不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。東京と違い、地方ではなかなか上手く行かないシェアハウスですが、今、お年寄りと学生が同居する新しいタイプの取り組みが始まっています。今回は岸本さんが京都で手がけたマッチングの事例をご紹介します。
地方都市のシェアハウスの困難
今回は、建物のリノベーションではなく住まい方のリノベーション。つまり、これまでの住み方にはない住み方を事業として進めているというお話です。
私が東京から京都へ帰ったのは5年前。東京ではシェアハウスをたくさん作ってきました。東京のシェアハウスは、さまざまな人を享受する受入皿として非常に効果のある住まい方でした。たとえば、チャレンジしたいことがあって上京したいけど、賃料は抑えたい人。ストーカー被害に遭って一人では住めない人。シェアハウスはリア充の巣屈のように思われがちですが、私の中でのシェアハウスは「楽しくて明るいシェルター」のような存在でした。
東京でシェアハウスを作っていた経験から、京都でも、前職と共同してシェアハウスを作りました。女性専用の新築物件で家賃は6万円程、しかも京都の市街地の真ん中で利便性も良い物件でした。東京でもあれだけ需要のあるシェアハウスだから、京都でも大丈夫だろうと思っていたのですが、これが落とし穴。予想以上になかなか入居者が見つかりませんでした。時を同じくして、下鴨神社近くの家賃3万円のシェアハウスで、ものづくりをコンセプトにした物件の管理を行っていました。最寄りの電車の駅からは徒歩20分、絶望的な立地でしたが、なんと、後者の方が明らかに人気があったのです。私がこの失敗から身をもって学んだことは、東京で成立した事業がどの街でも通用するわけではない。その街その街に合った事業を組み直さないといけない、ということ。実際、地方都市でのシェアハウスの事例を一通り調べてみましたが、大学などと提携の無い限り、ほとんどがうまくいっていないという事も判明しました。