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「東京5キロメートル――知ってる街の知らない魅力」
第2回 二子玉川
――おしゃれベッドタウンに潜むアナーキースポット
【毎月配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.7.1 vol.633

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今日は、宇野常寛とPLANETS編集部・学生スタッフによる、街歩きの企画をお届けします! 今月のエリアは、二子玉川駅周辺です。おしゃれな駅前の再開発だけでなく、住宅街の隠れた魅力や、自然たっぷりな癒やしスポットまで、たくさん歩きました。ご感想、お待ちしてます!



◎構成:松田理沙+PLANETS編集部
◎写真:蜷川 新+PLANETS編集部


今回歩くのは、二子玉川駅から等々力駅までの約5kmのコースです。いわゆる、「にこたま」のエリアです。
哲学者である野矢茂樹先生のエッセイ『哲学な日々』を読んでいたら、「『穴』場のお寺」という章で玉川大師の非常に面白そうな紹介文が載っていたので、二子玉川を歩くことにしました。以前から行きたいと思っていた都内有数の自然スポット「等々力渓谷」も近くにあったので、二つの目玉スポットを巡るコースを作成しました。

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渋谷から東急田園都市線の急行に乗って2駅目が、二子玉川駅です。ホームに降り立ったとき、とても明るい雰囲気に驚きました。
ホームはたくさんの光が入るように設計されていて、改札を出る前から「おしゃれ」な雰囲気が漂っています。
改札を抜け、太陽に照らされた道にでると、休日のひとときを楽しむ人々がたくさんいました。家族連れの人、ペットと一緒に散歩をする人……道行く人は皆、ファッションに気をつかっていて、表情が明るくて、とても幸せそうな印象でした。記事だからこう書いているのではなく、本当に、全面的に「明るい」雰囲気が漂っているのです。


(1)ランチ「neu」

今日のランチをいただくのは、「neu(ノイ)」というお店。駅から徒歩3分くらいの、ちょっとわかりづらい道を行ったところにあるビルの2階のお店です。

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お客さんは女性だけ! お母さま方から、若い女性までいましたが、私たちのグループ以外に男性のお客さんは一人もいませんでした。必然的に少し浮いてしまうPLANETS一行……。

ここはハンバーグが目玉のお店のようです。通常時は前菜が2種類のみ出てくるようですが、「今日だけ特別に、前菜が取り放題なんですよ」と店員さん。とてもラッキーでした。見た目も味もお洒落な前菜たち……! こちらのお店は、岩手県盛岡産の野菜をたくさん使用しているそうです。

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▲カウンターに並べられた色鮮やかな前菜から、好きなものを好きなだけとることができました。

ハンバーグが売りなのに、私はクラムチャウダーを注文してしまいました。運ばれてきたクラムチャウダーはたまねぎが芸術のようになっていてびっくりしましたが、スープはもちろん、白身魚もバケットも美味しくて大満足でした。

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▲宇野さんが注文したハンバーグ。肉汁があふれています。

腹ごしらえが完了したところで、二子玉川の街歩きスタートです!


(2)諏訪神社

当初のコースには入っていませんでしたが、諏訪大社が大好きなので寄らせていただきました。長野県に本社がある諏訪神社は、「どこからでも参拝できるように」と勧請されたものが全国に約2万5000社もあります。こちらもそのうちの一つです。

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▲諏訪大明神。鳥居のすぐ近くに階段がある珍しい神社でした。

境内の入り口はこじんまりとしていて、しばらく参道を歩くと明神鳥居があります。
こんな神社がおしゃれな街・二子玉川にもあるのだなあと嬉しくなりました。


(3)玉川商店街

さらに歩いて行くと、昭和な雰囲気が漂う商店街が始まります。どのお店もそれぞれ歴史がありそうな店構えをしていて、明るくて新しい街がすぐ近くの二子玉川駅前にひろがっているとは考えられないような街並みでした。

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▲昔ながらの雰囲気がある理容室

写真では確認しづらいですが、サインポールに「CUT & PERM HIGH SENSE」と書いてあるところにお店の歴史を感じて、ほっこりしました……。

商店街を歩いていたら、軒先にある、何のために使うのか全く見当もつかない機械が目に入りました。

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▲正体不明の機械。不思議な雑貨屋さんの前にて。

中に入って店員さんに聞いてみようと思ったのですが、他のお客さんと話しこまれていて聞けませんでした。これは一体なんだったのでしょうか……。

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▲玉川大師のすぐ近くの道沿いに幾つもあった、なぜか綺麗に割れている岩。不思議な形です。 


