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【サンプル記事】DNJかわら版ーお試し版 (2012年11月5日)
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【サンプル記事】DNJかわら版ーお試し版 (2012年11月5日)

2012-11-16 08:42

    もくじ

    1.HOTトピックス

    • ざっくり紹介:億万長者が血道をあげるお買い物:米国の大統領選挙
    • フォーカス:二大政党が独占する大統領候補公開討論会
    • トリビア:「デビッド新聞」 DAVE’S PRESS

    2.DN大好き

    3.書籍&映画:「忘れられたジョージ・マクガバンの夏」

    4.字幕スクリプト付き動画インタビュー:デビッド・ハーベイ「反乱する都市」

    5.DNコーパス アクティブ市民のための英語



    HOTトピックス



    Democracy Nowから最新のトレンドを抽出してざっくり紹介。ニューヨークを中心に、米国の良識派や進歩的文化人やアクティビストが、いま注目している話題をお届けします。字幕では古くなってしまう事件、気になる事件のフォローアップ、トリビアなどのコーナーも有り


    億万長者が血道をあげるお買い物:米国の大統領選挙


    選挙とおカネ、なかでも庶民のことなどちっとも考えてくれそうにもない億万長者の横車のお話です。

    目前に迫った大統領選挙(米国時間の116日)。オバマ、ロムニー両候補と民主・共和両党が10月半ばまでに集めたお金は20億ドルに達し、米国史上で最もお金にまみれた選挙になりました。金額だけみれば、民主党が106000万ドル、共和党が95400万ドルと、似たりよったりですが、出所はかなり違います。ウォール街はロムニー派、シリコンバレーはオバマ派、年金生活者と女性団体のお金はオバマと民主党に流れています。小口の寄付が多いのがオバマや民主党陣営の特長で、23ドルの寄付も含めた200ドル以下の小切手が420万件にものぼり、受け取った献金全体の55%にあたるとは驚きです。一方で大統領選への献金額の上限とされる2500ドルの寄付は13%にとどまりました。ロムニー候補と共和党側ではこの割合が逆転です。2500ドルの寄付が45%、200ドル以下の小口は22%にすぎません。お金に余裕のある人やビジネスが肩入れする共和党というイメージは、ここでも実証されています。

    政治資金は規正と抜け駆けのいたちごっこ

    選挙にまつわるおカネは、上記のような候補者や党に直接わたる献金にとどまりません。特に今回の大統領選をこれまでになくどぎつくしているのが、スーパーPACに流れこむおカネです。「スーパーPAC」とは何か?その誕生までのいきさつをたどってみましょう。政治資金を規正して政治を広く国民のものにしようとする試みと、多額の寄付を通して自分たちに都合良く政治を操ろうとする勢力とのいたちごっこの歴史です。

    現代の政治資金規正の骨格を作っている法制は、1970年 代に確立されました。大統領辞任まで引き起こしたウォーターゲート事件への反省で、政治をただそうとする真摯な試みが勢いづき、政治献金には厳しい制約が 課されることになりました。ところが、この法制には意外なところからほころびが生じました。使われたのは、皮肉なことに「言論の自由」の原則です。選挙 キャンペーンで特定の候補や政党に寄付することは、言論の自由の一環であり、権利を保障すべきだと主張する訴訟を裁判所が認めたのです。かくして、候補者 や政党は選挙戦に特化した献金をがっぽり集めることができるようになりました。ソフトマネーと呼ばれるおカネです。これがあまりにも目にあまるものになり 国民の不信を買ったため、これではいかんと2002年に超党派で成立させたのが、マケイン=ファインゴールド法と呼ばれる改革案。ソフトマネーは、一切禁止になりました。

