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山田玲司のヤングサンデー 第330号 2021/2/22

最悪な企画をどうするか?

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今週のヤンサンで取り上げたアニメ「おそ松さん」は、傍目に見ていても「最悪な企画」に見えた。


そもそもこのアニメは「赤塚不二夫生誕80年記念」という、いわば「お祭り企画」だ。

リメイクする作品を選ぶ際に「あまりやってないけど有名なの」を選んだのが透けて見える。


「バカボン」のリメイクはやりすぎてるし、「ひみつのアッコちゃん」も何度かやっている。


「ア太郎」か「おそ松」か、あえての「レッツラゴン」か?みたいな会議になったのだろう。


そして「ここはやはり赤塚先生最初の大ヒット作、おそ松くんでは・・」みたいな流れになった気がする。



【2種類のリメイク】


「リメイクブーム」の是非についてはいずれ話すとして、「リメイク」には大きく分けて2つの方法がある。


1つは「原作」に限りなく忠実にしたもので、代表的なのは、ゲゲゲの鬼太郎の元になった「墓場鬼太郎」のアニメだと思う。


原作を冒涜するような「よけいな演出」に関しては、恐ろしく風当たりが強い。

この話はその昔ヤンサンで「彼方のアストラ」の回をやった時監督の安藤さんも言っていたのでご存知かと思う。


劇場版の「鬼滅の刃」ですら「原作に忠実」な細かな演出がされていて、近年のアニメはこれが主流だろう。


もう1つのリメイクは「大胆な現代的解釈」や「アニメ担当者の作家性」などを施した「原作とは違うけど原作より面白いアニメ」というのを狙った方法だ。


これは原作が生まれた時代があまりにも今と違っていたり、原作に当時の時勢が出過ぎている作品に多い。


今回の「おそ松くん」のリメイクは明らかにこっち側で、明るかった60年代の原作に忠実にやったら大コケするのが見えていた。


当時は斬新だった「6つ子キャラ」や欧米かぶれの「イヤミ」など、今の時代に「笑い」にするのは難しい要素が多い。


しかも「おそ松くん」の笑いは、「弱いものイジメ」に見えるものが多いのだ。


原作ではそんなイジメに負けずにたくましく生きる人達が描かれているのだけど、これは地獄の戦中戦後を生き抜いた「タフな人達」の話で、メンタルが死にかけた現代の日本人には向いていない。

(チビ太やハタ坊には戦災孤児のイメージがある)



この企画を「赤塚不二夫生誕80年記念なんでよろしく」・・なんて投げられた第1期のアニメ制作チームは大変だったと思う。


彼らは同じようなキャラの原作版の六つ子に「強烈なキャラ」を加え、ヒロイン「トト子」に「リアルな暗黒面」を持たせた。


そして「ニートの日々」という「その後のおそ松たち」を社会風刺を交えてギャグにした。


この3つの「掟破り」が功を奏して「おそ松さん」は大ヒットしたのだと思う。



【昔に負けるな】


ある程度生きると人は「昔の話」ばかりするようになる。


それは若いうちから始まっていて、高校の時は「中学時代」を、中学の時は「小学時代」を懐かしむ。