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na85さん のコメント

 よしりん師範、時浦師範代、みなぼん編集長、スタッフの皆様、執筆・編集・配信、ありがとうございます。社会の不穏な動きとともに、度重なる爆弾低気圧の来襲などもあります折柄、どうぞ皆様ご自愛くださいませ。

 今回のゴー宣も神回です。ありがとうございます。道場の第1部生放送で釈然としなかった岡田氏の道徳論の前提部分の間違いの指摘や、道徳A・道徳Bそれぞれの問題点、そして「いい人」・「悪い人」と「強者」・「弱者」の関係性と今次の総選挙結果とを相関させた分析が余りにも見事で、完全に腑に落ちてきました。『道徳論』の描き下ろし宣言もすでに楽しみで嬉しく思います。
 さて、かつての庶民文化では弱者に寄り添う惻隠の情や、敗者を思いやる判官びいきが当たり前だったと思うのですが、いつ頃からか庶民の大衆化、そして大衆の劣化が急速に進み、ついには強者にすり寄って上手くお零れに与かるのがクレバーな行き方だぜ!となってしまいました。このようになった原因の一つは共同体崩壊で、もう一つは貧困化(と、それの誤魔化しのための右傾化)でしょうか。
 まず、岡田氏の言う道徳Aとは、少年ジャンプ的な自己犠牲をも厭わない英雄的行為を描く物語に触れ、自分もかくありたいと思うようになることだと思われます。しかし、これはよしりん師範が仰るように、家族や地域といった共同体の中で先達から教わることが前提になっていないと難しいように思われます。
 なぜなら、ある子供の属す共同体において目に見える形で不道徳が罷り通り、それを糺す大人もいなかった場合、たとえ物語で道徳Aに触れてそれが正しいことだと一応は認識したとしても、自分とは関係のない夢物語や都市伝説だと切り離すことを覚えてしまうように思います。つまり、共同体の大人が背中で示すことなくしては物語の効果など無効である可能性が高いわけです。このまま共同体の崩壊が進めば道徳Aの成立はますます困難になるでしょうし、その上マスコミからは共同体の外側の不道徳が連日これでもかと伝えられており、道徳Aの源泉となる良き物語よりはリアルに近そうに見えるこちらに影響されるように思います。
 そして道徳Bとは、岡田氏は道徳Aを補完するものと捉えているようですが、これは崩壊した共同体に生きる子供たちが道徳Aの理想の追及を諦めてしまったとき、上から与えられる処世術だと考えられます。例えば、道徳Aの立場では、クラスでいじめられている子を助けるのが正しい行き方のはずですが、処世術としての道徳Bを覚えてしまった後では、クラスを支配している空気に逆らわず静観しているか、むしろ消極的にでも加担するのが正しいということになります。一体コレのどこが道徳なのか?と言いたくなります。当然、子供のイジメには不道徳な大人社会のイジメ体質が反映されています。
 弱者=いい人、強者=悪い人という定義は、いい人になれば損をして弱者に落ち、悪い人になれば得をして強者になれるという不道徳な現代日本社会を端的に表しているように思われます。例えば「努力した人が報われる社会を目指す」と言いながら、強者の流す情報に乗っかって博打に勝つ以外に報われる方途が無いような社会をつくり、また大衆が道徳B(笑)=処世術によって不道徳な社会に過剰に適応することで強化されてきたように思います。そして票数が力に転化される政治家にあっては、最も人口の多い団塊世代の票を取りにいった方が得であり、そのためには若者や弱者を切り捨てる「悪い人」になる必要があるわけです。「弱者」に思いを寄せる「いい人」は、数の力を誇る団塊層から嫌われて敗れ去り、自らも「弱者」に落ちるわけです。
 ちなみに団塊の世代とは、戦傷病死という死因の多くが消失したため爆発的に人口増加し、それによって消費(内需)が拡大して経済が活性化し、そのとき親の世代が保有していた資産も自然に価値が膨張し、また自分たちも希望を持って働けて年金もキッチリもらえる最後の世代であり、もっとも幸せな世代だったと言えます。にも拘らず将来世代がどれほど貧窮していようと自分たちの資産を守るのに都合の良さそうな現状維持の政権を望むという不道徳を為した「悪い人」ではないかと考えられます。