    タガを外したシチズンズ・ユナイテッド判決

    抜 け穴はすぐに見つかりました。外部応援団の利用です。特定の政治・社会問題や政策を応援する、政党とは独立した団体を外部に作り、そこにおカネを入れても らうのです。応援団体の仕事は、主にテレビなどでの意見広告です。投票日前の特定期間を除いては、「誰それに投票してください」あるいは「誰それに投票し ないでください」と露骨に言わない限り、特定の候補や党の名をあげてほめそやしたり、中傷すれすれにけなしたりできるのです。このような応援団として広く 利用されてきたのがPACPolitical action committee:政治活動委員会)と呼ばれる組織です。それでも、PACに寄付できるのは個人に限られ、寄付できる金額にも規制がありました。このタガを外してしまったのが、2010年に最高裁判所がくだしたシチズンズ・ユナイテッド判決でした(http://democracynow.jp/video/20101028-2)。この判決は、なんと企業にも人間と同じような言論の自由を認め、すなわち、企業も個人と同様にPACな どに寄付をすることを可能にし、大きな論議を呼びました。けれどもそれと並んで大きかったことは、この判決の趣旨を受けてその後に下された連邦裁判所の一 連の判決で、企業に言論の自由を認めるのなら、政府は一切口出し出来ず、寄付の金額を規制することもできないという見解でした。これにより外部団体は際限 のない額の寄付を集められ、選挙とからめて広告を流せる期間などの他のしばりもなくなりました。スーパーPACの誕生です。

    スーパーPAKになだれこんだ億万長者たち

    スーパーPACが誕生してから初の大統領選挙。フタをあけてみると、懸念された企業からの寄付の割合は10数パーセントに過ぎず、あふれかえったのは億万長者たちのおカネでした(http://democracynow.jp/video/20120829-4)。以前なら数千ドルの寄付が限度だったのに、いまではおおっぴらに数百万ドル、いやいや数千万ドルをも寄付できるのです。このようなスーパードナー(献金者)の 中でもひときわ目立つのが、デモクラシー・ナウ!でも何度か話題になったニューヨークの大金持ちコーク兄弟とラスベガスのカジノ王シェルドン・アデルソン です。他にもテキサスの実業家ハロルド・C・シモンズやウォール街のヘッジ・ファンド経営者ポール・シンガーが大物で、いずれも共和党を応援しています。 オバマが唱える富裕層への増税に強硬に反対しているのも彼らの共通項ですが、それぞれの思惑は微妙に違います。

    くせもの揃いのスーパードナーたち

    デービッドとチャールズのコーク兄弟(David and Charles Koch) は、コーク・インダストリーズ社というオイルビジネスの経営者ですが、会社を上場しておらずマスコミの取材を受けることもごく少ないので知る人ぞ知る存在 です。ニューヨークきっての大金持ちでNYシティバレーはじめ数多くの文化団体に気前よく寄付していますが、政治思想は、親の代から超保守的です。デー ビッドは1980年にリバタリアン党の副大統領候補として出馬し、政見を披露しましたが、ともかく大きな政府には大反対、社会保障や福祉、数々の規制当局はもちろんのこと、FBICIA、公立校すべての廃止を唱えたのです。兄弟は、地球温暖化に異を唱えるするあやしげな「科学」を推進し、全米で労働組合つぶしや企業よりの法案の通過への支援に力を注いでいます。ルパート・マードックとともに茶会党に多額の資金を流した影の人物でもありました。

    コーク兄弟と並ぶ、怪物がシェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)です。ラスベガスのカジノ王で全米で10本 の指にはいる大金持ちで、ごちごちのイスラエル支持者です。超保守的なイスラエルのネタニエフ首相と個人的にも親しく「パレスチナ国家はイスラエルとユダ ヤ人を抹殺する足がかりになる」と主張し、オバマが少なくともポーズとしてはイスラエルべったりを避けようとするのを忌み嫌っています。生ぬるいオバマの 経済政策ですら、アデルソンの目には「社会主義的」らしく、オバマを倒すためなら1億ドル出しても惜しくないと公言しました。労働組合憎しで、1990年 代以来、共和党の右派ニュート・ギングリッジと意気投合してきたアデルソンは、共和党の予備選挙では、ギングリッジに多額の寄付を続けました。しかし、い くらお金を注いでもどうにもならない人気のなさでギングリッジがロムニーに負けてしまったため、かつては「あこぎな資本家」とけなしていたロムニーの応援 にまわりました。「和平が実現しないのは、ひとえにパレスチナ人のせいだ」とすりよったロムニーの努力が報われたのです。

