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企業 内部査察官 明智光太郎のケースファイル ファイナル ケース1 大正電力 社長解任決議まで残り1日
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企業 内部査察官 明智光太郎のケースファイル ファイナル ケース1 大正電力 社長解任決議まで残り1日

2014-09-02 23:45

     

    図には表れない現場の声、雰囲気


    アナライズ


    BS,PL、株価、MK効果測定表 提案資料の図解


     

    見知らぬ11桁の番号が表示されている。とっさに小林は携帯に出た。


    「どう?南雲ビジョンはつかめたか?」


    「・・・明智さん。3日間も電話に出ないで何してたんですか。」


    「今回はでかいヤマだからね。だいぶ空中線で時間をとられてる。」


    「よくわかりませんけど。」


    「まだ最期の決め手にかけるが、出口導線だけは確保した。尾行(つけ)られるといやだったんで、姿を消して動いてたんだ。」


    「つけられたのは今回が初めてじゃありませんけど。」


    「あまり、長い時間話せない。この回線も盗聴(きかれ)るからな。ステータスをくれ。」


    「肝心のMKは分裂状態、営業はほぼ沼田陣営、総務人事は南雲社長支持が多く、経営企画室のトップは敵におとされています。ただ次長の北条さんは南雲支持で動いていただけます。」


    「そうか。想定の範囲を出ていないな、結構。」


    「明智さんの成果はどうですか。」


    「おお、今日はくいかかるな。明智5条を言ってみろ。」


    invisible eye 見えないものを見る。」


    「虚をつき、実を取る」


    inside job 内部工作」


    be shadow 黒子に徹する」


    「その行動規範から著しく逸脱しているか?」


    「いいえ。だけど明智さん、今回の大正電力は私一人で社内を見るのは限界があります。」


    「いいや、まだ限界はきてない。」


    「企業の規模が大きすぎます。私にはとても背負いきれない・・」


    「男はつくらない。誠意をつくす。同情しない。これが小林ルールじゃなかったかね。」


    「3つのうち、2つは守ってます。」


    「3つ目が君の課題だな。ラスト5秒だ。何かほかに報告は?」


    「南雲ボックス。杉並さんから明智さんに渡してくれと。何ですか、これ。大正電力の全てが入ってるって。必要なときまであけるなって。」


    「明日、新橋駅いつものロッカーに入れてくれ。Pick upする。」


    「明智さん・・・」


    「小林君、早く帰って着替えたまえ。お気に入りのスーツがだいなしだぞ。」


    「え・・!」


    携帯は切れた。小林はとっさに周囲を見渡した。暗闇に浮かぶ皇居周辺に人影は見当たらない。近くにいたのか。姿を消して。携帯にコールバックした。機械的な音声が応えるだけだった。携帯を堀に投げ入れたい衝動を何とか抑えて、小林はタクシーに乗った。


    私も姿を消して、動きたい。そうすればこんなに重圧を感じることはないのに。


    様々な人間の言葉が頭を反芻する。不協和音をたてて。全国4万人の大正電力の声など拾ったら頭がパンクするだろう。「新橋駅烏森口まで、そこで少し待機してください。そのあと」その後は今日受けた様々な“気”を全部おとして、まったく新しい小林で出社しよう。


    小林を乗せたタクシーが発車した。それを確認したようにバイクが1台。夕闇に消えていった。大正電力の社長室の電気はまだついている。


     

    @@@@


     

    小林は新橋駅で用事を済ませてタクシーに再度乗り込んだ。次は品川でいいですよね、という運転手にうなずいて発車を促した。タクシーは新橋駅を国道@@線に出て、浜松町、田町を通り過ぎる。品川駅近くの自宅マンションまで後数百m、御殿山を左手にソニーが見えたとき、小林は突如Uターンを促しタクシーは一路逆方向へ向かった。やっぱり。尾行(つけ)られてる。バイクが1台小林の切り替えしに少し遅れてつけてきていた。黒のBMW全身黒の皮ジャケットとフルヘルメットで夜の闇にとけこんだバイクを振り切るように、できるだけ大通りを日比谷方面に引き返した。細かい道はバイクの方が有利。小回りが利く。戸惑っていた運転手も何やらただごとじゃない事態を少し楽しみながら、うまく他の車を抜き去る。大通りでも追い抜きはバイクの方が楽な上にスピードの加速、減速がじざいだ。ぴったりと車2台分後ろをつけて離れない。


