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『ウォーハンマーRPGセッション風景配信』第1回プレイレポート
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『ウォーハンマーRPGセッション風景配信』第1回プレイレポート

2015-04-17 17:25
    みなさんこんにちは

    ウォーハンマーRPGセッション風景配信、第1回のプレイレポートが遅くなりまして申し訳ございません。


    前回のキャラクター作成回で産まれたキャラクターたち
    グレッチェン、ウルディサン、グルンディ、ウドー、そしてバルデマーは、一体どのような冒険に旅立つのか。

    不穏なBGMの流れるOPと共に『ウォーハンマーRPGセッション風景配信』もついに本編、開幕!



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    物語は、広大な森を有するミドンランドに流れる雄大なライク河沿いに位置する町“ブロルグ”からはじまる。

    戦と狼の神ウルリックの信奉が今なお篤いこの領邦の首都“ミドンヘイム”は、先の混沌の軍勢による大侵攻“混沌の嵐”に耐え抜いた堅牢な都である。
    首都にほど近いこの町は、およそ100年前にドワーフの手により作られた跳ね橋の両端に広がっている。かつて交易路がまだ整備されていない間、大都市間の重要な中継地点であったが、交易路が再整備されてからは重要性を失い、今や過疎化が進み単なる地方の小さな町に過ぎない。

    普段ならば農民たちと、近くの鉱山で働く鉱夫たちやその用心棒、そして数少ない商い人達の声が響くのみのこの町はしかし、神秘前月の最終日である“神秘の日”の祭りに沸いていた。

    “死の神モール”を讃える神秘の日―お盆やハロウィンのような物と思えば分り良いだろうか?―は空に浮かぶ双月『モールスリーブ』『マンスリーブ』が、共に満ちて輝く特別な日なのである。

    日が低くなり始めたばかりの時分、橋に続く大通りには露店や屋台が立ち並び、普段にはない賑わいが町の雰囲気を明るくしている。

    渉外使者として、エルフと人間の都市を行き来する“ウルディサン”。
    彼はエルフの作った上等な衣類を纏い、穏やかな笑顔を浮かべて町の入り口からゆったりと歩を進める。人間と相容れることが珍しいエルフの出現に、当然町人たちは当惑し、彼に注目した。

     曰く――森に足を踏み入れた者はエルフに喰われる
     曰く――エルフはみな魔術の使い手である

    そんな事実とも噂ともしれぬ話を思い描き、町人たちは一様にウルディサンから距離を取り、結果として混雑する祭りの場にも拘らず彼の前には道が開けた。

    (この集落の人々は何と慎み深いのだろう)

    自分のために、人々が道を開けてくれたと理解したウルディサンは、笑みを崩さずにその只中を歩く。
    もちろん、人々に手を挙げ挨拶をすることは忘れない。

    珍客の来訪に、祭りの喧噪が一瞬静まる。
    しかしそんな静寂に気づきもしないとばかりに、あちこちの露店からは客引きの声が上がっていた。

    肉屋の屋台の脇で、いかにも料理人然とした一人のハーフリング“ウドー”は、前日にこの肉屋との交渉を終えたばかりである。

    「さぁさぁお通りの方!お暇な方もお忙しい方も、目と耳と舌を貸しておくんなまし!」

    肉を仕入れる金は無い。だから、調理した物の売り上げから払う。
    普段ならば一笑に付すような提案も、この自信にあふれたハーフリングならやってくれるのではないか……?
    そんな直観を信じた肉屋の店主は、その賭けに乗ったことが正しかったのだと胸をなでおろしていた。

    『鳥肉の香草蒸し~ムート風~』

    芳しい香りを立てるその一品は一皿2ペニーという安さも有り、次々と買い求められていた。
    周囲の露天商たちも、さすがはハーフリングだ、肉屋の親父め上手いことやりやがったな。という視線で屋台を眺め、負けじと声を張り上げる。

    「良いですね、人間の料理と言う物は。素朴でまるで土の香りがするようです。あえて手を加えぬ料理法、素晴らしいですね。」

    ウルディサンは露店で物を食べ歩く人々の光景を見ながらにこやかに人々に話しかけていた。
    無論、彼には全く悪気など無いのだ。

    「わかったわかった!あんたの言いたいことはわかったよ!」
    「俺たちの料理が口に合わないっていうんだろ!?だったらそこのハーフリングの料理でも食ってろよ!」

    だが、当然町の人々からすれば、高慢なエルフの皮肉に聞こえたのだ。
    やいのやいのと町人に押され、ウルディサンはウドーが声を上げる屋台の前に押し出された。

    突然現れたエルフに、ウドーはしばし見入る。
    しかし次の瞬間、一皿手にしてその前に飛び出すと「ちょっと食べておくんなまし。」と香草蒸しをウルディサンに差し出した。