    ヘッジ・ファンドのポール・シンガー(Paul Singer)は、「ハゲタカ・ファンド」であくどい金儲けをする人物として知る人ぞ知る存在です。 「ハゲタカ・ファンド」とは、もともとはアフリカなどの債務国が苦境に陥り債務不履行すれすれになったときを狙って債券を超安値で買い取り、わいろや脅迫 やありとあらゆる手で額面どおりの返済を迫り、貧しい国がようやく手に入れた欧米からの支援金を横から奪い取り甘い汁を吸うビジネスです。英国では禁止に なりましたが、米国ではこれを禁止するか否かは大統領の決断にかかっています。シンガーは米国内でも企業を相手にハゲタカ手法を応用し、オバマ政権がデト ロイトの自動車業界に渡した公的資金を吸いあげて大もうけをし、シンガーに投資していたロムニーもボロもうけのお相伴にあずかったと、調査ジャーナリスト のグレッグ・パラストが最近のスクープで暴露しています。 シンガーは、オバマが進めている金融規制政策に反対し、ロムニーがこれを無効にすることを期待しています。またシンガーは、史上もっとも右よりの副大統領 候補と言われるポール・ライアンの献金者リストではトップワンと言われ、ロムニーに副大統領候補としてライアンを強力に推したのは彼だと言われています。

    右傾化したロムニー

    スーパーPACを利用しているのは、もちろん共和党だけではありません。オバマが長らく外部団体の利用を批判してきたこともあり、共和党のような華々しい動きは見えませんが、民主党にもまたジョージ・ソロスを筆頭にお金持ちがついており、共和党のスーパーPACが息切れしかかった夏には、共和党を超える寄付を集めました。

    スーパーPAC以 前に億万長者が寄付する方法がなかったわけではありません。「社会福祉」のための非営利団体を作り、選挙運動ではない、広範なコミュニティの利害を推進す るための団体だと言ってしまえばよいのです。選挙がらみの活動には若干のしばりがありますが、たてまえ上は政治団体ではありませんから、誰がいくら寄付し たかを連邦選挙委員会に公開する義務がありません。かつて「ブッシュの頭脳」と呼ばれた策略家のカール・ローブは、司法へのあくどい介入で訴追すれすれの 目にあい、なんとか生きのびて、なりをひそめていたかにみえましたが、スーパーPACと「社会福祉」団体の両方で多額の寄付を集め、党の中での存在感を再び強めています。

    マ サチューセッツ州知事時代には穏健派で知られたロムニーですが、大統領候補者を決める予備選の過程で、共和党の右派の支持ほしさにその発言はどんどん右傾 化していきました。企業の権利を国民の生活の権利より優先する億万長者たちの暗躍が、民主的な政治にとってマイナスなのは明らかです。 共和党の全国大会 を取材したエイミー・グッドマンやデモクラシー・ナウのスタッフは、日頃は出会う機会が無いデビッド・コークやシェルドン・アデルソンのコメントを求めて マイク片手に果敢にインタビューを試みました。防護の人垣を作られたり、マイクを奪われたりしながらの奮闘でしたが、庶民の抗議が届かない党大会の会場で 我が世の春を謳歌する億万長者、それが2012年の大統領選挙の象徴的な姿ではありました。

    (大竹秀子)

    フォーカス 二大政党が独占する大統領候補公開討論会



    討論が大好きな米国人ではありますが、今回の大統領選挙ほど、候補者による公開討論会が注目されたことはありません。テレビを通して国民に直接呼びかける討論会は、大統領候補によるものが3回、副大統領候補によるものが1回、合計4回おこなわれます。10月はじめの第1回大統領選挙では、両候補の接戦が喧伝されていたこともあり、6700万人もの視聴者を集めました。民主党支持者と共和党支持者とで国が2分し、浮動票が選挙の行方を決めるとみられる今回、2人 の候補が弁舌さわやかにいかにして迷っている人々の心を捉えるかと、両党の支持者たちは固唾をのんでみまもりました。ところが、この討論会、オバマ・ファ ンを真っ青にさせ、不安におののかせる結果に終わりました。頭脳明晰、さわやかに弁が立つはずのオバマが、何度も言いまどい、なんとも切れ味が悪いので す。討論会の直前に「国民の47% はお荷物」的な問題発言でボロを出しまくっていたロムニーにとどめの一撃を与えようともしません。「絶対、私に投票してくれ、期待しててくれ」ととりあえ ず言うのが筋だろうに、「決めるのは、あなただ」などと、ぬるいことを言っています。危機感も緊張感も感じられないのです。一方のロムニーは、立て板に水 の弁舌で、つじつまなどどうでもよろしい、ともかくここで勝てばよいのです、と他大変な勢いです。おかげでこの1回目の討論会で、ロムニーは突如、勢いを増しました。さすが2回目と3回目では、オバマも気をいれて少しはイメージを挽回しましたが、討論会の重要性が浮き彫りにされました。