    「運転手さん。次の信号で赤になった後、左車線に乗れますか」


    「右側から来る交差道路に左折ではいるんですな」


    「ええ、そうです。やりましょう。最終的にはどこへ」


    「このホテルへ。」


    「ああ、このビル群にとけこんだホテルね。空中トイレ、私あれだけ使いに行きましたよ。」


    「あれ、よかったですか」


    「ええ、お客さんにはもうしわけないが、男としては快感ですな。」


    「行って!」


    信号が赤になり、皆一様に減速したところを一番右の車線から、左の車線をぬうように切り込み、交差する車道の信号が赤から青になる一瞬の間を利用して一気にハンドルを左に切って加速。バイクを赤信号に取り残して左折に成功した。


    タクシーは右折、左折を2回ほどくりかえして日本橋のホテルに向かった。後ろからバイクの姿はみえない。まいた。小林はいままでに数回明智が尾行をまいてみせるところに乗り合わせていた。見よう見まねで尾行をまくことに成功したのだ。運転手は始めてであろう、体験と自分の腕が映画のプロドライバー並みかと確認してくるのを冷静に応えてやりながら、小林はあの部屋への入り方を思い出していた。タクシーはゆっくりとホテルにのりいれてた。御代はけっこう、と言ってきかない運転手に数千円を渡してロビーに入る。


    エレベーターで32階のフロントに上る。例のフランス人スタッフはいない。小林はさりげなくstaff onlyのドアの前まで行き、振り返って後ろ手にドアを開けて、再度尾行がいないか中と外を両方の目で確認したうえで中に入った。灰色の長い廊下はまるで人気がしない。小林はどんつきまで走りぬけ壁にとけこんだボタンを押したエレベーターがゆっくり上がって、扉が開いた。31階に下りた。明智の部屋はドアが開いていた。風が吹き抜けて小林の髪をゆらした。1分ほど躊躇して立ち止まっていた小林は部屋の入り口に向かう。エレベーターは知らぬ間に32階に行き、また降りてきていた。小林はそれに気がつかない。


    部屋の入り口で手鏡を床に置いて中の様子を見た。空調が激しく動き、音は聞こえないが中に入るのは何となく危険な気がした。すると空調が突然落ち、風がやむとともに無音になった。最悪のタイミングで小林の携帯がなった。しまった・・・!着信音がこだまする。手鏡に人影が映った。こちらに近づいてくる。エレベーターに向かって全速力で走った。短い廊下はすぐ終わりエレベーターの扉が開いた。尾行はまけていなかった。バイクの男がヘルメットをかぶり中から出てきた。小林は合気道3段だが、実践ではほとんど使用したことがない。使用する機会がなかったからだ。そんなに私は女の色気にかけるのかと、つまらないことが脳裏をよぎった。時間が随分ゆっくり経っているように感じる。ヘルメットの男が小林の右腕をつかんだ。小林も瞬時に相手の腕をねじまげたが、するりと抜けられた。小林は壁に飛ばされた。明智の部屋から人影が近づき小林の背後に立っていたのだ。二人の男は小林を見て、同時に両腕をつかんだ。尾行においつかれ、待ち伏せされていた。自分の読みの甘さに反省しているとき、ヘルメットの男が相手と格闘し始めた。


    一撃だった。組み合ったとき、ヘルメットの男が相手の喉を一突きしノックダウンしたのだ。小林にとって状況は変らなかった。ターゲットはヘルメットの男がものにしただけ。小林には自分からしかける攻撃がない。あくまで防御あっての攻撃だから。男は小林に近づき、声をかけた。1/100の確率があたったかのような気分だった。明智がヘルメットを


    とり、小林はその場にくずれおちた。しばらく倒れている男を眺めながら冷静さを取り戻すことにした。


    「よくやったよ、君は。」


    「何をですか。」


    「新橋のロッカーではなく、直接ここに箱をもってきたこと。」


    「一度使った手は二度使わないでしょ。」


    「そうだ。そしてもう一つ良くやった。俺をまいたことだ。」


    「あれは・・・そうか今考えれば明知さんをまいたんですよね。」


    小林はまた倒れている男を見ていった。


    「なにものなんですか、この人」


    「俺をマークしていた二流の探偵かごろつきだろう。」


    「秘密の事務所を探り当てられました。」


    3日の原則通り、3日もあれば人を探すことはできる。」


    「だから、帰らなかった。」


    「そうだ。今日次のホテルに移動するつもりでいた。電話を切った後、君が予想を少し超える行動に出た。」


    「私をつけていて良かったということですか。」


    「そうだ。あじとをかぎ分けたこいつが俺を待ち伏せしているところを君が狙われるところはめになった。」


    明智は男の服をさぐり、小型カメラで顔をとってフィルムに収めた。


    「俺もなめられたもんだ。身分証持った素人にさぐらせるとはね。


    「逃げましょう。」


    「いや、こいつがお連れさんを呼んでるはずだ。いい機会だから敵の尻尾を押さえて、ご尊顔を拝そうじゃないか。」

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