ボランティアで小学校低学年のパソコン授業の支援とかをしていて、意外とばらつきがあると気付いた能力があります。それは、先生の指示を聞いてその通り実行するということです。たとえば、「ノートパソコンを開きましょう」というようなとても単純な指示でも、結構ばらつくのです。

 観察する限り、すんなりできない理由は実に様々です。単に気が散っていたり、指示を受けてそれをしようとした対象に興味が移ってしまったりといったアクティブな感じもあれば、静かに落ちついているのだけど、先生の指示を聞きのがした、聞いたけど良く理解できなかったという感じで止まっていることもあります。また毎回理由が同じわけではありません。

 ただし、直接先生の指示でできなかったといっても、その後回りを見て真似したり、あまり遅れていると先生が教室を回りながら個別に指示をしたりということでなんとなくキャッチアップしてしまうので、授業そのものは、まあ一応全員落ちこぼれることなく、その時間の目標を達成できてしまいます。

 しかし、一人一人に注目すると、必ずしも先生の指示を聞いてすみやかにその通り実行できているわけではないのです。これは「言うこと聞く素直な子よし」という性格の話ではありません。人の話を聞いて実行という技術的な問題です。

 仮にできていなくても回りを真似したり、先生の適切なフォローがあってついていってはいるのですが、授業で後手後手に回ってしまうわけで、苦手科目などでは苦手意識を増長する原因になりかねません。
 しかも、教室にはたくさん生徒がいるわけですから、先生一人で先生の指示を聞いてその通り実行する能力そのものについて一人一人指導していくことは不可能です。

 ということは、家庭で取り組んであげないといけません。うちの子は、まあ普通程度にできてるとは思いますが、今後もより複雑な指示を聞いて実行できるように、日頃から家庭でサポートするできることはなにかと考えました。


 そのときとりあえず思いついたのは料理です。うちでは、妻がときどき子どもに料理をさせます。指示に従って手伝う、あるいは自分たちだけで全部作るといったことです。火や包丁は危険ですから、料理に関しては原則指示をきちんと守らなくてはなりません。餃子包む時に変なの作ったりはいいけどね。
 ということで、料理やその他お手伝いは、今後も続けるし、そのときに私たち親は子ども達が指示を実行する力がつくよう意識しようということになりました。

 そんなやりとりがあったのが連休前でしたが、先日「会社で採用した新人のうち『使えない人材』を調査したら『小さい頃お手伝いをしていなかった』」という記事を見かけました。

 子どもを将来仕事に困らない人間に育てるには 

 調べてみると家庭でお手伝いをすることには、いろんな効果があるようです。

正義感・道徳心が強くなる
問題解決能力が高くなる、
人の役に立つ経験、
責任を果たした経験、
自信がつく、
要領を考え、工夫する
責任感が芽生える
よく気が付き、さっと行動に移せる
親子のコミュニケーションが深まる

(参考
 夏休みは子どもにお手伝いをさせよう!
 子供はお手伝いで大きく成長する )

 などなど。まだ小学入学前の未就園児でも奨励されています。できる範囲で。

 でも、未就園児にとってお手伝いは、もっともっと基本的な能力、つまり大人の指示を聞いてその通り実行するという能力の大切な訓練の機会でもあったのです。

 実際、そう考えながら子どもに指示をしてみると、子どもは実にいろんな理由で、つまづいています。意識してないと、「なんでわからへんの」と言いながら、何度も同じことを言い聞かせて、そのうちできたりしてうやむやになりますが、実は思いもよらない単語の意味が分かっていなかったりします。

 パソコンの指導だとやっかいなのはマウスの右クリック、左クリックです。特にたまにしか使わない右クリック。「右クリック」というと戸惑う子が多いのですが、そのときどう伝えるかに決め手がありません。
 「右・左」ですっと伝わらない子もいるし、じゃあ「人差し指・中指」でもすっと伝わらない子もいるし、そもそもそれぞれのボタンを押す指が決まってない子もいるし、実は「クリック」からすっと伝わらない子もいます。伝わりやすい表現が子どもによってまちまちなのです。

 パソコン用語は特殊と思うかもしれませんが、日常も同じなのです。
 大人が出すときの典型的な指示のパターン一通りを学ぶまでは、子どもにとっては「大人の言う『右クリック』の説明がピンとこない」のと同じことがたくさん起こっているのです。