第69号 2014.1.14発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…昨年4月、安倍首相は「遺骨帰還事業を着実に進める」と表明、政府は平成26年度から、南太平洋諸国やミャンマーなどでの戦没者の遺骨収集事業を強化する方針を固めた。その背景にある思惑とは何なのか?靖国参拝との関係は?そもそも遺骨収集をどう考えるのか?日本人の原初的な習俗や、宗教観にまで掘り下げ深く分析する!
※ウィキペディアの記事を徹底的に添削しちゃう大好評「よしりんウィキ直し!」。今回取り上げるのは偶然にも、安倍首相の靖国参拝が話題となっているこのタイミングで『靖国論』!…がしかし!!『靖国論』に関する記述内容が「ウィキ直し」史上ワースト1・2位を競う酷さで唖然!?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!AKB48紅白歌合戦で審査員を務めたときの裏話を教えて!年始の挨拶を携帯・スマホで済ませる若者をどう思う?宇宙旅行はしてみたい?都知事選についてはどう考えてる?映画館の「シニア割引」使ったことある?ドラマ『相棒』で好きなキャラやエピソードは何?大瀧詠一の曲で好きな曲は?大島優子がNHK紅白で卒業発表したのは、やはり出過ぎたマネではないか?滝川クリステルに関する重い質問に、答えてよしりん!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第71回「遺骨収集・千鳥ヶ淵墓苑が形骸化する理由」
2. しゃべらせてクリ!・第30回「『絶交仮面は行かねばならぬのぶぁ~い!の巻<前編>』」
3. よしりんウィキ直し!・第13回「ゴーマニズム宣言⑨:『靖国論』」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記
第71回「遺骨収集・千鳥ヶ淵墓苑が形骸化する理由」 安倍首相は昨年4月、大東亜戦争末期の激戦地で、今も日本兵約1万2千の遺骨が残る硫黄島を訪れ、「遺骨帰還事業を着実に進める」と表明した。
これを受け政府は厚労、防衛、外務各省による作業チームを結成。事業費として平成26年度予算に数十億円を計上し、部分的な収容と調査を並行して着手するという。
さらに安倍首相は今年から2年間を目標に、同じく大東亜戦争末期の激戦地だった南太平洋の島国へ、現職首相としては29年ぶりとなる歴訪の方針を固め、合わせて政府は平成26年度から、南太平洋諸国やミャンマーなどでの戦没者の遺骨収集事業を強化する方針を固めた。
いずれも日本人戦没者を慰霊し、遺骨収集活動を強化したいとする安倍首相の強い意向によるという。
南太平洋諸国やミャンマーへの訪問には、中国の進出を牽制する狙いがあるとか、昨年末の「靖国神社参拝」と「遺骨収集の強化」を「慰霊のため」の一連の行動だと強調することで、靖国参拝に対する中国や韓国の反発を和らげようとの思惑があるとか言われている。
「靖国神社参拝」が「遺骨収集」と同じ「慰霊」だと、国民にも、諸外国にも、強調すること自体が完全に間違っている。
靖国神社は「特段、英(ひい)でた霊」に対する「顕彰」の施設であって、「慰霊」の施設ではない。
英霊は犠牲者ではなく、英雄であって、靖国神社に参拝したら、命を賭けて国を守ってくれた英霊に感謝し、我々もその覚悟を誓うのが本当なのだ。
「遺骨収集」は「犠牲者」に対する「慰霊」だから、靖国神社とは根本的に理念が違う。
そもそも硫黄島への入島制限を緩和し、事業費を10倍に拡大するなどの方針を打ち出し、同島の遺骨収集事業を大幅に推進したのは民主党の菅政権で、政権交代以前から国による遺骨収集事業は推進される傾向にあった。
菅直人も以前から遺骨収集には積極的だったということで、当時、菅は
「せめて御遺骨を御家族の待つ地にお返ししなければならない。これは国の責務であります」
「われわれは、尊い命を賭して祖国を守ろうと硫黄島で奮闘された英霊に思いを致し、この国の平和と繁栄をしっかり築いていかなければなりません」
といった発言をしている。ただ、自称保守派やネトウヨたちが、靖国神社に冷淡な菅直人のやることだから「欺瞞」だと決めつけ、無視していただけのことである。
遺骨収集など、戦没者慰霊事業の担当部署である厚生労働省によると、海外における戦没者は約240万人で、収容された遺骨は約127万体。海に沈むなどして収容が不可能なものや、国交のない北朝鮮などにある遺骨を除き、まだ約60万体の収集が可能という。
これらの戦没者を、一人でも多く、一刻も早く「帰還」させたい…実はわしもかつてはそう思っていた。遺骨に魂が宿っているという遺骨信仰がわしの中にも残っていたのだ。
だが同時にこういう疑念が拭い去れなかった。
それでは、遺骨が収容されていない戦没者の霊は、日本に「帰還」していないのか?
