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「難民アニメ」から見えてくるコミュニケーション型消費の現在(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(3))【毎月第3水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.647 ☆
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「難民アニメ」から見えてくるコミュニケーション型消費の現在(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(3))【毎月第3水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.647 ☆

2016-07-20 07:00

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    「難民アニメ」から見えてくるコミュニケーション型消費の現在
    (『石岡良治の現代アニメ史講義』
    10年代、深夜アニメ表現の広がり(3))
    【毎月第3水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.7.20 vol.647

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    今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回は2010年代における男性視聴者向けアニメの動向がテーマ。しばしば「なろう系」と呼ばれる作品群やその他ラノベ原作アニメの現況、そしてゼロ年代日常系アニメがさらに先鋭化した「難民アニメ」の特質について考えます。


    ▼プロフィール
    石岡良治(いしおか・よしはる)
    1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
    『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。


    ■男性アニメオタクコミュニティの現在

     ここ10年のアニメファンが全般的に「ライトオタク化」しているという話はよく言われることですが、要するに、かつて男性アニメオタクの好物とされた「メカと美少女」が以前と比べてさほど重視されなくなっているのだと私は考えています。この問題については「今世紀のロボットアニメ」を扱うパートで改めて考察する予定ですが、「ヤマト・ガンダム・エヴァ」の三題噺の延長で近年のアニメを語ることの困難、とまとめることができるかもしれません。かつては「メカと美少女」から男性オタクのセクシュアリティについて論じる言説が多く、斉藤環さんの『戦闘美少女の精神分析』(2000年)のような精神分析的オタク論も、そういうフレームのもとでの言説と言えるでしょう。しかし現在では、こうした側面だけではアニメを捉えることが困難になっています。それはもちろん、かつてはアニメソフトをあまり購入しないと言われていた女性アニメファンの影響力の増大などもあるのですが、そもそも男性オタクが無条件的にメカ好きであるとは言えなくなっていることが大きいと思われます。「美少女」要素はもちろん重要であり続けていますが。
     ただし、今でも「メカと美少女」によって駆動されているヒットアニメは数多く、『マクロスΔ』(2016年)も普通にヒットしているように、ガンダムとマクロスという二大ブランドはコンスタントに製作され続けています。加えて、2010年代の深夜アニメにおけるヒット作の一つである『ガールズ&パンツァー』(2012年,劇場版2015年)は、戦車というメカと、美少女の組み合わせという点では、わりと伝統的な男性オタクの嗜好性に沿ったコンテンツということができます。女性ファンもいないわけではないのですが、特に2015年の劇場版では、従来からのファン層である『ストライクウィッチーズ』(2008年-)などに代表される「萌えミリタリー」コミュニティに加えて、広義の映画秘宝系マニアというか、B級アクション映画のファンをも惹きつけてヒットしました。ネットで流布した「ガルパンはいいぞ」という思考停止に見えかねない賞賛コメントは、そういう流れを集約したものと言えます。

     もう一つ「メカと美少女」美学に忠実でありつつコンスタントに続いているシリーズを挙げるなら『戦姫絶唱シンフォギア』(2012-)になると思います。『シンフォギア』シリーズは、SF西部劇ゲーム『ワイルドアームズ』のスタッフによるもので、90年代風の熱血要素が色濃く現れており、ファン以外に広く知られているとは言えません。いわゆる「閉じコン」の様相を呈してさえいるのですが、独特な作風も相まって根強い支持を集め、4期5期と続いていくことが明らかになっています。装甲をまとった戦闘美少女が歌いながら戦うミュージカル要素が独特で、悠木碧や水樹奈々といった声優が息が切れたり、ときに声が安定しないまま歌うバトル場面が魅力でしょう。シリーズが続いている一因としては、歌の要素を活かしたイベントが盛り上がるタイプの作品であることが大きいと思います。
     このように、『ガルパン』や『シンフォギア』は割と伝統的な形式に忠実な部分もあり、事実昔からのアニメファンの支持も多い作品です。具体的に言うなら1972年生まれの私よりも年長のアニメファンですね。けれども『宇宙戦艦ヤマト2199』(2012-2014年)のように年長者専用ということは決してなく(ファンの方すみません)、現在のオタク消費の形態に適応しているからこそ、広い支持を集めているわけです。ここはぜひとも強調したいところで、『シンフォギア』の場合は声優イベントとの結びつきが鍵となっており、そして『ガルパン』は、2010年代アニメの中で、聖地巡礼モデルが最も成功した作品のひとつとなっています。私はこの10年くらいのアニメの動きでは、男性のみがアニメの消費をリードする時代ではなくなったという認識を持っていますが、もちろん男性ファンが中心のこれらアニメも重要な存在感を示し続けています。特に『ガルパン』は、ちょうどポスト3.11期の震災復興とも結びつく形で、茨城県大洗市への聖地巡礼を促すイベントもコンスタントに行われていて、コンテンツツーリズムの現状を考える上でのモデルケースとなっているわけです。


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    最終更新日:2024-03-19 07:00
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