    「頂けるのですか?ありがとうございます。」

    一口ですよ!と念を押すウドーの親切に痛み入りながら鶏肉を口にするウルディサン。
    肉の端の、更に端を一齧りだけし、すかさず口元を手で押さえる。

    「……ええ、素晴らしいお味で……」
    「さぁさぁお通りの皆様!エルフの御人も褒めたこの鶏肉の香草蒸し!さぁ食べた食べた!」

    碌々感想も聞かず、道行く人々に商品とエルフを見せつけるかのように喧伝をするウドーであった。
    人々が肉屋の露店に群れを成す中、ウルディサンは決して口に合わないなどとはおくびにも出さず、そっと、肉を皿に戻した。


    エルフをだしにした呼び込みでの大繁盛の後、ウドーは人波が落ち着いたのを見て、肉屋の店主に声をかける。

    もっと売りたいのは山々だが、売る物が無くてはどうしようもない。肉はあんたから買えるが、香草蒸しには野菜や香辛料が必要だ。

    だが昨日も言った通り、自分には持ち合わせがないんだ。


    と、口実をつけて肉屋の店主から金を借りよう(≒貰おうと)とするウドー。
    ここでGMは、金を貸してもらえるかどうかは判定で決めることとしました。

    他人を口説き落とすための技能は〈魅惑〉です。
    ウォーハンマーRPGでは、特に何もなければd100でその技能に対応する主要能力値(〈魅惑〉の場合には【協調力】)以下を出すことで判定に成功したことになります。

    そのままですと、【協調力】は〇〇なので、ちょっと成功するかどうかは厳しいところ。
    しかし、ウドーは既に結構な額を売り上げているため、この交渉は「容易」な行為であるとして、20%のボーナスを与えることがGMから伝えられました。

    こういったように、その判定がどれくらい易しいか、難しいかで判定に対して修正を加えるのがウォーハンマーRPGの基本的な判定なのです。

    判定の結果は38。
    判定にボーナスを貰ったこともあり、ウドーは見事店主を口説き落とすことに成功しました。


    「お前さんが言うなら仕方がねえ、ちょいとばかり貸してやるぜ。」

    肉屋はやっと自分にも運気が向いてきたんだと信じた。
    これだけの腕を持つ料理人だ、きっと貸した金を何倍にもして返してくれるに違いない。
    儲けは後で山分けだからな、と財布から銀貨を5枚手渡すと

    「よし、じゃあすぐに買い物に行ってくる。待っててくれ!」

    とハーフリングは走り出し、その小さい姿はあっという間に人混みに消えて行った。



    一方、ウルディサンは香草蒸しを口にした後、水で口をゆすぎ(もちろん、水を口にする際には鼻を摘んでいた)肉屋に励ましの声をかけて露店を立ち去っていた。次に目に留まったのは隣の金魚の屋台であり、人間の特異な風習なのかと驚きを隠せない様子であった。
    目に写るすべてが、エルフの常識とは一切そぐわない珍奇な物であり、その興味は尽きなかった。

    さて、次にどうした物か、と思案をしていると後ろから声をかけられた。

    「エルフの旦那!」
    「おや、先ほどの」

    「お名前、何と仰いますか。私は料理人のウドーと申します。」
    「ウドーさん、ウドー…何さんでしょうか?」
    「いや、ウドーです。」
    「…シンプル…あ、ハーフリングの方ですものね。私は…えー、分かりやすく言うとウルディサンという名前です。」

    「ウルディサン!Mr.ウルディサン。ここで会えたのも百年目、何かの巡り合わせでしょう。貴方がこの町を歩くには何かと不便もございましょう。どうですか?私がご案内して差し上げましょう!いやいや、案内料なんて結構ですとも」




    ……と、堀江さんと堀内さんのキャラクターは、このように町の外から訪れたキャラクターとして合流を果たしました。

    この後にも繰り広げられていた手慣れたロールプレイでウドーが小銭を稼ぐ模様や、人間とは異なる常識を持つウルディサンのズレた言動などが、実際にどんな展開だったかは是非アーカイブ動画をご覧ください。

    ウルディサンとウドーの2人は、ひとしきりの騒動の後に休息と食事をとるため、一軒の宿に向かっていきました。

    一方、瀬尾さんと宮音さんのキャラクター達は・・・・・・?



