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アントニオ猪木誕生記念大会のIGFで「はぐれIGF軍団」の結成に動いた鈴木秀樹。今後の見通しが立ってないIGFの混沌を表わすかのような行動だが、そもそも現在フリーの立場である鈴木秀樹がなぜ「はぐれIGF軍団」を名乗るか。そしてIGFの開催が見えない中でいったい何が目的なのか。話を聞くと、まさに一寸先はハプニングなプロジェクトであることがわかった……(聞き手/ジャン斉藤)。




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――鈴木さん、大晦日のIGFに出なかったですね。

鈴木 出なかったですね。

――ほとんどのプロレスファンは企画自体をもう忘れてるんですけど、鈴木さんは「GENOME-1名古屋王者決定戦」トーナメントで優勝してるから出場権がありましたよね。

鈴木 そんなのがありましたね(苦笑)。

――もしかしたらDropkickのインタビューが原因で……。じつはずっと気になってて。

鈴木 なんでですか?

――いや、鈴木さんが藤田和之vs諏訪間戦を語ったインタビューでIGFのことをあまりよく言わなかったじゃないですか。

鈴木 だって事実じゃないですか(キッパリ)。

――まあ、そうなんですけど……(笑)。

鈴木 いや、IGFから大晦日のオファーはあったんですよ。でも、出なかったんです。

――あ、断ってたんですか。

鈴木 そんなこと気にしないでくださいよ! IGFの関係者にどう思われてるかは知らないですけど、なんでも書いていいですよ(笑)。それに今回の大会もオファーはありましたし。

――今回も断ったんですか?

鈴木 断りました。いまのIGFで闘うイメージが見えなかったですし、結果的に出なくてよかったですよ。っていうのは、出ていたら大変でしたもん。自分の試合もやったうえに、将軍岡本、カシン、藤田さんの試合に出て行って「はぐれIGF軍団」のTシャツを着させなきゃならなかった(笑)。

――試合なんかやってる場合じゃない(笑)。

鈴木 凄い疲れましたもん。大会終了後にカシンに言ったんですよ、「試合よりも大変でしたよ」と。そうしたら「そうだな。しかもノーギャラでな」って(苦笑)。

――あの「はぐれIGF軍団」Tシャツが凄くほしいんですよね。

鈴木 ハッハッハッハッ! あれは『OJISAN SPORTS』という、カシンがよくTシャツが作ってるところのものなんですけど。Tシャツを着ようとしたら後ろに『OJISAN SPORTS』って書いてあったんで、間違いなくそうです。

――というと、あのTシャツは鈴木さんが依頼して作ったんじゃないですか?

鈴木 いや、ボクじゃないですよ。将軍岡本の控室に置いてあったんですよ。

――えっ、どういうことですか? ますます意味がわかりません。

鈴木 ボクも意味がわからなかったんですよ(笑)。将軍岡本のセコンドにだけ付くために、アイツの控室に行ったら「鈴木さん宛に荷物が届いてます」と。ダンボールを開けたらあのTシャツが4枚入ってたんですよね。

――なんですか、それ。不気味ですよ!

鈴木 ボクだってビックリしましたよ。カシンに「これ、なんなんですか?」と聞いても「知りません」と。

――知らないわけがない!(笑)。

鈴木 そこで問いただしても時間の無駄じゃないですか。じゃあ誰かに着させるか、と。ボク、将軍岡本、カシン、最後の一人は藤田さんにしようって。それで3人の試合のたびにTシャツを持ってリングに上って。

――じゃあ、その場のノリで「はぐれIGF軍団」を結成したというわけですか?

鈴木 まあ、そうなりますねぇ。

――そもそも、あのTシャツが届けられても「……なんのこっちゃ?」ってことで無視する選択はありえたじゃないですか。

鈴木 もちろん、もちろん。

――おそらくカシンが「はぐれIGF軍団」Tシャツを作り、鈴木さんに送りつけた。それを鈴木さんが3人に無理矢理、着させた。

鈴木 簡単にいうとそういう流れですよねぇ。

――日常生活でちょっと駆け引きめいたことをすると「プロレスをやってる」という言い方をする人間っているじゃないですか。あまりそういう使い方は好きじゃないんですけど、鈴木さん! まさにプロレスやってますよね(笑)。

鈴木 ハッハッハッハッ! なんかこんなことになっちゃいましたね(笑)。カシンとは普段から一緒にいるわけじゃないですけど、あの人は東京に来ると、とにかく変なことをやってくるんですよ、いつもいつも。

――いつもいつも、あんなことが(笑)。

鈴木 ボクと将軍岡本のことをビックリさせたりとか。「この人は変なことをしてくる」という認識があるんですね。だから「このTシャツを着ろ!」ってことなんだろうなって。そして大会中に「はぐれIGF軍団」が増殖していったら面白いだろうなって。

――カシンと鈴木さんの「あ・うん」の呼吸が「はぐれIGF軍団」を生み出した。IGFは今後のスケジュールは発表されていないし、見通しが立たないから軍団を結成したんじゃないかというふうに見られてるんですね。