太平洋に没した遺骨、シベリアに斃れた遺骨、満州・シナ・朝鮮に埋もれた遺骨はどうなるのか?
戦没者の霊は、全て英霊として祖国に帰還し、靖国神社に祀ってあるのではなかったのか?
靖国神社に遺骨はない。祀られているのは「霊」だけだ。
遺骨収集は日本人の骨への信仰で成り立つのだろうが、その聖地は千鳥ヶ淵墓苑である。
もともと神様を数える単位である「柱」が、遺骨を数える単位としても使われていることなどから混同されやすいのだが、遺骨信仰と、霊魂信仰は違う。むしろ、相反するものとさえ言える。
遺骨が還らなければ帰還したことにならないというのでは、靖国神社の否定につながってしまうのだ。
だから、菅直人が靖国神社を否定する一方で、遺骨収集事業に熱心だったとしても、これには全く矛盾はない。
逆に靖国神社と遺骨収集事業を一続きのもののように思っている、安倍政権や自称保守の感覚の方がおかしいのだ。
遺骨収集は昭和27年の「遺骨送還に関する閣議了解」などに基づき実施されているが、政府が推進する上での法的根拠は弱く、民間が中心となって行なわれてきた。
この「民間」というのは具体的には各地の戦友会や遺族会などである。これらの人々にとっては、戦没者は自分に近しい存在だったわけだから、遺骨を野ざらしにしておきたくはない、できれば日本に帰還させ、きちんと弔いたいという思いは「情」として全く当然のものだった。
だが平成に入った頃から、戦友会や遺族会の人たちが高齢化し、現地入りすることが困難となってきたのに伴って、戦没者とは直接のつながりを持たないボランティア団体が遺骨収集に関わるようになってきた。ここが、遺骨収集事業の大きな転機となったのである。
コメント
コメントを書く今回のライジング配信は水曜になるとのことでしたが、実際には火曜配信。ただ、僕にとっては予想外ではありませんでした。前にも同じようなことがあったので…。
忙しい中、「期限内」に配信を間に合わせる、みなぼんさんの根性には脱帽しますが、無理はしないでくださいね。
こんなこと言うと、みなぼんさんは皆の好意に甘えるわけにいかないと、益々頑張りそうですが、万が一みなぼんさんが潰れてしまうと、よしりん企画は大変なことになるので…、そこが心配です。
>>95
弘樹さん
いや、「踏みとどまった」のは、na85さんから説教食らったからです。自分の力じゃなくて…。
ここの女性は下ネタに寛容な方が多いので、多少はいいと思いますよ。僕もそこに甘えるている部分はあるし。
ただ、やめ時が難しいですね…。
今回の「ウィキ直し!」の中で、サンフランシスコ講和条約11条の「諸判決」が「初判決」になっていました。
お詫びして訂正いたします。
>>108時浦師範代殿
おそらく、少なくとも、コメント欄に足跡を残すライジング・メンなら皆そのつもりで「特に引っ掛かることなく」読んでいると思います。ただ一見さんのためにも指摘したほうが良い場合がありますね。
その場合は期間限定でコッソリいきます na85
>>101 na85さん 遅ればせながら、見事な白馬であります。
米作りはまさにその、岩澤式「不耕起・冬季湛水」です。また、大豆も岩澤式へそまがり大豆栽培で取り組み、綿花にも手掛ける予定ですので、研修生という立場で行う予定です。これらの栽培方法を体得するのも里山を目指すものとしては欠かすことができません。
刈敷農業ですが、実は畑に生える雑草を嫌気発酵させて堆肥にする方法がすでに行われていまして、現場周辺に森林があればこの雑草に山草や柴も導入してやってみようかと検討中なのです。岩澤氏は一昨年他界されましたので無理ですが、実は塾の主催者である株式会社アースカラーは岩澤式不耕起農業と提携していまして、米作りは一貫して岩澤式です。
木質ペレット及びバイオマスについては高知まで言って実習することとなります。また、小水力発電を実施している自治体にも言って本格的なバイオマスエネルギーについても受講する予定です。