    ブロルグの町の郊外。普段は鉱夫達が行き交う坑道も、祭の日には人の気配は無い。
    しかしこんな日にもツルハシを振う女性がいた。
    坑道の中の湿気を取り、ひび割れを入れやすくするためにも、火は絶やすことができないのだ。

    鉱山の横穴からいつ現れるともしれないグリーンスキン(オークやゴブリン達の総称)どもや、ならず者たちに対処するための用心棒も、ほとんど祭を楽しんでいるが、むっつりした顔のドワーフ、グルンディがただ一人周囲を警戒していた。

    (ハズレを引いたとはいえ)祭の日には普段よりも手当が良い。
    それに誰もいなければ普段は探しづらい希少な鉱石を見つけられるかもしれない(もちろん、これにも特別手当が出る)。

    弟妹たちを食べさせていくためにも、グレッチェンには先立つ物が必要だった。

    風に乗って聞こえてくる祭りの喧噪を余所にツルハシを振っていたグレッチェンだったが、流石に働きづめという訳にもいかない。
    一息つくために息の詰まる坑道を抜け、外の空気を吸いに出ると、身じろぎもせずにドワーフがそこに佇んでいた。

    「今日は、お主一人か。」
    「他の連中はみんな祭に行っちまったよ。」

    肩をすくめて答えるグレッチェンに、そうかと言葉少なく答えるとグルンディは、使い込まれた革袋からトクトクと液体をジョッキに注いだ。
    ぐい、とグレッチェンにも差し出される液体。もしや酒だろうか?と逡巡していると

    「エールを飲むのは仕事の後じゃろう。」

    グルンディは生真面目なドワーフなのだろう、グレッチェンはそう感じ取っていた。
    ……もっとも、幾度も酒の持ち運びに使われた革袋だったようで、注がれた水からは微かにアルコールの匂いが漂っていた。

    「浮かれて無駄に飲み食いするより、汗水垂らして働く方がよっぽど生産的じゃ。お主は人間(マンリング)にしては立派じゃのう。名は何と言う?」
    「グレッチェン、親からもらった物だし気に入ってるよ。」
    「ふむぅ…人間の名は覚え辛いのう、儂はグルンディじゃ。」
    「ドワーフの兄さんの名前だって、負けずに覚え辛いじゃないか。」

    飾り気も何もない、岩に囲まれた空間だが……いや、だからこそ、こんな他愛のない会話で、ドワーフの巌のような表情が一瞬緩んだように見えた。

    そんなドワーフとの会話の中で、ちょうど新しい鉱脈が見つかりそうな坑道がある事を思い出したグレッチェン。

    「ときに兄さん、良い鉱脈を掘るコツって何か無いかい?丁度新しい横道を掘り始めたんだけど、中々質のいい石が出てきてるんだ。」
    「鉱脈か……儂の故郷、カラザ=カラク(Karaz-a-Karak、終わりなき山の意)は豊かな山じゃった……」

    遠い目で彼方を見るドワーフ。
    オールドワールドでのドワーフは、堅牢な砦を築くことで知られているが、それはつまり幾度もの混沌の侵攻に真っ向から立ち向かった結果なのだ。
    これまでの戦いの中で、混沌の軍勢に少なくない被害を出しつつ陥落した砦も少なくは無い。
    カラザ=カラクも、そんな巨大な砦の一つだった。

    傭兵として身を立て用心棒をしながらも、産まれながらの鉱夫であるグルンディは、人間の鉱夫達の仕事をヤキモキしながら見ていたのだろう。

    「祭で働き手がお主しか居らんと言うなら、荷が重いかもしれん。手を貸してやろう。」
    「そりゃありがたい!新しい鉱脈が見つかれば手当も出るんだ、そいつを折半ってことでどうだい?」

    手当、と聞いてドワーフの細い目が、微かに開かれた。当然何が見つかるかによって出る額も異なるとのことであった。
    しかし、何が見つかろうと、何も見つからなかったとしても、手当は山分けという約束だな。そうドワーフは語ると懐から石版を取り出し、楔でその旨を刻み付ける。

    ドワーフは非常に義理堅い種族だ。
    今なおドワーフがエンパイアに留まりその守護に手を貸しているのは、2,500年も昔に黒火峠の戦いにといて、エンパイア創始者たるシグマーその人がドワーフの帝国をグリーンスキンどもの襲撃から救ったからに他ならない。
    義理堅い巌の如き種族は、シグマーとその継承者たちには永遠の借りが有ると感じており、そのため彼らは自分たちの才能や軍隊を提供することを厭わないのだ。

    「約束だ、違えるでないぞ?どれ、坑道とやらを見せてみろ。」


    さあ、グルンディは新たな鉱脈を見つけられるのでしょうか?