 しかし、内外のグローバリストから搾取されている弱者=現役世代の一部までが政権中枢による洗脳にすっかり騙され、自分たちを更なる弱者に追い詰める政権を選んでしまったことは非常に残念です。政権が進めるグローバル経済は必然的に貧困化をもたらしますが、その不満のガス抜きのため画策されたのが右傾化トレンドでしょう。外に向かって強い姿勢を示すような「強者」の演出が小泉政治以前にはなかったため、それは新鮮さとして受け取られました。
 しかし、所詮米国頼みの不自然なものであったため、それを見透かした周辺諸国からは侮蔑的な対応がさらに増え、米国からの保護の対価としての要求も増大し、国内の不満の内圧がさらに上昇するというマッチポンプ状態です。小泉政権では以前からあった米国からの要求通りに構造改革し(悪)、国民の不満のはけ口を外への強い姿勢(強)で逸らすとい両面作戦が採られました。
 その小泉氏の二番煎じを狙った安倍政権は完全にメッキが剥がれていたはずなのですが、今次の総選挙では、若者の未来を奪ってでも団塊富裕層の利益だけは保守するという姿勢(悪・強)が奏功し、若者の未来を守りたい(良)と訴えた民主党は結局勝てず、党首の海江田氏は議席さえ失いました(弱)。これは、棄権も含めた不道徳な(悪)投票行動の結果であり、強者も弱者も含んでいるはずの有権者全体の劣化(悪・弱)が著しいからだと言えます。
 では、良いことを行おうとしている「いい人」が絶望的なバンドワゴン選挙で勝つためにはどうすれば良いでしょうか。私は、悪い強者を叩き潰すほどの強者を演じるしかないと思います。日本の政治状況において常に最強にして最悪の存在は与党のバックに控える米国(連邦政府とグローバル企業)の意向でした。だから、民主党が安倍自民党に勝つためには共産党よりも反米側に振り切れて戦うしかなかったと考えます。これは単なる「いい人」には絶対に無理であり、強者を演じきる胆力があり、また偽悪的に振る舞っても支持されるキャラクターをも持ち合わせている必要があると思われます。もちろん、正しい認識に立って国民に希望を持たせる未来ビジョン(グローバル経済から距離を置く、脱原発事業など正しい目的にに公共投資を傾注、正しい少子化対策を施行、皇統の安定的継承のための女系公認etc.)を見せることも必要です。
 「自ら省みて直くんば、千万人といえども吾往かん」と、死ぬ気で最強の存在に挑む姿を見せれば、それは少年ジャンプ的な道徳Aが、物語ならぬ現実世界に出現することであり、単なる消化試合になりがちな選挙戦の空気を一変させ、国内的な強弱(票数多=強者の団塊・票数少=弱者の若者)を超えた様相を見せると思うわけです。実現可能性という意味では、これはかなり難しいかと思いますが、最早これしか方法は無いのではないかと考えます。なぜ難しいかというと、そのような候補の出現を後押しする空気の醸成、つまり国民全体の共通了解がまだ足りないからです。TPP下で数年苦しんで、国の滅亡の危機と自分たちの命の危険まで感じないと醸成されないのかもしれませんが…。
 戦後日本の言論界において上のような戦いがあったとすれば、それは戦後の空気を一変させたと言われる、よしりん先生の『戦争論』ではないかと思っています。もう一度空気を変えるべく出されるという『新戦争論1』には、このような期待をも抱かせてくれます。思えば「現実の物語化」が初期からのゴー宣の定義だったように思います。しかし「物語の現実化」ではありません。ゆえに、よしりん先生を推し続ける必要があります。ゴー宣読者が良き観客でいるためには、各々のリアルな現場や地盤が強固でなければなりません。私もこの間の騒動を機に、当板の状態に一喜一憂したりせず、再び自分の生業に力を傾注していきたいと思います。

 政治を改めるには、道徳教育などより一身独立 na85
No.55
120ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