鈴木 いやあ、全然違いますよ。そもそも、ボクはIGFの人間でもなんでもないですから。

――「はぐれ」どころか、とっくに離れてるわけですもんね(笑)。藤田さんが記者会見なんかでIGFの今後について危ない発言を繰り返してるじゃないですか。ニュースサイトではその発言が活かされてるのに、IGF公式サイトではカットされてるから、IGFって本当にヤバイのかなって。

鈴木 うーん、内部にいる将軍も何も知らないですからね。上の人たちしか今後のことはわからない。だからカシンとしては「やっちゃおう!」ことなんでしょうけど。IGFは本当に終わったわけではないんですけど、バックステージでそういう雰囲気が漂ってましたよ。「あれ、これは終わりかな……」って。

――だから岡本さんも外のリングで戦うことが許されて。

鈴木 ボクも岡本と一緒にやっていくというわけじゃないですけど、2人セットのほうがわかりやすいし、パトーナーがほしかったところはあるんで。今回の行動はIGFに対してじゃなくて、岡本が外でやっていくのでそのアピールになればいいやって感じですよ。IGFの中で何かしたいという気持ちはない。あとからカシンにもメールで聞いたんですよ。「これ、外向きですよね?」って。

――結成してから方向性を確認(笑)。

鈴木 なんでそんなことを聞いたかっていうと、show大谷さんがツイッターで変なことを書いてたんですよ。ボクらの動きが「学生運動に見えた」とかなんとか。

――show大谷さんとは実質IGF内部の人間ですけど、あいかわらずズレまくってますよねぇ。学生運動って打倒体制ですよ。

鈴木 要は「あんなのはダメだよ」という雰囲気の書き方でしたけどね。さっきも言いましたが、はぐれIGF軍団は外向けですから。まあそんなことよりTシャツ持って行ったら3人とも不思議な顔してましたね。

――藤田さんも訳が分からずあのTシャツを着たんですよね?

鈴木 藤田さんの試合後、リング上で「着てください、カシンも着てますから」って言ったら「……え?」って戸惑ってましたね(笑)。

――そりゃそうですよ!

鈴木 でも、藤田さんにとってカシンはレスリングの先輩じゃないですか。そこの上下関係は絶対なんですよね。カシンさえ抑えておけば藤田和之は言うことは聞くと(笑)。

――そうやって無理矢理に加入させられたんですね(笑)。控室に戻ったときに軍団の話はしたんですか?

鈴木 するわけないじゃないですかぁ(呆れながら)。

――ハハハハハハハハハハ! 

鈴木 メシは食いに行きましたけどね、カシン、将軍の3人と。あのTシャツの話はせずにメシを食うんですよ。こっちから振ろうかなとは思ったんですけど、向こうがしてこないので「……こっちも意地でもしないぞ」と(笑)。

――鈴木さん! プロレスしてますね(笑)。 

鈴木 普段から会話もそういう感じなんですよ。ふざけてる……というわけじゃないんですけど。そこは勝負なんですよね。ボクもカシンもお互いにウソを付き合ってるという。そういうやりとりが好きってことですよね。いちおう最後に「はぐれIGF軍団は今後どうしますか?」って聞いたんですよ。そうしたら「あなたが決めさないよ」と。

――まあ結成したのは鈴木さんではありますね(笑)。

鈴木 「ボクは軍団がなくてもいいんですけど」って言ったんですよ。プロレスラーとして、この看板は邪魔じゃないですか(笑)。

――IGFの名前を触りたくない(笑)。気持ちはわかります。

鈴木 フリーになってやっとIGFのイメージが薄まってきてるのに。だいたいあれですよ、最初の頃は「鈴木さんってIGF出身なのにちゃんとプロレスができるんですね」って言われたんですよ(笑)。

――「IGF=プロレスができない」という盤石のイメージ(笑)。

鈴木 だからこんな軍団、早く解散したいんですよ。コンセプトもないですし。ただ、仮にコンセプトがあったとしても、伝える人がいないんですよ。将軍はもともとしゃべるタイプじゃない。カシンはまずマスコミとは連絡が取れない。藤田さんは何を言ってるのかわからない(笑)。

――ハハハハハハハハハハ! 

鈴木 そうなると広報役はボクしかいないんですよね。昨日「東スポ」の取材だったんですけど。何も決まってないから、ひとつひとつ考えながらしゃべりましたからね。どこで試合をやるのかも決まってない。だからこのままオファーがひとつもなく解散という可能性もあるんですよ。できれば解散してほしいんですけど!(笑)。

――いやあ、他団体に乗り込む「はぐれIGF軍団」は見たいですけどね。

鈴木 だいたいこういうのってどこか上がるリングが決まってて動くもんじゃないですか。そういう根回しは一切ないですからね。でも、新聞を見たらさっそく大仁田(厚)さんが名前を出していましたね。

――さすが大仁田厚ですねぇ。

鈴木 まあ全然見通しは立ってないですが、個人的には藤田さんと何かやれればな……とは思ってたんですよ。