    というわけでなかなかに楽しめるイベントではあったのですが、この討論会、民主的な大統領選びの手続きという面からは、大きな問題を抱えています。現在、討論会を主催しているのは大統領選挙討論委員会(
    Commission on Presidential Debates)という団体です。名前だけ聞くと政府の機関のようにきこえますが実は1987年に民主・共和両党が共同して作った民間の非営利組織です。この組織が討論会の運営方針を決めているのですが、その中に全米で15パー セント以上の支持率をもつ政党の候補以外は参加できないというのがあり、これは事実上、二大政党以外の候補はお断りというのに等しいのです。その他にも民 主・共和両党は、毎年、事前に細かい約束事をとりかわし、両党につごうが悪いなりゆきにならないよう、討論会を裏で操作してきました。両党による覚え書き は、これまでは非公開とされ、内部告発者からのリークでのみうかがい知ることができましたが、今回は、2回目の討論会の直前にタイム誌が21ページの契約書を入手してウェブに掲載し、司会者の役割にいたるまで事細かい注文を出していることが明らかになりました

    第三党の候補者たちが、実際に大統領に選出される可能性はほとんどないかもしれません。それでも公開討論会で、第三党の声を消すことにより、民主・共和両 党が一致した政策への批判が一切、聞かれ無くなってしまいます。例えば、オバマ大統領がテロ集団壊滅のためと称して好んで使っている無人機攻撃は、たくさ んの民間人の犠牲者を出し非難の声もあがっていますが、無人機攻撃はロムニー候補も賛成しているため、二大政党間の討論会で議題にあがることはありませ ん。英ガーディアン紙のコラムニストのグレン・グリーンウォルドが語るように、現在の討論会は、民主・共和両党の些細な違いだけに人々の注意を向けさせ、国民に「重大な選択権をもっているという神話」をふりまくための目くらましでもあるのです

    (大竹秀子)


    トリビア


    「デビッド新聞」 DAVE’S PRESS

    エイミーをジャーナリズムにめざめさせたのは弟デビッドだった。エイミーが10歳の時、2歳半も年下のデビッドが「デビッド新聞Dave’s Press」を発刊したのだ。エイミーと一番年上の兄スティーブはさっそく協力を申し出て、デビッド新聞社は一気に2名 も助手を持つまでに成長。デビッドが家にあったガリ版のような機械で新聞を刷ると、エイミーとスティーブが封筒に入れ、デビッドはそれを持って、両親、お じいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんの家を回り、寝室のドアの下から封筒をすべりこませて「配達」したそうだ。グッドマン家の2階の廊下には「デ ビッド新聞社はこちら⇒」という貼り紙まであったらしい。ある日のトップ記事は「エイミー、ママにおしおきされる!」。するとエイミーのお母さんがデビッ ドを呼び、「自分の家の恥ずかしいことを公表してはいけません」とクレームをつけた。するとデビッドは「検閲だ!」と抗議。エイミーもむろん「そのとお り!」と叫んだ・・・かどうかは定かではないが、絶対そうに違いない。

    (桜井まり子)



    気になるできごと(このコーナーは不定期です)


    レバノンの首都ベイルートで1019日、自動車に仕掛けられた爆弾で国内治安部隊(ISF)の情報局トップのウィサム・ハッサン准将ら数名が死亡しました。暗殺の背後にはシリアがいるとの見方が広がり、21日の葬儀が抗議行動に発展し、首相府に押しかけた人々が治安部隊と衝突する騒ぎになりました。

    イスラエル海軍は1020日、ガザ地区に向かうパレスチナ支援船エステル号を海上で拿捕し、乗船していた運動家たちをイスラエル国内の牢獄へと連れ去りました。エステル号の乗客はカナダ、イスラエル、ノルウェー、スウェーデン、米国など北欧や北米の活動家が中心でした。

    初めてガザを訪問したノーム・チョムスキー教授は、イスラエルの占領下でたくましく生き延びるパレスチナ人の姿に感銘を受けたと述べ、ガザの封鎖を破ろうとして捕えられたエステル号の乗客に連帯の意を表明しました。

