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第207号 2017.1.10発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが見舞われたヘンテコな経験を疑似体験!?小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…既に5年目に突入した第2次安倍政権。果たして安倍政権が挙げた成果は何なのか?アベノミクスは?カジノ法案は?年金カット法案は?G7伊勢志摩サミットは?対米外交は?対露外交は?対韓外交は?これほどの失政を積み重ねても高支持率を保ち、選挙になれば勝つのは何故なのか?同じことを民進党政権がやっていたら、批判の限りを尽くしたのではないか?いい加減、見たくない現実でも直視する覚悟を持て!!
※小説「わたくしの人たち」…薄井沙智子の体調は一進一退。幼い娘を抱えて完全休業したまま、病院通いの日々が続いていた。無収入が続くにつれ、徐々に金を支払うことに不安を感じ、気持ちもどんどん後ろ向きになり追い詰められていく沙智子。そこへ例の超前向きすぎる男から“スゴイ”支援が届けられるが!?
※おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてくり!」。へきゃ~~~~~っしゅ!あけまちんこ、おめでたまき―――――ん!今回の投稿ネタは特に面白くて、よしりんも絶賛でしゅ!!新年のご挨拶、めでたく華々しく、平成29年をスタートぶぁ~~~い!♪

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【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第207回「安倍政権の失政総まとめをしておこう」
2. しゃべらせてクリ!・第165回「御坊家の者とカメの者に、新年のご挨拶ぶぁい!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭の小説「わたくしの人たち」・第10話「支援、お探しですか?〈その3〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




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第207回「安倍政権の失政総まとめをしておこう」

 平成29年、最初のライジングである。
 新年にふさわしい、めでたい話題を扱おうと思ったのだが、残念ながら何も思い浮かばない。
 それよりも、いま書いておかなければならないことは、昨年安倍政権が犯した失政の数々である。
 とにかく次から次へとムチャクチャなことをやらかすから、ライジングで取り上げきれなかったものもあるし、もう覚えきれないほどだ。だが忘れてしまえばどんな失政も「なかったこと」にされ、さらなる失政を積み重ねられてしまうのだから、一度列挙しておかなければならない。

◆アベノミクス
 第二次安倍政権の最重要政策として位置づけられてきたアベノミクスだが、4年目に入った昨年も、何の成果も挙げられなかった。
 そもそも昨年元旦の「朝まで生テレビ」で、政府の産業競争力会議の一員である竹中平蔵が「トリクルダウンなんてありえない」と断言した時点で、アベノミクスの失敗は確定したのだ。
 アベノミクスとは、「大規模な金融緩和」「拡張的な財政政策」「民間投資を呼び起こす成長戦略」という「3本の矢」によって企業収益を向上させれば、一般市民の所得向上につながるという「トリクルダウン効果」を根拠とした経済政策であった。
 特に日銀による異次元の金融緩和で、「脱デフレ」を目指す予定だったが、それも成らなかった。

 昨年5月、安倍は消費増税の再延期を決定した。
 消費税率は2014年に5%から8%に引き上げられ、当初は2015年10月から10%に引き上げられる予定だった。しかし経済が増税後の落ち込みから回復せず、安倍は税率引き上げを2017年4月まで延期していた。それをさらに2019年10月まで、2年半再延期するというのだ。
 再延期をすれば2014年の増税が失敗だったことを意味するため、安倍は一貫して「再延期はない」と断言していたが、それを撤回したのである。
 ところが安倍は自らの失敗を認めるどころか、こう言ってのけた。
「今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる、新しい判断であります」
 こんな言い草が通用するなら、どんな公約違反をしようとも、「これが新しい判断です」と言えば許されてしまう。ところが実際のところ、なんとなくそれで許されたような形となってしまった。
「新しい判断」は新語・流行語大賞にノミネートされたが、年が明ければこの言葉も、それを言い放った安倍の非常識もすっかり忘れ去られている。

 アベノミクスが成功していると言い張る人は、「企業収益が増えた」「求人倍率が改善した」という点を挙げる。
 だが、円安によって企業収益が拡大したといっても、その分輸入インフレによって実質賃金が下がり、GDPの6割を占める個人消費が大幅に落ち込んでしまっている。求人倍率の改善は、単に団塊世代の大量退職によって生産人口が減ったからに過ぎない。
 いくら金融緩和でお金を降らせても、庶民には落ちてこない。資産を持っている者は投資も消費もせず、貯蓄するだけだ。ついにタンス預金が日銀の発表で約78兆円にも上っている。そうなる原因は、将来不安に尽きる。
 国民の将来不安を全然払拭しないで、経済がうまくいくわけがない。だが安倍は失敗を認めたくないだけの理由で、「今こそ、アベノミクスのエンジンを最大にふかす」などと言い続けたのだ。

◆カジノ法案
 一向にアベノミクスが成果を見せない中で、安倍が新たな「成長戦略の目玉」と言い出したのが、なんとカジノなのだからあきれ果てる。
 カジノ法案については、政権べったりの読売新聞までも含む、主要全新聞の社説が一致して反対するほどだったのに、安倍政権はほとんど議論もさせずに強行採決してしまった。
 そもそもカジノの収益とは、「バクチに敗けた客がすった金」に他ならない。
 カジノ法案は、正式名称を「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」という。例によっての言葉のごまかしで、あくまでもカジノは「統合型リゾート施設(IR)」の一部に過ぎないように見せかけたいのだ。

 カジノ推進派は決まって「カジノの面積は全敷地の3%で、メインではない。残りの97%はホテルや劇場、ショッピング街などで、あくまでもカジノを含む統合型リゾートだ」とか言う。
 だが海外の実態を見れば、IRの売上高の大半は「面積3%」のカジノが挙げており、「ギャンブル依存症の父親が大損する傍らで、母親と子供が“格安ディズニーランド”で楽しむという構造」だという。
 さらに今回の異常な「暴走審議」の陰には、日本の富裕層の個人資産を狙った、海外カジノ企業の要請があるのではという疑惑もささやかれている。もしそうなら、安倍は日本の国富を海外流出させるために尽力した売国政治家に他ならないし、そうでなくとも、賭博で経済成長などという輩には、二度と「美しい国へ」などと言う資格はない。

◆年金カット法案
 安倍政権は昨年、公的年金改革法案という名の「年金カット法案」も強行採決している。
 これにより年金支給額は現在より5.2%も減少。国民年金は年間約4万円減、厚生年金は年間約14.2万円も減る。
 既に安倍政権はこの4年の間に公的年金を3.4%減らし、70~74歳の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げている。
 生活保護受給水準以下で暮らす高齢者は5年間で約160万人増え、高齢者全体の25%を占めている。そこへ年金カット法が施行されれば、間違いなく貧困高齢者は急増していくことだろう。

 安倍政権は2014年12月、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用計画を見直し、国内債券の比率を60%から35%に引き下げ、リスクの高い株式投資の比率を50%まで高めた。
 株価を操作して好景気を偽装し、消費増税の口実を作るためであり、要はアベノミクスの「成果」を捏造するために、国民の年金をバクチにぶっ込んだのだ。
 そしてその結果、たった15カ月間で公的年金積立金が10.5兆円も運用損失で消えてしまった。
 年金カット法案とは事実上、この株式運用の失敗のツケを国民に回し、年金支給額を減らすことで帳尻を合わすための「制度改革」なのである。