(4)玉川大師

さて、こちらが冒頭で触れた今回の目玉スポットです。住宅街のど真ん中に、この大きなお寺が位置しています。入り口が少しわかりづらいのですが、駐車場の奥にお寺があります。この日はお坊さんの説法中で、たくさんの人が訪れていました。

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▲お寺の中に入り切らないくらい、たくさんの人が訪れていました。

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▲境内には、なんとうさぎ「こっちゃん」が飼育されていました! かわいい!

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▲お寺の下駄箱。古い仮名遣の、手書きの案内がたくさんあります。

このお寺の魅力は地下にあります。お寺の本堂から境内の下へと続く地下経路があり、そこに大量の仏像や壁画が存在しているのです。この地下霊場は、「歩くだけでお遍路ができる場所」として有名なのだとか。

地下霊場が目的地だったのですが、カメラを持って入ろうしたら「写真撮影は禁止です。カメラはこちらで預かります」と言われてしまったので、中の写真は一枚も撮ることができませんでした……。

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▲「素足で御修行下さい」。ひんやりとした真っ暗な道を進みます。

靴を脱ぎ、本堂の奥に進むと、地下霊場へ続く急な階段があります。この階段、降りると全く光のない暗闇が広がっていて、どこまで続くかわからないのです。参拝料を払って靴下を脱ぎ、手すりにすがりながら、おそるおそる下っていきます。

目を閉じていても開けていても変わらないくらいの暗闇なので、道がどのように曲がっているのか、天井はどれくらいの高さなのか、前の人とはどれくらいの距離が空いているのか、何もかもわかりません。私たちは、普段いかに視覚情報に頼って生活しているのかを実感させられます。こんなに完璧な暗闇はなかなか体験できるものではありません。私は宇野さんのすぐ後ろを進んでいたのですが、距離感が全くわからず何回もぶつかってしまいました。後ろの人同士も同じような状況だったようで、暗闇のなかで時々「あっ、すみません」という小声が飛び交う空間になっていました。完璧な暗闇が不安を誘い、知らない人同士でも妙な連帯感が生じていました。

途中で、急に視界が開けて明るくなったかと思うと、両脇の壁に仏像がずらり。

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▲両脇には仏像が並びます。(写真はお寺の紹介サイトより)

仏像が並ぶ間を通りすぎた後はまた暗闇に戻り、長い経路をしばらく歩くとようやく地上へと戻る階段が見えました。やっと、地下経路の旅が終了です。

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▲出入り口にあるお線香の香りが、本堂の周辺に漂っていました。

「地下霊場に300体以上の仏像があるらしい」ということで行ってみたのですが、予想をはるかに上回るすごさに、しばらく動揺がおさまりませんでした。
「想像以上にアナーキーなスポットだったね」と宇野さんもびっくりしていました。何らかのイニシエーションを経た後のような、自分自身がどこか成長したかのような気持ちになりながら、二子玉川駅方面に戻ります。


(5)二子玉川ライズ

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▲駅前にそびえ立つ「二子玉川ライズ」。

玉川大師を出て、駅前に戻ってきました。ショッピングモール「ライズ」がそびえ立っています! 駅前一体に敷地が広がって、とても大きい。歩いても歩いても、ライズのビルが続きます。


(6)蔦屋家電

噂には聞いていたけれど、なかなか行く機会がなかった「蔦屋家電」。せっかくここまで来たのだからということで、ふらりと訪れました。

お店の中は、本棚の周りに、関連したジャンルの家電を展示したスペースが広がっています。また、スターバックスのカウンターと、ゆったりした机もたくさん配置してあります。
スターバックスの飲み物を片手に、勉強したり本を読んだりしている人が大勢いました。
驚いたのは、予想していたよりも家電の要素が少ないことです。
内装から、たくさん並んでいる洋書雑誌の表紙まで、ひたすら「おしゃれ」な空間でした。 

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▲歩いても歩いても「二子玉川ライズ」が続きます。かなり大きい商業施設です。

二子玉川の駅前は、スーパーや銀行、クリーニング店、理美容店など生活に密着した店のみならず、誰かとご飯を食べる場所も映画館も素敵な雑貨屋さんも、なにもかもが豊富にそろっている印象でした。「にこたまに住んでいる人はここだけで生活を完結させることができるね」と宇野さん。


(7)BETTY

二子玉川ライズから徒歩10分ほどで、クレープ屋さん「BETTY」に到着です。

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▲クレープのいい香りが漂い、とってもおいしそう!