    先ほどの〈魅惑〉と同様に、鉱脈が発見できるかどうかは判定で決めましょう、とGM。

    今回使用する技能は〈職能:鉱夫〉です。
    この〈職能〉という技能は〈職能:料理人〉〈職能:農家〉〈職能:石工〉……など、どの職業に作業に習熟しているかを表わす“上級技能”と呼ばれる物です。
    上級技能は他にも〈言語:○○〉や〈負傷治療〉〈読唇術〉などより専門的な技術についての習熟を表わしている物となっており、先ほどの〈魅惑〉とは異なり、そもそも技能を持っていなければその判定を行なうことすらできないのです。

    そして、新たな鉱脈を探し当てると言う状況、特に容易でも困難でもないという事で、ボーナスやペナルティは無く判定をすることがGMから求められました。

    瀬尾さんのダイスロールの結果は 71 !

    残念ながら、このままでは鉱脈を見つけることはできません……が!
    ドワーフの誇りにかけて、こんな所で手こずる訳には行きません。

    ウォーハンマーRPGでは、失敗した判定を振り直すことができる『幸運点』というシステムが有ります。
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    この幸運点を使用して、今失敗した判定を振り直してみましょう!
    2回目も残念ながら失敗、3回目も失敗……さすがにこれはもう……と思いつつも

    「ドワーフの誇りにかけて!」という瀬尾さんの声と共に振り直された4回目のダイスの結果は 25 !見事、判定に成功です!

    ※基本ルールでは「1回の判定で使用して振り直しをできるのは1回まで」となっていますが、ここではGMの判断で幸運点を使っているのであれば何回でも振り直して良いということにしています。
    ルールは楽しむための物なので、状況に応じては採用しなかったり、異なるルールを適用しても構わないというのは、あらゆるゲームで言えることでしょう。


    (何も出てこないとは、当てが外れたか?)

    一瞬、不安が過ったグルンディ。しかし、若干の諦念と共に振り降ろされたツルハシは、カツンと甲高い金属音を上げた。

    グレッチェンに向き直り、胸を張るドワーフ。
    流石ドワーフだと目を見張るグレッチェンは、グルンディの髭や皺に隠れて伝い落ちる冷や汗に気付くことは無かった。

    しかし、次の瞬間。無理に掘り進めていた坑道に微かな振動が伝わる。
    ミシッと嫌な音と共に、ドワーフの頭上の岩が崩落しはじめていることにグレッチェンは気づいた

    「危ない!」

    崩落する岩に咄嗟にツルハシを振うグレッチェン。
    岩石塊というよりは、どちらかと言えば土塊に近かったのだろうか。
    岩は寸でのところで砕け、グルンディには土ぼこりを、グレッチェンには額に微かな傷をつけるのみで、惨事とはならなかった。

    「われわれ、お主のお陰で助かったわい。これだけの重量、直撃を受けていたら危なかった、借りが出来てしまったな。」

    間一髪、難を逃れた二人。

    「鉱脈発見の手柄の報告も明日になってからだね、そろそろ引き上げよう。」
    「うむ、引き上げるとするか。」

    やれやれと外に出てみれば、もう日も傾き始め、祭から戻ってくる夜番の連中の声も聞こえてくる。
    まだまだ祭の喧噪は止んではいない、賑やかな町に向かい、二人はゆっくりと歩いて行った。


    ……坑道で、あわやという危機に見舞われた宮音さんと瀬尾さんのキャラクターでしたが、幸い大きな被害も無く2人は疲れを取るため、鉱夫達の行きつけの宿に向かいました。

    ここで、プレイはしばらく休憩に。
    ロールプレイやルールの把握など、体は動かさなくても頭は動かしているため、ここでもおやつは欠かせません。
    差し入れで頂いたおやつをありがたく頂きました。(ありがとうございます)

    ちなみに、堀江さんのキャラクター、ウドーがどれくらいペテンで稼げたかと言うのをダイスで決めたところ、135ペニーもの収入があったことになりました。
    これはオールドワールドでは居酒屋亭主の週の収入に匹敵する額なので、かなりの稼ぎになったようです。


    ウルディサン、ウドーは『モールスリーブの休憩亭』という宿に来たが、祭の客で店はごった返している。
    これは座る所を探すのにも一苦労かと思いきや、ウドーは代金をテーブルに置いて立ち去る一団を見つけると、その机の飲み残しや皿を片付け、店主の所まであっという間に持って行き、空きテーブルを作ってしまった。

