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na85さん のコメント

 『縄文人に学ぶ』(上田篤)は非常に面白い本でしたが、非常に残念な作品でもありました。北の大陸からから樺太伝いに入ってきたのが縄文人の主体として書かれ、それが河川漁業、海洋漁業を習得し、日本全国に散っていったとしていたからです。そしてシナ大陸から水稲稲作技術を携えてきたのが天津神・天孫族で、それから弥生期が始まったのだろうとしている点もいただけません。しかし縄文人が母系社会だったことは著者の言うとおりだと思います。母系社会だから進歩が遅く競争もないというものその通りだと思います。
 私は、北方シベリア・ツングース人(狩猟採集民・山人・シャンカ)と、南西諸島・沖縄伝いに入ってきたポリネシア人(漁労民・海人・アマ)がそれぞれ北と南から列島に侵入し、信州あたりで出会って徐々に混じりあい、それでも殺し合いなど起きず互いの文化は地域性を残したままだったと考えています。現代日本にも東日本と西日本の微妙な断絶があるのはこのためでしょう。
 製塩技術や簡易農業(焼き畑による陸稲栽培を含む)技術などを持っていたポリネシア人の方が文化が進んでいたため、言語もポリネシア語を元にしたものが主に流通して日本語の原型となったはずです。一部のポリネシア語は母音の聞き分けが重要であり、それによって風音や川のせせらぎ音のような自然音・虫や鳥・動物の鳴き声・人間の感情音までを言語脳で意味あるモノと捉えることが出来るようになったわけです。世界中でほとんど滅びてしまったアニミズムが神道として生き残ったのは、この自然中でカミの声を聴ける能力のためでしょう。そこに南インド・タミル人が水稲栽培とそれにまつわる農業祭祀、機織り技術、57577の短詩形を伝え、日本神話に登場するおおよそのものが出揃いその原型が完成したと思われます。
 著者によると、女系の血族社会では豊かな自然の中で女たちが採集や罠による漁などで食料を確保し、村で生まれた男は成長すると旅に出て別の血族社会に立ち寄り、そこで妻問い婚をしたそうです。当時はヒスイなどの宝石も交易されていましたから、それらを用いた地域性のある珍しい装飾品などをプレゼントしてOKをもらえたら和合し、そこで生まれた子供はその血族の村で育てられるわけです。男はこうして村から村へ旅し、老いて生殖能力が無くなり動けなくなったら「花のもとにて春死なん」と言ったかどうかは知りませんが、満足して死んだのかもしれません。また智恵と技術を村の若い後継者に伝える女は老女になっても尊敬を集めたでしょう。
 しかし、こういう母系社会はむしろ海洋民であるポリネシア人のほうが成り立ちそうな気がします。漁労民の男たちは海へ漁に出ますが、船板一枚隔てた下は海というある意味死と隣り合わせであるため、いつ死んでも良いという覚悟は定まりそうです。また家を守る戸主は死の危険が多い男ではなく女になるのが自然です。ポリネシアから陸稲栽培が伝わって定住性が高まったであろう縄文中期でも、妻問い婚より婿入り婚が多くなりはしたでしょうが、女系の文化は続いたはずです。
 タミル人が水稲栽培を伝えて農作業に男手が必須となるころから、男の地位が上がってきたと思われます。縄文から弥生への移行はこうした緩やかなものだったのではないでしょうか。しかし定住して保存食のコメを蓄えるようになるとやはり競争や争いが起こる可能性は出てきますが、女性が宗教的権威となり男性が政治の実務を執るヒメヒコ体制ならばその発生頻度はずっと減らせると思われます。つまり卑弥呼と王や沖縄の聞得大君と王の関係です。私はヤマトトトヒモモソヒメ=卑弥呼、親族の王=崇神天皇と考えています。で、ちょっと時代は離れますが台与=神功皇后かな?と。
 婿入り婚は室町期まで続いたようです。当時のグローバリズムであるシナ男系主義によく抵抗し続けたものです。私の持論ですが、外国との交渉を絶った時こそ日本本来の国柄が強く出てくると考えています。菅原道真が遣唐使を廃止したのは平安中期です。そういえば平安貴族は歌を贈って妻問い婚みたいなことをしていました。宋との交易が盛んになる平安末期には武士が強くなり始め、男の力も増しました。そして世が乱れました。しかし戦国が終わり世の中が落ち着いて鎖国政策を執った江戸期は庶民層ではまたかかあ殿下の時代です。これは地域的な文化においても言えそうです。シナ大陸に近く外への守りが中央より意識されていた九州北部では男権が強いのはうなづけます。
 というわけで、日本が女系母系社会となって子供を共同体の皆で育てる国柄に戻るには、外国との交渉の制限が必要になってくるように思うわけです。
 
 食料と必需品の自給は天皇陛下の大御心にも適うでしょう na85
No.161
120ヶ月前