    20日には占領下のパレスチナで6年ぶりに選挙が行われました。今回は地方議会の選挙ですが、実施されたのは自治政府の権限がおよぶ西岸地区に限られています。ファタハとハマスの統一政府をつくる動きは決裂し、ハマスが支配するガザ地区では選挙はボイコットされました。

    カーター元大統領は、イスラエルが和平努力をいっさい放棄していると非難しています。西岸地区を訪問した際の発言で、イスラエルは「二国家解決」(イスラエルとパレスチナがそれぞれ独立した国をつくる)にこれまでになく消極的で、「中東和平交渉に長年かかわってきた私も初めて経験する危機的な段階」と述べました。

    イスラエルによるガザ空爆で4人のパレスチナ人が死亡しました。ガザからは反撃としてイスラエル領に向けてロケット弾が飛ばされ、イスラエルに出稼ぎに来ているタイ人の農業労働者2人が重傷を負いました。

    ホーリーランド財団の元幹部5人の上告審が始まりました。ホーリーランド財団はかつて米国最大のムスリム慈善団体でしたが、パレスチナでの慈善活動の資金を現地のイスラム主義組織ハマスに託したことがテロ組織の支援とみなされ、5人の幹部が有罪判決を受け長期刑を宣告されました。しかし起訴状にも暴力的な活動を支援したという記述はなく、困窮した住民のための人道支援が犯罪として扱われたのです。1025日にはマイケル・ラトナー弁護士などの支援者がマンハッタンの連邦政府ビルの外で集会を開き、判決の不当性を訴えました。

    クウェートでは選挙法の改正に反対して1021日に数万人のデモがありました。米国が支援するクウェート王制は議会を解散し、選挙法の改正を図っていますが、反対派は改憲クーデターだと非難しています。首都では警察がデモ隊を取り囲み、催涙ガスやスタン手榴弾を浴びせ29人が病院で治療を受けました。

    アメリカ先住民運動の指導者ラッセル・ミーンズ(Russell Means)が1022日に72才で亡くなりました。先住民運動の初期のリーダーで、1973年のウンデッド・ニー(Wounded Knee)の蜂起に重要な役割を果たしました。(ウンデッドニーはサウスダコダ州南西部の先住民居留地)

    スペインのマドリッドで1023日、数千人の群衆が国会議事堂を包囲して公共部門を標的にした歳出削減措置への反対を表明しました。緊縮政策への反対行動は繰り返し続いており、1114日には今年二度目のゼネストが予定されています。

    CIAが拷問を用いていたことを公然と認め、司法省から訴追されていた内部告発者が司法取引で有罪を認めました。ジョン・キリアクは1990年から2004年までCIAで働き、アルカイダ幹部とみられるアブ・ズベイダ容疑者の尋問に水責めを使ったことを2007年のABCニュースで詳細に語りました。今回の司法取引で、キリアクは他の秘密諜報員の身元を明かしたという1件についてのみ有罪を認め、最長で30カ月の刑に服することになります。オバマ政権は政府の内部告発者に弾圧を加えており、キリアクも今年になって訴追されました。

    オバマ政権は、テロ容疑者を監視下に置いて遠い将来に逮捕または殺害するときに備える長期的なメカニズムを密かに開発しているようです。ワシントンポスト紙によれば、このプログラムは「処分マトリックス」(disposition matrix)と 呼ばれ、無人機による戦闘やオバマ政権が作成した「暗殺リスト」のような超法規的な殺人を、将来の政権にも継承させるものです。「処分マトリックス」には テロ容疑者に関する詳細情報が収集され、その人物が「身柄引き渡し、捕獲作戦、無人機パトロール」などの対象となったときに役立てられます。

    ワシントンポスト紙はまた、ジプチの米軍施設をベースに、アフリカ東部から中東までの地域で秘密作戦を遂行する計画も報道しています。JSOC(米統合特殊作戦軍)もホワイトハウスの近隣に過激派追跡のための秘密基地を建設している模様です。この報道の前日には、CIAが海外で使用する戦闘用無人機の大幅増強に動いているとの報道がありました。米国政府の「暗殺リスト」の存在が明るみに出たのは2年前のことで、NYタイムズ紙が長文の記事を掲載しています。

    ニュー ヨークのシェラキューズ近郊にあるハンコックフィールド州空軍基地で、無人機を使った戦争に抗議する行動があり、17人が逮捕されました。抗議者たちは基地の3カ所の門の外を人垣でブロックし、米国が海外で行っている無人機攻撃で死亡した子供たちの写真や標識を掲げました。無人機を遠隔操作しているハンコック基地では、こうした抗議が何度も繰り返されています。

    (中野真紀子)

    DN大好き



    デモクラシー・ナウ!の近況をお知らせします。米国の大手商業メディアとは一味違う、独立メディアらしい動き。支持者と一体になって作り上げていく報道とは?