    「片付けてくれんのは感心だが、それは見逃せねぇぞハーフリング。」

    亭主も祭の賑わいから、酒に酔っているとはいえ、ウドーがこっそりと懐に代金をしまうのを見落とさなかった。
    差し出された片手に、つい癖でねと弁明しながら硬貨を(“うっかり”1ペニー少なく)差し出すウドーは、ウルディサンを先導して、今開いたばかりのテーブルに着く。

    ふと、入り口に目をやればドワーフと鉱山で働いているらしき汚れた女がキョロキョロと席を探しているようで、ウドーはこちらもやや強引に席に付かせた。
    抗議のために声を荒げるグレッチェンに対して、

    「まあまあ、エルフの御仁と酒が飲める機会はそうそうないですぞ?」

    と得意気なウドーであったが、もう一人、自分が連れてきたずんぐりとした影を見てしまったと頭を抱える。

    「エルフじゃと?酒が不味くなるわい!」

    エルフとドワーフの相容れなさは、その発端などは分からなくともエンパイアでも広く知られているのだ。
    ふん、と鼻を鳴らすドワーフの前に、冷や汗を垂らしながらとっさに手近の調度品を取り、ドワーフの前に壁を作るウドーであった。

    そのやり取りを立ち尽くしたまま眺めていたウルディサン。
    なぜ立っているのだという3人の目に見つめられ、はじめてその机がエンパイアで言う所の“片付いた”状態にあるのだと理解した。

    「なるほど、趣のある飾り付けですね……あ、ご安心ください。私ドワーフに対しても差別はしない主義です、お気になさらず。」

    そっちはお気になさらなくともこっちはするんじゃい、とぼやく声が聞こえるが、酒と料理が運ばれてくるとウルディサンを除く3人はガツガツと飲み食いを始めた。
    ウルディサンはなるべく無礼にならぬよう(と本人が思っている態度で)少しだけ、食事を取っていた。

    しばらく周囲でも飲み食いやバカ話が続く中、再び酒場のドアが開く音がした。
    店に入ってきたのはみすぼらしい、見るからに流れ者であろうという風体の男である。

    物乞いでも来たのか?と店内がざわつく。
    普通の旅人には広く開け放たれる宿の扉も、厄介事を持ち込むかもしれないような輩には固く閉ざされることもあるのだ。
    亭主は眉をしかめ、つかつかと男に向かって歩いて行った。

    ウドーは辺りで酔いつぶれた客の食べ残しをかき集めて、亭主にこれでもやって追っ払っちまえよと手渡すが、

    「恵んでやるような気にはなれんな。ついこの間、流れ者の一団が町で盗賊騒ぎを起こしやがった。こいつがそういう手合いじゃないか、確かめる義務が俺にはある……おい流れ者、お前どこから来た。」
    「ノードランド……から」
    「ノードランドだぁ?あの地域は混沌の連中に蹂躙されたって話じゃないか。お前どうやって生き延びたんだ。」

    鋭い視線で亭主は男を値踏みする。
    男の周囲をゆっくりと歩きつつ、隅から隅まで、何か異様な物は無いか確かめているようだ。

    「運が良かったんです」
    「それにしちゃあ鎧もなにも着てないようだが?」
    「着のみ着のまま、逃げてきたので……」
    「ふーん……まあいい、ここでよそ者を受け入れるかどうかは、これで決めることになってるんだ。おい!アレの準備だ!」

    亭主が厨房に何やら合図をすると、店の奥からは何本かの酒瓶が運ばれてくる。
    飲み比べだ!誰かの一声が挙がり、静まり返っていた宿の中が再び騒がしくなった。

    「お前さんが行ける奴だっていうなら、歓迎してやらんことも無い。さあ、どれを飲むんだ?」

    テーブルに付いていた4人は、平和な解決手段で良かったと嘆息しつつ、亭主の手腕を心の中で称賛する。
    大酒のみならば、受け入れて酒代を落とさせることができる。酒がダメなら、酔いつぶれて悪さをすることもできなくなるだろう。
    これがこの酒場の流儀なのだ、男は客に押しやられ、亭主と向かい合う形で座らされた。

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    ここで突然の視聴者アンケート。
    酒場に現れた男……そう、視聴者キャラクター“バルデマー”が一体どの酒で飲み比べをするのかのアンケートです。

    『エール酒』『蒸留酒』『ワイン』
    この3種の酒からどれか直感で選ぶように、とのこと。

    ……このアンケートの結果は『蒸留酒』!
    選択肢の中でも、一番強そうな酒だが、果たして……?