クレープを注文して出来上がるのを待っていたら、同じくクレープを買いに来た、おしゃれなお姉さんに話しかけられました。

「ここのクレープは量もあって、本当に美味しいですよね。他のクレープ屋さんで食べても満足できなくなっちゃう。息子が、ここのクレープが好きでね……」とお姉さん。

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▲ラムレーズンカスタード味。生地がもちもちして、とても美味しかったです!

確かに、こちらのクレープはメニューも豊富で、おいしそうなものが他にもたくさんあるので、私も通いたくなってしまいました。


(8)二子玉川公園

クレープ屋さんBETTYから少し歩くと、二子玉川公園に到着です。

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▲公園では、休日をまったり過ごす人たちがたくさんいました。

多摩川沿いに建つこの2本の建物を見たとき、二子玉川に来たのだなあと実感しました。
ちなみに、ここに住むにはどれくらいお金を払えば良いのだろうと出来心で見てみたところ、中古の2LDKで一億円を優に超えていたので溜息がでました。

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▲川の向こう側には、大きな建物はありません。

二子玉川公園を通りぬけ、多摩川沿いの道を等々力渓谷に向けて歩きます。当時放送中だった、ドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』の話をしながら歩きました。瀬戸康史さん演じるカフェ店員・諒太郎くんか、徳井義実さん演じる商社マン・桜井さんか、はたまた恋愛を指南してくれる和食屋の店主・十倉さんか……どの人物が好きか、主人公はどんな選択をするのかなど、たいへん盛り上がりました。

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▲だだっぴろい河川敷に、ぽつんとライオンが。何故……?

しばらく歩いたところに、突然、ライオンを見つけました! こちらをみて微笑んでいる様子がなんとも言えません。あまりのシュールさに、一同爆笑。
なぜこんな河川敷に一匹のライオンが放置されているのでしょうか。棄てられたのでしょうか……。
不思議だったので近づいてみたところ、腰回りが妙にセクシーでますます笑ってしまいました。街歩きをすると、いつも不思議なものに出会います。


(9)等々力渓谷

多摩川沿いをどんどん歩き、閑静な住宅街を抜けると等々力渓谷に到着します。等々力駅から訪れる人が多そうな場所なのですが、私たちは二子玉川側から逆走しつつ渓谷を楽しみました。

等々力駅から訪れる人がほとんどですが、PLANETS一行は二子玉川側から歩いて向かったのでどこから入れば良いのかわからず、少し迷ってしまいました。

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▲等々力駅側にある入り口の看板。

渓谷の近くに一歩足を踏み入れると、そこは別世界です。渋谷から20分ほどでここまで緑豊かな場所があるのか、と驚かされます。

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▲水がさらさらと流れています。水面はとても静か。

渓谷は、意外と長い距離で広がっていました。歩道がきちんと整備されており、誰でも手軽に自然を楽しむことができます。

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▲一面の緑の中で、赤が映えます。

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▲川が流れているすぐそばに、敷き詰められたように白い花が咲いていました。

この日は土曜日だったせいか、私が思っていたよりも多くの人が訪れていました。都内有数の自然あふれるスポットです。みなさんも水の音やたくさんの緑に癒されに来てはいかがでしょうか?


■終わりに

清々しい渓谷を歩き終え、等々力駅に戻ってきました。今回の街歩きはこちらにて終了です。

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▲等々力駅。駅も電車もこじんまりとしていて、非常に可愛らしいです。

今回の目玉スポットはやはり玉川大師と等々力渓谷です。二子玉川駅前のおしゃれで明るい雰囲気に圧倒されてしまった心を癒してくれました。
中でも、玉川大師の地下霊場で体験できる暗闇は素晴らしかったです。普段お寺に行かないという方でも、ぜひ一度足を運んでみてください。

歩く前は、ただひたすらおしゃれなベッドタウンという印象だった二子玉川でしたが、実際に行ってみるとそれだけではない、むしろその他のところに魅力がある場所だということがわかりました。
次回の街歩きでも、知っている街の知らない顔を発見できたらいいなと思います。

(続く)


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