第113号 2014.12.16発行 「小林よしのりライジング」 『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。 毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、小林よしのりに関するWikipediaページを徹底添削「よしりんウィキ直し!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行) 【今週のお知らせ】 ※「ゴーマニズム宣言」…12月14日、衆議院総選挙投票日に開催された「第45回ゴー宣道場」。評論家の岡田斗司夫氏をゲストに迎え「道徳教育は可能なのか?」をテーマに刺激的な議論が行なわれた。安倍政権はなぜ「道徳」を「教科化」しようとしているのか?「損得勘定」で道徳は身につくのか?また今回の総選挙も徹底分析!果たして今の日本社会において「いい人に見られた方が得をする」という「道徳B」は成り立つのか? ※「ザ・神様!」…海の神・ワタツミから授かった、恐ろしい滅びの呪文と水を操る二つの玉で、兄・ウミサチを懲らしめ自分の家来にしてしまったヤマサチ。ようやく兄弟喧嘩は一件落着し山での生活に戻ったものの、何か大事なことを忘れていないか…!? ※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!18歳、初めての失恋、どうしたら良い?高橋みなみの卒業、今後も48グループに「総監督」というポジションは必要?石田ゆり子・永作博美・大島優子のうち誰か一人と不倫できるとしたら誰がいい?「再生可能エネルギー発電は自然を破壊する」説をどう思う?大晦日の『笑ってはいけない~』、一番面白かったのは何?…等々、よしりんの回答や如何に!? 【今週の目次】 1. ゴーマニズム宣言・第111回「道徳教育と総選挙」 2. しゃべらせてクリ!・第73回「茶ンタが街にやってきたぶぁ~い!の巻〈前編〉」 3. もくれんの「ザ・神様!」・第47回「女の豹変、エクソシスト ~豊玉姫と木蘭姫~」 4. Q&Aコーナー 5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど) 6. 読者から寄せられた感想・ご要望など 7. 編集後記 【生放送予定】 http://live.nicovideo.jp/watch/lv203009042 「よしりんに、きいてみよっ!」 、本年最後の生放送は 18日(木)20時 から!   テーマ:『今年のいい人・悪い人をふり返る』 〈泉美木蘭談〉  道徳について考える先日の道場で、よしりん先生がネトウヨに対して、こうおっしゃいました。 「わしは富裕層だ! お前らは貧困層じゃないか!自分の置かれている立場をどうして考えないのか。もうどう思われようと構わないと思うようになった。この格差をわからせてやらねばならない!」  この時、よしりん先生は、「悪い人」でしょうか?  表面上の劣化した感情で「悪い人・小林よしのり」に支離滅裂な罵詈雑言をぶつけているうち、気がつくと、富は富裕層のもとにますます集まり、格差は物凄く広がり、貧困層だった自分たちはさらに貧窮…。 「ボクらの応援した政権は、なんでボクらをこうも苦しめる社会を作ってしまうんだ!? もともと富裕層だった奴が、ますます潤っていくばかり、ボクらは食うや食わずだよ!!」  こうなった時も、先生は「悪い人・小林よしのり」でしょうか?  シレッと勝ち逃げしてハワイで毎日楽しくハンモックに揺られ、好きな本や映画に浸って暮らしていられるはずなのに、わざわざ『差別発言!』『嫌味な金持ち!』という非難を引き受け、「自分の置かれた立場から、格差社会を眺めてよく考えなさい」というメッセージを発していた先生のことを、ネトウヨたちは一体どう思うのでしょう。  生放送では、2014年に起きた出来事をふりかえりながら、「いい人・悪い人」について考えていきたいと思います。  STAP細胞の小保方さんは「悪い人」だったでしょうか?  小保方さんをバッシングし続けた人達は「いい人」でしょうか?  ヤジ議員、号泣議員、LINE議員、キスセクハラの橋本聖子、金で票を集めてきた小渕優子など、とんでもない政治家の姿が顕わになった年でもありました。  