    座らされた男は、3種の酒をしばし眺めた後、当然と言わんばかりに蒸留酒へと手を伸ばした。

    亭主は一瞬眉を上げ、すぐに表情を改めた。
    「命知らずだな、この俺とそいつで勝負しようとは。」

    比較的酔いの回りづらいエール酒やワインでは無く、下手すれば数杯でダウンしてしまう蒸留酒をあえて選ぶのは果たして単なる無謀

    なのか?店の客たちがざわめく中、お玉とフライパンを打ち鳴らす音と共にハーフリングの声が上がる。

    「さあさあさあ!張った張った!」

    亭主1.5倍、流れ者3倍。
    店の壁にオッズが書かれ、あれよあれよと言う間にウドーの周りには金を持った酔っ払いたちが集っていった。

    「親父に3ペニーだ!」「俺は8ペニー!」「流れ者に5ペニー!」

    酔客たちが見守る中、ついに飲み比べは始まった。


    ここでGMから大酒飲みについてのテストの説明が入りました。

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    ウォーハンマーRPGでは、酒を飲む際のルールがわざわざ記載されています。
    技能にも<大酒飲み>という基本技能が有り、これを用いてどれくらい酒を飲んでもまともに動けるかが決めることができます。

    もちろん、酒場で何杯飲んだかなどをわざわざ記録しなくても普通は問題はありません。
    必ずこのルールを使わなければいけないわけでは無いのですから、細かく誰がいつ何杯酒を飲んだかを記録してゲームが停滞させるようなことはしないようにしましょう。

    ただこういった、ルールの「基準」や「指針」が有ることで、酒の飲み比べの際にはどうすると良いかは分かりますし、このルールを元にもっと別の、例えば腕相撲でのルールやもっと形式ばった決闘のルールなどをGMが定める際の雛型にもなるでしょう。


    一杯、二杯、三杯と亭主と流れ者はペースを落とさず蒸留酒を流し込んでいく。
    そしてジョッキに注がれる四杯目、流石にこれだけの量となると、2人とも顔色が変わってきた。


    水で薄めていない酒は、そのキャラクターの【頑+】の値までは特に判定も必要なく飲むことができます。
    しかし、それを越える酒を飲んだのであれば、〈大酒飲み〉の技能での判定に成功しなければ、酔いが回って覚めるまでの間の判定に様々な不利益を被ってしまいます。

    バルデマーの【頑健力】は37、そして〈大酒飲み〉技能は持っていないため、習得していないペナルティとしてその半分の値、つまり「18」以下を、d100で出さなければなりません!

    判定の目は…07! バルデマーは見事、4杯目の酒を飲み干しました。


    四杯目の蒸留酒を、意を決した様子で流れ者は胃に収める。

    「……良い酒だ。」

    若干座った眼で、空になったジョッキをテーブルに置く男。特に酒にやられた様子は見えない。
    そこまで酒に強そうには見えなかったが、中々どうして根性が有るようだ。

    「言うじゃないか……!」

    流石亭主も飲みなれているだけのことはあり、同じく酔いはさほどでもないようだ。
    思いもよらずいい勝負になってきた飲み比べに、周囲の客たちの盛り上がりも増していく。

    「さあさあ新顔も健闘しているよ!もう賭ける奴は居ないのかい!?」

    ウドーの打ち鳴らすフライパンの音が響く中、五杯目が注がれていく。
    (ウルディサンは注がれているのと同じ酒を一舐めし、何やら得心が言ったという表情でジョッキを置いたがが、誰もそれを咎めることは無かった)

    汚い風体の割にやるじゃないか、そういえばあいつはなんて名なんだ?
    そんな囃子が聞こえたのか、流れ者はジョッキを掴みながら、周囲に首をめぐらせて

    「バルデマー、だ。」

    そうつぶやいた。

    そして並々と注がれた蒸留酒を再び口にする、強がってはいるがさすがに五杯目ともなると、かなり苦しいようだ。


    先ほどの判定で成功したためペナルティは無く、今回の判定も18以下を出せば成功です。
    しかし残念ながら出目は 37 !

    〈大酒飲み〉技能を修得していれば成功できていましたが、残念ながら失敗……
    幸運点を使い、一回振り直しを試みますが、残念ながらこちらも失敗。

    バルデマーは一歩、酩酊に近づき、様々な判定に-10%のペナルティを受けてしまいます。

    一方亭主は再び判定に成功!