    3政党の候補をまじえた拡大版領候補者討論会を特別放送



    世界中で1100局 を超える放送局で放送されている独立メディアとして、デモクラシー・ナウが今回の大統領選で行った画期的な企画が、拡大版大統領候補討論会でした。公式の 大統領候補討論会が二大政党以外の候補を排除するなら、批判しているだけではなくて、自前でより公平な討論会を「開催」してしまおうという企画です。公式 の大統領候補討論会で出された大統領候補への質問と同じ質問を第3政党の候補者にもして、民主・共和両党の候補の答えの後にはめこんで独自の討論会を仕立ててしまったのです。3回通しで参加した大統領候補は、緑の党のジル・スタインと正義の党のロッキー・アンダーソン。2回目の討論会には立憲党のバージル・グッドも参加しましたが、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン候補は、出場を辞退しました。

    ちなみに第3政党の候補者をまじえた討論会は、ほかにも「自由で平等な選挙(Free and Equal Elections)」という団体が企画しましたが、デモクラシー・ナウの企画が、二大政党の討論会と同日、または翌日で、同じ質問という作りだったのに対して、こちらは2回構成の勝ち抜き戦。ラリー・キングを司会者にして世間の注目を集めようとしましたが、ネットワークには相手にされず、アルジャジーラ英語放送やウェブなどでの限られた放送になりました。第1回目には緑の党、正義の党、立憲党、リバタリアンの4人の候補が参加し、勝ち残った緑の党のジル・スタインとリバタリアンのゲーリー・ジョンソンが1030日に2回目にして最終の決戦討論を行う予定でしたが、大型ハリケーン「サンディ」の到来で、大統領選前日の115日に延期することが決まりました。

    (大竹秀子)

    書籍&映画 &人物



    ジョージ・マクガバン(George Stanley McGovern 1922.7.192012.10.21

    1021日に亡くなったジョージ・マクガバン元民主党上院議員は、1972年 の大統領選挙に共和党の現職ニクソン大統領に挑み、ベトナムからの即時撤兵と軍事予算削減を掲げて大旋風を巻き起こしたことで知られています。草の根運動 の熱狂的な支持を受けて民主党の指名候補を勝ち取りましたが、反戦の主張は民主党内に大きな亀裂を生み、ニクソン陣営が繰り広げるネガティブ・キャンペー ンの攻勢もあって、歴史的な大差で敗北してしまいました。反戦候補のもとに結集した様々な社会運動家たちの落胆は大きく、ある意味で1960年 代の社会革命にとどめを刺すことになりました。マクガバンとその支持者にニクソン陣営が貼った「過激な左翼」というレッテルは、選挙後も執拗に繰り返され ます。右派はもちろん「リベラル」を標榜する大手メディアも、戦争遂行という米国の「神聖な権利」に異議を唱えた大統領候補を決して許そうとはしなかった ようです。

    メディアによって葬り去られた30年前の出来事を掘り起し、反戦大統領マクガバンの草の根旋風の輝きを伝えようとする記録映画が、2005年に公開されたOne Bright Shining Moment: The Forgotten Summer of George McGovern『光り輝いたあの時:忘れられたジョージ・マクガバンの夏』http://firstrunfeatures.com/onebrightdvd.html)です。スティーブン・ビットリア監督、ナレーションはエイミー・グッドマン。

    参考番組リンク(英語のみ)

    (中野真紀子)

    字幕スクリプト付き 動画インタビュー



    ニコ生放送動画の、1)まるごと字幕スクリプト 2)ちょっとディープな話、3)世界の運動とつながるための英語表現(DNコーパス)


    『反乱する都市』デビッド・ハーベイ


    字幕スクリプト はここからダウンロード democracynow.jp...