江戸推しですが早速一回目の講義で歴史を見直す場合、どの時代まで遡って見直したら良いか?という課題が上がりました。その後に「今伝わっている日本の伝統は江戸中期に出来上がったもの」という話が出されていましたので、江戸の叡智を導入させる機会が十分にあると思いますから、いま、如何にして吹き込むか模索中です。
塾の目標は伝統回帰であり、伝統回帰という目標のために歴史に学びつつ、現代技術を利用するからこそ、伝統回帰をすることができる。
故に古代復古と伝統回帰は全くの別物である。
古代復古と伝統回帰は全くの別物であるなか、混同している人が実に多い。
magomeさんへ私信
「江戸への新視点」読了しました
12ものテーマにそれぞれ専門家が研究した内容を述べる
400年続いた江戸時代を知る上で非常に有用な本だと言えます
民衆の羨望と信仰を集めた富士山
街道と宿駅の発展に貢献した参勤交代
生産者でありながら職人でもあった農民
土地の条件に合わせ緑と水を結びつけた町づくり
町奉行=都知事兼警視総監兼地方裁判長 長いなオイ
漫画に代表される「絵と言葉」の複合表現が存在していた
いかに学校の教科書が退屈で出鱈目だというのが良くわかります
こういう本を学校の図書室に置いておくべきではないでしょうか
>>90 こいらさん
ありがとうございます。
他の方のコメントなども合わせて見ると、地方の方が積極的に行動しているのかもしれませんね。
>>100 na85さん
まんまとお馬さんに釣られてしまいました(^。^;)
仕事が忙しい上に、資格の勉強も始めまして、風邪も引いてしまったので、全然時間が取れなかったのです。これからもあまり今までの様には書けないかもです。
でも「股間をライジング」的なやりとりは、笑いながら読んでいましたよ。それに対するna85さんの短歌もほんとに見事でした(笑)
>>110 magomeさん
塾お疲れさまでした。
とても面白い内容ですね。興味があります。
大変だとは思いますが、でも、羨ましいです。
また、いろいろと書いてください。
楽しみにしています(*^_^*)
今週のライジングは、靖国神社スペシャルというようなタイムリーな内容でした。
安部首相の慰霊訪問によって、靖国神社の英霊を顕彰するという意義が失われようとしている状態だと気付き、気をつけなければいけないと感じました。
あと、よしりん先生の「しょせん骨は燐酸カルシウムである。」は目からうろこが落ちるとともに、笑ってしまいました(^^;;
よしりん先生の遺骨の話を聞いて、ふと思い出したことがあります。3.11の津波です。これは昨年度ある大学で催された院生の研究発表会に参加した時に聞いた話なんですが、3.11の津波では沿岸部に建てられていた墓がほぼ全滅、墓に納められていた骨も津波によって流されました。その研究で大事なことは、骨がなくなったその墓にその研究時点で一年経った今でも遺族が参っているということを明らかにしたことでした。骨なき墓に参拝する?当時の僕は多少頭に?を浮かべながら、大事なのはそこに骨があることではなく魂が宿っているという感覚なんだろうなぁとテキトーに納得させていました。今回よしりん先生の記事を読んで自分の考えとの整合性がつきスッキリしました。良い朝を迎えられそうです。
>>110:magomeさん
なんだか良さそうな活動のオンパレードなのでけっこう羨ましいですね。岩澤信夫さんは亡くなられたのですか。残念です。日本のコメ作りは不耕起・冬季湛水がスタンダードにならないと先がないと思います。野菜もモンサントのF1種子と化学肥料・農薬のセット販売から脱出しない限りジリ貧です。『江戸グルメ誕生』は読みました。『江戸への新視点』は途中です。仕事関係の読み物が多くて…。最近知ったのですが、江戸から続く下肥の伝統が途切れたのは’64東京五輪の時らしいです。
>>112:mayuさん
神山号にはお帰り頂きました。いつも短歌へのコメントありがとうございます。励みになります。
次は何の画像にしようか… na85