    残念ながらペナルティのある状態での飲み比べ、巻き返すことは叶わず、バルデマーは泥酔状態となってしまいました。
    (それでも何とか9杯は飲み干しています、多少は意地を見せたと言ったところでしょうか。)

    泥酔してしまうと、このような表に従ってどんな行動を取ってしまうかと言うのが決定します。
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    ロールの結果は91で「むにゃむにゃ……おやすみ……
    吐しゃ物の中で意識を失い、1d10時間(今回は3時間)の間、誰かに起こされない限り眠り続けてしまうことになりました。

    こちらももちろん、必ずしも採用しなければならない訳ではありません。
    もっと適した結果が有るとGMが判断すれば、より場にそぐうような奇行をしてしまう事にすると、
    物語はより“らしく”なるかもしれませんね。


    「勝者、亭主ー!」

    テーブルの上に乗ったウドーが、亭主の手を高々と上げる。
    賭けに乗っていた客たちは悲喜交々の台詞を吐きつつ、すった小銭のことなぞ大して気にも留めず、再びテーブルで飲み食いをはじめた。

    「ちょっとあんた、しっかりしな!」
    「仕方ない、外の井戸まで運んでやりましょう。」
    「それ見たことか、酒場の亭主に敵う訳がなかろう」
    意識を失い、倒れたバルデマーにグルンディが吐き捨てつつ、肩に担いで外へと連れていく。

    旅の間ろくに何も食べてもいなかったのか、幸いにして対して衣類も汚れていない。
    少し濁った水のたまった桶に突っ込み、数秒してから引き上げると、男は多少はましな見た目になったようだ。

    意識はしばらく戻らないだろう。
    酒場に戻り、体を温めてやるためにも暖炉の前に転がしておく。

    「店の邪魔にならんようどこかに放っておいてくれても構わんぞ。……良い飲みっぷりだったのは認めてやるがな。」
    「あんたが酔い潰したんだろ!冷たいこと言うんじゃないよ」
    「いやぁ、こいつが酒に弱ぇのが悪いんだろうよ。」

    流れ者とは言え度胸も有ったし、悪い奴ではなさそうだ。
    程よく出来上がった亭主も、他の客たちも、もはやバルデマーへの警戒や興味は薄れていたようだった。


    3時間後、暖炉の前に転がされていたバルデマーが意識を取り戻すと、目の前には乾燥しきった料理の残骸とおぼしき物が積まれていた。

    「気が付いたかい、ほら水だよ」
    「す、すみません……」

    見知らぬ女性から手渡された水を受けとり、飲み干す。

    「私も、あちらのエルフの御仁も旅人。各地を巡る者同士、今夜くらいは同じ屋根の下、上手くやっていきましょうや。」
    「ええ、エルフとは身なりで差別するような狭量な種族ではございませんよ、ご安心を。さあ、よろしければこちらを召し上がれ。」

    乾いたのどを潤し、一息つくと、同卓のハーフリングにエルフが話しかけてきた。珍しく様々な種族が囲むテーブルのようだ。
    差し出されたパンをありがたく頂戴すると、黙り込んでいたドワーフが、

    「まったく、エルフは他の種族の事をちっともわかっとらんな。ほれ、肉やら何やらの方が腹に溜まろう。これだからエルフは!」

    と、対抗心を燃やして皿を差し出してくる。
    各地を漂白してる身として、ここまで良い扱いを受けることなぞこれまでには無かったことだ。
    戸惑いながらも、いつ物を口にできなくなるかも分からない。遠慮なく差し出される食べ物を口に詰め込んでいった。

    「どうじゃエルフよりドワーフの方が優しいじゃろう!」
    「……?施しの御心は素晴らしいですね。」

    何やら噛み合わない種族間のやり取りを余所に、バルデマーは目の前の女性の額が深く傷ついていることに気が付いた。
    荷物からなるべく清潔な布を取り出し、蒸留酒を少々浸してから、失礼と手を伸ばす。


    視聴者キャラクターのバルデマーは上級技能である〈負傷治療〉という技能を習得しています。

    これは、傷を手当てする判定に成功すれば、そのキャラクターの【耐久力】が1d10点回復するという、とても重要な技能です。
    一つの傷に対して、一回しか〈負傷治療〉はできませんが、少しの傷が命取りになるこのゲームでは、パーティーの誰かには持っていてほしい技能ですね!
    ただし、キャラクターが重傷状態(【耐久力】が3点以下)では〈負傷治療〉では【耐久力】を回復することはできませんので注意が必要です。

    【知力】の数値(バルデマーは33)以下をd100で出すことができれば、〈負傷治療〉に成功ですが……

    残念ながら判定は 90 ……幸運点を使用して振り直すも、二回目は 43 。

    グレッチェンの額の傷に、アルコール消毒が酷く染みただけという結果になってしまいました。とほほ


    「痛っ!何するんだい!」
    「ああっ、すみません。多少は治療の心得が有ったのですが……」
    「何、あんた怪我直せるのかい?」

    ウドーが金の匂いを嗅ぎつけ、素早く反応する。各地で戦が起こっている中、癒し手は貴重な存在なのだ。
    流れ者が独力で身に着けた物とはいえ、治療行為ができる人物は大変貴重なのである。
    しかし、期待に反してバルデマーの返答は「稀に。」という、心許ない物であった。

