出すべきである。そんな過去を持ちながら、今回の戦争を前に、狂気の膨張主義者の所業だと他人事のように批判できてしまう日本人の感覚が私には分からない。
えらそうに言っているが、言ってることが全て間違っている。
プーチンが戦前の日本と同様に 「追い詰められていった先で暴発した」 なんてことは、断じてない!!
確かに戦前の日本は、経済制裁によって極限まで追い詰められた末に戦争に踏み切った。ただし、わしは決してそれを「暴発」とは言わない。
日本は「ABCD包囲網」(A=アメリカAmerica、B=イギリスBritain、C=中国China、D=オランダDutch)と呼ばれる対日経済封鎖網によって対外資産を凍結され、さらに石油やゴム、タングステン、ボーキサイトなど、生活必需品の原料となる資源をことごとく禁輸され、徹底的に経済を締め付けられた挙げ句に開戦を決断したのだ。
だが、 ロシアが欧米から経済制裁を受けたのは 「開戦後」 である!
ロシアが経済制裁で追い詰められて開戦したという事実は一切ない。
たった4,5カ月前の出来事の前後関係も分からないのだろうか?
戦前の日本がアメリカから受けた経済制裁の中で、致命的だったのは 「石油全面禁輸」 だった。
石油のほとんどを輸入に頼る日本では、 「石油の一滴は血の一滴」 と言われていた。石油備蓄量は平時で2年分、戦時で半年分しかなく、これを使い切ったら軍も産業も全てが崩壊する。日本はまさに国家存亡の崖っぷちまで追い込まれたのだ。
それに対してロシアは、 世界第3位の原油産出国 である!!
ロシアはウクライナ侵略後に強力な経済制裁を受けても、「石油輸出」をカードにして欧州に脅しをかけ続けることができて、今も石油で1日10億ドルの利益を上げている。
これでどうして、戦前の日本と現在のロシアが同じと言えるのか?
これだけでも、あまりの狂いっぷりに大爆笑である。
だが、藤井氏の歴史認識の誤りはこれに留まらない。あまりに多すぎて手が付けられないほどだが、なるべく丁寧に解説していこう。
対米開戦前、日本・東条英機内閣は戦争を回避すべく、アメリカに「甲案」「乙案」という譲歩案を提出した。
「甲案」の概要は以下のとおりで、軍の猛反対に抗して東郷茂徳外相が必死にまとめたものだった。
1.日本と支那の間に和平が成立した際は、支那に展開している日本軍を2年以内に全面撤兵させる。
2.支那事変が解決した際は、「仏印」(フランス領インドシナ=現・ベトナム)に駐留している日本軍も撤兵させる。
3.通商無差別待遇(自由貿易)が全世界に適用されるなら、太平洋全地域と支那に対してもこれを認める。
4.日独伊三国同盟への干渉は認めない。
後の「東京裁判」において、アメリカ人弁護人・ブレークニーは 「日本の真に重大な譲歩は東条内閣が作成した『甲案』であり、『甲案』において日本の譲歩は極限に達した」 と言っている。
そして東条内閣は「極限の譲歩」をした上さらに、甲案での交渉が決裂しても、 日米開戦だけは防ぐための暫定協定案として「乙案」も用意していた。 その概要は以下のようなものである。
1.蘭印(オランダ領東インド=現・インドネシア)での物資獲得が保障され、アメリカが在米日本資産の凍結を解除し、石油の対日供給を約束した際には、南部仏印から撤退する。
2.更に、支那事変が解決した際には、仏印全土から撤退する。
経済制裁さえ解除されれば撤退するというわけで、つまり日本の南方進出はあくまでも経済的問題のためであり、 「領土的野心」はないという意思の表明だったのである。
ところが、アメリカは「甲案」「乙案」を一顧だにせず、それまで積み重ねてきた日米交渉の経緯も全て無視した 「ハル・ノート」 を突き付けた。その概要は以下のとおりだ。
1.日本軍の支那・仏印からの無条件撤兵。
2.支那における重慶政権(蒋介石政権)以外の政府・政権の否定(日本が支援する南京国民政府=汪兆銘政権の否定)。
3.日独伊三国同盟の死文化(独伊両国との同盟を一方的に解消)。
つまり、日本に対して明治以降大陸に築いた権益の全てを放棄せよと迫ったわけである。
これは、後に「東京裁判」で パール判事 が、このようなものを渡されたら 「モナコやルクセンブルクのような小国でも矛をとってアメリカと戦ったであろう」 と評したほどのものだった。
しかも、これを渡したら戦争になるということはアメリカの側も百も承知で、ハル国務長官は「ハル・ノート」を日本側に手交した後、スチムソン陸軍長官に、 「私は日米交渉から足を洗った。今や、この問題は貴方とノックス(海軍長官)、すなわち陸海軍の手中に落ちた」 と言った。
ハル・ノートを渡したらもう交渉はなく、あとは軍隊の仕事だと分かっていたのである。
さて、ロシアは戦争を回避するために「甲案」「乙案」を出したか?