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(号外 2014.05.20発行) ゴーマニズム宣言 「 集団的自衛権・安倍会見のトリックに騙されるな 」  安倍晋三首相は集団的自衛権行使に向けて「おともだち」を集めた諮問機関に検討をさせていたが、そのお手盛りの報告書ができ上がり、5月15日、安倍自ら記者会見で国民に説明を行なった。  その3日前、5月12日の読売新聞は1面トップで「集団的自衛権、行使容認71%」という見出しを掲げ、世論調査の結果、集団的自衛権の行使容認の意見が圧倒的だったかのような記事を載せた。  しかしこれにはトリックがあって、よく見ると「必要最小限の範囲で使えるようにするべきだ」が63%で、「全面的に使えるようにするべきだ」はわずか8%しかいない。これをひっくるめて「71%が賛成」と書いているのだ。  すでにVol.81で詳述しているように、集団的自衛権に「限定的」も「必要最小限」もない。 一度容認したら、イラク戦争の時の英軍のように、大義のない戦争であろうと何だろうと米軍と一緒に戦い、戦死者を出す国になるだけだ。そのことが周知されれば、「必要最小限の範囲で」という63%は「反対」に転じる可能性が大いにある。 「必要最小限」の「限定的容認」とは公明党と国民をだますために作った言葉でしかなく、世論調査するなら、設問は集団的自衛権の行使に「賛成」か「反対」かの二者択一しかありえない。  共同通信、日経新聞・テレビ東京、朝日新聞はこの二者択一の質問をしている。  するとその結果は… 共同通信   賛成 38.0% 反対 52.1% 日経・テレ東 賛成 38%  反対 49% 朝日新聞   賛成 27%  反対 56%  確実に反対が上回るのである。もちろんこの「賛成」の中にも、「限定的なら」と思っている者が相当数いるはずで、「限定的などない」とわかれば差はもっと開くはずである。  読売の「賛成71%」は、世論調査は質問の設定の仕方でいくらでも操作ができるといういい例である。こんな情報操作記事を1面トップに持ってくるというところに、政権の御用メディアに成り果てた読売新聞の実態があらわになっている。  安倍は記者会見で仰々しく2枚のイラスト入りボードを示し、集団的自衛権の行使容認の2つの具体的事例を説明した。  安倍は「これを見せたら誰も反対はできないだろう」と言っていたそうで、ボードの作成の際にはイラストのレイアウトの大きさまで安倍が直接指示して、会見の当日朝にようやく完成したという熱の入れようだった。  だがその2つの具体例 「邦人輸送中の米輸送艦の防護」 と 「駆け付け警護」 は、反論のしどころ満載の代物だった。    まず 「邦人輸送中の米輸送艦の防護」 について。  紛争が起きた外国で、日本人を保護した米艦が攻撃を受けた時に、日本に集団的自衛権の行使ができなければ、日本人を救ってくれた米艦を見殺しにすることになってしまうというのだ。  ボードには、赤ん坊を抱えて子供を連れた母親のイラストが描かれていた。安倍はこの母子のイラストを特に大きくするように指示したそうだ。   だが、海外で紛争が起こりそうになれば、外務省は邦人に対して当然避難勧告を出す。 イラストに描かれているような母子など、民間の輸送機関が機能しているうちに真っ先に避難の対象となるはずで、紛争が勃発した後で米軍に保護されるなんて想定がありえないのだ。    そんなありえないところをあえて百歩譲って、もしもイラストのような母子が紛争地に取り残されたとしても、 邦人救助ならば、 個別的自衛権 を強化すれば、自衛隊の艦船でも航空機でも自ら出動することができるのである。  それをなぜ米軍に救助してもらって、その米軍を、集団的自衛権を行使して守るという話になるのか、さっぱりわからない。  さらにそこを万歩譲って、 邦人を救助した米艦が攻撃を受けるという事態があったとしても、 米艦が自分で自分の身を守れない場合というのがあるのか?  米艦が動くときは、周辺の制空権と制海権は必ず確保しているはずだ。その安全も確保できていない状況で、向う見ずにも米艦が民間人保護に突入するなんてことがありうると思っているのか?   そもそも、誰が米艦に攻撃してくることを想定しているのか?    北朝鮮の艦船とか、中東の紛争地の武装勢力に、米軍が単独で対応できないほどの攻撃能力があるというのだろうか?  安倍が自信満々で示した事例は、これほどヘンテコリンな代物だったのだ。    もう一つの 「駆け付け警護」 、これは紛争地に派遣されているPKO職員や日本のNGOが武装集団に攻撃された際、PKO参加中の自衛隊部隊が警護に駆け付けるというものである。   だがこれは、武装集団と日本が直接戦闘状態に入るということに他ならない。 「 民間人保護のため 」という名目はよほど警戒しなければ、旧日本軍が満州やシナで戦線を拡大していった過ちを繰り返すことになる。 むしろ「戦争をするため」の理屈付けに利用される危険性をどう防ぐのか?   この武力行使を容認するのであれば、当然、武装集団のメンバーは日本に潜入して復讐のテロ活動を行う。  安倍は戦争になる危険性を隠して、美しい物語だけを説明している。   しかも「限定的容認」の具体例はこの2例だけではない。 「おともだち」の報告書には、 紛争海域の機雷除去 や、 国連安保理の決定に基づく多国籍軍への参加など の例も記されているのに、あたかも具体的事例がこの2例しかないかのように見せかけている。これも悪質なトリックである。  いったん「限定的」という口実で集団的自衛権の行使が容認されてしまえば、その範囲はずるずる拡大されていくのは間違いない。 「おともだち」の報告書は、その「 歯止め 」として6つの条件を提示し、安倍も記者会見でこの「 6条件 」を強調した。  では本当にそれは歯止めとなるのか? ひとつずつ見てみると… 
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!