    「なるほど、人間は魔法も使わずに傷の治療をするのですね。確かにこの傷は深いですね……お可哀想に。」

    ウルディサンも傷をチラとみると、そう診断を下す。もっとも、治療をしようと言う意志はなかったようだ。
    エルフの旦那は上からだね、という皮肉に当惑しているウルディサンを見ると、やはり種族ごとの常識は、大きく異なるのだなと改めてテーブルに付いた面々は思い知るのだった。


    そうしている内に飲み食いも一息つき、日もとっぷりと暮れている。
    今日休む部屋を確認しようと亭主に尋ねると、どうやらシグマー教の信仰者の男が一人、大部屋に先客としているらしい。

    どうやら泊りの客は、その男とここにいる面々だけのようだ。
    宿となっている上階に上がろうとすると、何やらハーフリングと亭主が身振りでやり取りをしていたようだが、特に気にすることも無くグレッチェン、グルンディ、ウルディサン、ウドー、そしてバルデマーは部屋に向かっていった。
    (残念ながら個室は無いということで、ウルディサンは少々落胆してるようだが、諦めてもらうしかないだろう。)

    大部屋の戸を開けると、いくつかのベッドが並んでいた。そのうちの一つには話に聞いていたシグマーの信仰者であろう男が腰かけている。目深に薄汚れたフードを被っているため人相は窺い知れず、時折体を震わせながら、微かにうめき声を上げているようだ。
    胸元に鎚を模ったシグマーの聖印を握りしめ、必死に何かに抗おうとしているような異様な様子である。

    「御加減が悪いので?」

    ウドーが近寄り声をかけるが、薄暗い部屋の中ではその表情は見えない。
    男は、身じろぎするように立ち上がると、部屋から出ようとしているのか覚束ない足取りで扉へと向か歩き始めた。

    「おいアンタ、大丈夫か?」

    そうバルデマーが声をかけた瞬間、男はガクリと膝をつく。
    そして微かだったうめき声が、獣の如き物と変わっていき、身に纏うローブは中で何かがうごめいているかのように脈動を始めた!

    無警戒にウドーがローブの裾をめくり上げると、そこには……!


    と、ここでGMが「ではどのような変化が起きたかをランダムで決めましょう」と嬉々としてダイスを手にします。
    ルールブックで開いているページには【混沌変異表】という恐ろしい文字が!

    そう、ウォーハンマーの世界では、混沌に汚染されてしまった存在は、その身に悍ましい混沌の印が現れてしまうのです!

    ダイスロールの結果は“鱗”と“三つ目”!
    もはやその男性は、混沌に完全に汚染され、人ならざる者へと変異してしまったのです!


    苦しんでいた男性のローブがめくれると、鱗に覆われた皮膚が現れた。
    驚いて飛び退るウドーは、その男性の額に切れ目が走り、ぎょろりと巨大な瞳が新たに現れるのを目の当たりにしてしまった

    「ひっぁああああああ!? 眼、眼が!傷から眼がぁああわわわわ!」

    と転がるように逃げるハーフリング。
    とん、とぶつかったグレッチェンを見上げ、額の傷を見て再び小さく悲鳴を上げている。

    各地を渡り歩いていたバルデマーは、当然この存在を知っていた。

    「ミュータントだ!」

    そう警告の声を上げると、ウルディサン、グルンディも共に素早く身構えた。

    「おおおおお知り合いですか皆さん!?」

    混乱した中でも、男の荷物をくすねるのを忘れないウドーの剛胆さは流石である。

    男は扉の前までたどり着くと、懐からダガーを取り出し血走った眼で5人に向き直る。
    そう、この世界において、ミュータント……混沌のしるしがその身に表れてしまった者は、もはや市井で生きていくことはできない。
    追われ、捕まり、火にかけられる運命なのだ。

    自らの身に起きた不運を受け入れた男は、もはや目撃者たる5人を手にかけ、深い森にでも逃げるしかないのだ……





    と、第1回はここまで!

    いったいミュータントを前にして、キャラクターたちはどうなってしまうのか。
    それは次回4月22日の配信をお待ちください!

    また、4月18日土曜日には、テーブルトークカフェDayDream様で『はじめてのウォーハンマーRPG』も開催いたします。(申し込みはこちらから!)
    配信を見て、TRPGを遊んでみたい、ウォーハンマーをやってみたい、とお思いの方がいれば、是非ご参加くださいね!
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