アメリカはロシアを開戦に追いこむために「ハル・ノート」を突き付けたか?
そのようなことは一切なかった。
ロシアは一方的に軍を展開し、戦争回避のための外交交渉など何ひとつやらず、問答無用で侵略を始めたのだ。
また、日本は米英に「宣戦布告」をして(米国への通達が遅れるという大使館のミスはあったが)戦争を行ったが、ロシアはウクライナに宣戦布告もしていないし、「特別軍事作戦」と称して未だに「戦争」であることすら認めていない。
どこをどう探しても共通点が見つからないではないか!
そして何よりも、この立論の根本である 「日本にとって満州が『生命線』だったのと同様に、ロシアにとってもウクライナが『生命線』である」 という主張が、根本的におかしいのである。
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!
続きです。
兌換貨幣は金本位制などの、モノ・資源との交換券としてのお金です。つまりこの制度下でのお金は「限りある資源」だったわけですね。
お金が限りある資源である以上、「政府も含めて」その資源の全体的な取り分を決める必要がありました。
その取り分が税金だったわけですね。
ところが、この兌換貨幣には問題がありました。経済が成長すると、その大きくなった経済規模で円滑にモノのやり取りを行うだけの貨幣も必要になります。
にも関わらず、資源としての貨幣には、その量の限界があるわけです。限界を超えてしまうと、経済は正常に回らなくなるんですね。
不換貨幣となるとその前提を無くせます。不換貨幣はゼロから作るお金ですから、資源としての前提が無くなるのです。
となると、これは税金の存在意義にも影響します。
政府の資金を税収に頼る必要がなくなるわけです。政府は自身の懐事情を考える必要はなくなり(恒常的に赤字を出して良くなり)、純粋に世の中の景気や貧富の差などを理由に施策をすれば良くなります。景気が加熱しすぎるようなら税金を多く取ればいい、貧富の差を是正したければ、貧乏な人から取る税金を少なくしてバランスを取るようにすれば良い、と言うわけです。
以上の事から、不換貨幣下でも残る税の意義とは、概ね以下のようになるでしょう。
・景気の調整弁
・格差の是正
・特定の政策への誘導(タバコ税など)
今回は下の一つについては割愛しますね。
さて、消費税をこの観点から見た場合、どう評価出来るでしょうか?
まず景気の調整弁としてですが、コレは低いと言っていいでしょう。
税における景気の調整機能とは、不景気ほど「全体の平均税率が下がる」機能と言えます。
例えば所得税は累進課税ですから、不景気になると全体的に収入が下がり、税率も下がります。
法人税なら赤字企業からは取りませんから、不景気ではこれまた全体の税率が下がります。
今の消費税にはそう言った要素がほぼありません。
財務省なんかはコレを「安定財源」なんて言ってますが、調整弁は安定しちゃダメなんですよ。
そして格差の是正、こちらはどうでしょうか。
一見、金持ちほどお金を使うから是正されるような気がしますが、コレには落とし穴があります。
それは、「貧困家庭ほど貯蓄に回せる余裕がない」という点です。
コレを貯蓄性向が低く、消費性向が高い、と言いますね。
そして消費性向が高いということは、相対的に見て税率が高くなる、という事です。
分かりやすく言うと、貯蓄を全くできない家庭は収入の10%が消費税で持っていかれることになるのに対し、収入の半分を貯蓄する家庭なら収入の5%しか持っていかれない、と言うわけです。
また、企業に関しても赤字企業ほどキツくなります。
なんせ売り上げ、正確には粗利から税を取られるわけですから、法人税と違い赤字企業でも容赦なく取られるわけです。
この容赦のなさが安定財源の本質なのですよ。
さて、小林先生はコロナ論1にて、「経済を止めると人が死ぬ」と仰いました。僕もその通りだと思います。
そして、景気の調整弁が乏しい消費税は、経済が止まりかけているときも構わず経済を止めに掛かる、という制度です。
つまり人を死なせてしまう制度ということになります。
また、皇室の件でこうも言っておられました。「陛下は弱者に寄り添っておられる」と。
経済を止めた時に真っ先に死ぬのはその弱者でしょう。であるのなら、弱者ほど負担が大きく、また経済を止めることでより死にやすくなってしまう消費税は、陛下の御心に反する制度、と言うことになってしまわないでしょうか?
経済の語源は「経世済民」です。
これは弱きものを守り、世の中を安定的に運営する、と言う意味が込められていると思います。
この思想は陛下の思想とも一致するのではないでしょうか。
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