それなら「興味が持てない」と投票しなかった有権者は? 「白票が自分の意志だ」と棄権した国民は、いい人? 悪い人?  ただ表面的に「いい・悪い」を決めるのではなく、そこにある道徳を捉えながら、そして、私的・身近な「いい人・悪い人報告」など、脱線もまじえての楽しい時間にできればと思います。    お楽しみに! 第111回「道徳教育と総選挙」  第45回ゴー宣道場は12月14日、衆議院総選挙投票日に開催された。  テーマは 「道徳教育は可能なのか?」 で、当日は小中学校の教師も多く参加し、現場の声を聞かせてくれた。  ゲストは『僕らの新しい道徳』という著書がある評論家の 岡田斗司夫氏 。同書は岡田氏と7人の論客の対談集で、その相手の1人としてわしも呼ばれて対談し、『市民―"庶民"が"大衆"になり果てるとき』というタイトルで収録されている。  わしや師範方の誰とも異なる感性を持つ岡田氏が参加した道場は、実に刺激的なものとなった。  岡田氏は「道徳」と「政治」や「経済」の問題が無縁だと思っているが、わしの考えではそれは間違っている。 「衣食足りて礼節を知る」 というが、現在子供の6人に1人が貧困状態にあり、カロリーの摂取が学校給食に頼るのみという深刻なケースもある学校で、「道徳」を教えて何になろう? 「礼節よりもまず食べさせる」それが国家、あるいは大人の「道徳」であって、「食わせず秩序感覚だけを教え込め」というのは、北朝鮮の独裁者の考えである。   そもそも「道徳」は、「知育」・「体育」と共に、「教育」の一つであって、国家が国民を育てる意図の下に行われる。  国家が世界市民のような普遍的な人間を育てるためのものではない。「国民形成」の手段でもあるのだ。  道徳教育は権力者の政治的意図が大きく関わるものなのだ。政治と経済ぬきの「道徳」はあり得ない。  しかも「 道徳の教科化 」という文科省の要請は、安倍政権の要請であって、わしは「新しい歴史教科書をつくる会」の会合に来ていた安倍晋三とは、左翼偏向教科書の問題点を話し合っていたのだ。  自民党の憲法草案には、表現・結社の自由に「公益や公の秩序に反しない限り」という制限がつけられているが、これについて自民党の憲法改正推進本部本部長代行を務める船田元衆院議員は、「公の秩序」を重視し、いきすぎた自由を制限する旨の発言をしている。  また、草案には憲法の本旨である「国民の国家権力に対する命令」に加え、国民に対する義務規定や道徳規制などが含まれており、船田は「 道徳的側面は現在の日本人の規範意識が薄れてきている実情を考えるとどうしても書き込まざるを得なかった 」と言っている。   日本社会の秩序が乱れてきたから、憲法にも「道徳」を書き込み、「道徳教育」も強化しようというのが、自民党が重要視する「道徳」の原点なのだ。  これから新自由主義の政策がさらに加速され、貧困層が膨大に増えていく。そこで権力や政治に対する不満が爆発すると、政権が覆されるかもしれない。  だから子供のうちから「秩序」を教え込み、権力に反抗できないような精神を植え付けてしまおうという魂胆の「道徳教育」という側面もあると警戒しておくのが大人である。  岡田氏の言う「道徳」と「政治・経済」は関係ないという考えは、実にナイーブなもので、わし自身の今までの政治的行動も、大いに関係しているのである。   権力に従順な国民を育てる装置として「道徳教育」が利用されうることは、中国を見れば明らかである。   中国の道徳教育は「社会科」と合科になっており、徹底した「愛国教育」を行なっている。  この愛国教育では日本の「侵略」を撃退した中国共産党の「功績」を徹底的に称賛することが行われる。  実際に日本軍と戦っていたのはほとんどが国民党軍であり、共産党軍はその間戦力を温存して「漁夫の利」を得ただけなんてことは、絶対に教えられない。  こうして「中国共産党を正統と認めよ」という教育が行われ、中国人は子供の頃から中国共産党への忠誠心を刷り込まれるのである。 
小林よしのりライジング
常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!