    東京スカイツリーは世界一大きな電波塔ですが、地デジタワーとして不可欠だったわけではなく、巨大ショッピングモールだけが目玉の壮大な浪費のモニュメントです。墨田区は83億 円もの税金を投入したそうですが、大型商業施設との競争にさらされる地元商店街はたまったものではありません。古い街並みを破壊し、公園から野宿者を追い 払い、周辺地価を押し上げただけで、大多数の住民には何の見返りもありません。大阪だって負けてはいません。大阪都構想でぶち上げられた「大阪10大名物」構想は、住民の暮らしには役に立たない大型開発だけが目的の究極のハコモノであることを、グロテスクにさらしています。

    く だらないモニュメントに税金を注いで観光名所に客を呼び込んでも、潤うのは「1%」の富裕層だけ。一握りの富裕層が金の力で議員やメディアを買い、市民生 活に影響を及ぼす都市政策を思いのままにしているのです。いま世界各地で起きている民衆蜂起は、都市を「1%」の専横支配から取り戻そうとするものだと、 有名な地理学者で都市社会学者のデビッド・ハーベイ教授は言います。

    環 境整備、地域の活性化などとうたった再開発は、おんぼろな建物、違法な住居、ヤミ領域などを一掃し、清潔で美しい住環境をつくります。でも富裕層のために 設計された都市空間は、消費とビジネスの中心地をめざすものであり、大多数の住民にとっては窮屈で不自由なものになります。貧困という目障りなものを排除 した管理空間には、住民が自由に利用できる共有の場所がありません。ホームレスを追い出して花壇と噴水で埋めた公園では、何をするにも規制がかかり、許可 なしには炊き出しも、テント芝居もできません。もちろん政治集会もできません。公共の場所といいながら市民に開放されてないのです。

    住 民が集まって政治を議論するアゴラ(広場)のような空間が、現代の都市からは消されています。市民が集まる場所が、都市計画によって巧妙に排除されている ともいえるでしょう。それどころか治安強化のために警察がビデオ監視システムや無人偵察機など本格的な軍事装備を備え、欧米では警察の取り締まりが市街戦 の様相を呈しています。

    その背景にはレーガン大統領の時代から一貫して続く所得の再分配の停止があります。富と権力の集中はすさまじく、無力化された99%に残された最後の対抗手段が街頭の直接行動なのです。1970年 代から始まった新自由主義の巻き返しで、国家は社会福祉予算をどんどん切り詰め、環境悪化への対策も責任も取らなくなりました。レーガン大統領は富裕層に 対して減税すると同時に軍事支出を増大させたので、米国は財政赤字と巨額の負債に陥り、その穴埋めに社会福祉予算が削られました。減税と軍事支出赤字拡大福祉と環境予算の削減というパターンは、以来ずっとくり返されています。

    *デビッド・ハーベイ(David Harvey) ニューヨーク市立大学教授 人文地理学、都市社会学 『新自由主義――その歴史的展開と現在』など著書多数。

    *スティーブン・グラハム(Stephen Graham 英国ニューカッスル大学の都市社会学教授。最新著はCities Under Siege: The New Military Urbanism(『包囲される都市 新たな都市の軍事化』)

    (中野真紀子)


    DNコーパス:アクティブ市民のための英語




    There’s nothing more unequal than the equal treatment of unequals

    「対等でない者を平等に扱うほど不平等なことはない」

    "equal"(平等な)と "unequal"(不平等な)はどちらも形容詞ですが、"unequals"は 複数になっているので名詞です。意味は「相手と同等ではない者たち」。純粋な自由市場社会に近づくほどますます富が上層に集中し、下の階層の生活水準は低 下します。新自由主義の市場万能主義がなぜ格差を増大させるのか、一行で説明できるウィットの効いたハーベイ先生の言葉。

    gentrification

    ジェントリフィケーションは、都心部の貧困層の多い地区に比較的裕福な人々(gentry)が移り住むようになると、従来からの住民はよそに移っていく人口移動現象をさします。最近亡くなったニューヨーク市立大学の地理学教授Neil Smithは、"Toward a Theory of Gentrification: A Back to the City Movement by Capital, not People" (1979)で、 ジェントリフィケーションの要因は文化や価値観の衝突ではなく、不動産価格の上昇や土地投機によって引き起こされた経済的な現象であるという説を打ち出し ました。インフラを整備し高級住宅を建設して中流層を呼び込めば、不動産の相場が上昇し、家賃や税金が払えなくなった古くからの住民はもっと安いところを 求めて出ていかざるを得ません。これによって貧民層が一掃され、地域全体の不動産価値も上昇するという再開発のからくりです。

    STEPHEN GRAHAM: And cities in the last 20 or 30 years, particularly in North America, have become much more sanitized, much more controlled by questions of zero tolerance, by questions of really aggressive policing, to clear out those that are deemed to be sort of not fitting a model of urban life, which centers on consumption, which centers on business. So there’s been a really powerful shift in cities to sort of criminalize homelessness, to criminalize panhandlers, to criminalize those not seen to belong in this-what Neil Smith in New York has called the "revanchist city," the city taking back spaces for the wealthy, effectively. And then, of course, there's planned gentrification, and then there’s redevelopment.  

    スティーブン・グラハム:
    北米では ここ2030年の間に
    都市の健全化政策が進み
    不寛容で攻撃的な取り締まりが
    行われるようになった
    この政策の目的は
    都市に相応しくない人々を排除して
    消費とビジネスの中心地にすることです
    都市は大きく変容しており
    ホームレスや物乞いを犯罪扱いし
    都市に属さない人々と見なす
    この現象をニール・スミスは
    「失地回復」と呼びます
    再開発で街並みを高級化し
    貧しい住民を追い出すのです

     

    monopoly rent

    "rent"と いう単語には、ちょっと紛らわしい、二つの違った意味があります。土地や耐久財を借りるときの賃料(地代、家賃、小作料、貸借料)という普通の意味のほか に、経済学でいう「超過利潤」(生産を維持していくのに必要な最低限のコストと実際の取引価格の差額)という意味もあります。monopoly rent (独占レント)は後者の意味で使われています。

    超 過利潤は自由競争によって減少します。超過利潤を拡大すれば、生産量を増やさずに収入を上げることができますが、そのためには競争を制限しなければなりま せん。価格カルテルの形成や労働組合の結成などがその例ですが、唯一無比のものとしてブランド化することも有効です。都市が独特の文化を売り物にするため 他所にはない特別なものを作ろうとするのも同じ動機で、そこに生まれる超過利潤が狙いです。

    つ まり労なくして得られるオイシイ利益の部分ですから、資本家なら当然その部分の最大化を追求します。この衝動こそが現代のグローバル資本主義の核心になっ てきているとハーベイは言います。フランスのワイン製造業者が「ビンテージ」の概念を世界市場に売り込んだのもまさにそれですし、競合関係にある世界の都 市が他所とは別格の特殊な地位を主張するため、史跡を保護整備して歴史を強調したり、博覧会をやって美術館や会議場や競技場をつくったり、モニュメントを 建てたりするのも独自の文化的な価値の演出です。奇抜なモニュメントだって、ガウディの建築やノイシュバンシュタイン城のように大成功の例もあるのです が、型通りの発想のもとに奇抜さを求めるとディズニーランドまがいが増殖します。荒唐無稽にみえる「大阪10大名物」の構想も、ここから合理的に説明できるのかも。ハーベイの論文 "The Art of Rent: Globalization, Monopoly and The Commodification of Culture"

    DAVID HARVEY: Well, one of the things that’s happened is the attempt to turn cultural activities into industries to try to commodify history, and you get a sort of commodified form of history. And that allows people to claim that this is a very unique configuration. So, there’s an attempt to create something very, very special, to which tourists are drawn, and then that gives you what I call "monopoly rent," that the uniqueness of cultural configuration is being commodified. 

    デビッド・ハーベイ:
    文化活動を産業に組み込む
    歴史の商品化が進んでいます
    商品化された歴史によって
    特殊性を主張することができ
    他所にはない特別な価値を作り上げ
    観光客を呼び込む手段にする
    そこに「独占レント」が発生する
    文化の特殊性が
    商品化されるのです

    commodification

    ちなみに、マルクス主義者が"commodify"(商品化する)というときには、本来は経済価値のないもの(思想や歴史など)に商品として価格をつけることで、市場価値が社会的価値に置き換えられてしまうプロセスをさします。この意味の名詞"commodification"と似て非なるものが、比較的最近になってビジネス用語として定着したに"commoditization"(コモディティ化)です。これは市況商品化する(DRAMのようにメーカーによる差別化ができなくなって厳しい価格競争にさらされるようになる)という意味なのでご注意。

    (中野真紀子)


     

     

     

     


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