━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
山田玲司のヤングサンデー 第396号 2022/7/4

「いい子」とは何か?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「いい子になんかなるなよ」

これが僕の育った時代のスローガンだった。


「大人は嘘つきだ」「奴らに服従したら終わりだ」・・なんて。

当時の漫画やドラマや歌謡曲にはそんなメッセージで溢れていた。


80年代後期にはそんな若者の抵抗も薄れていくのだけど、僕と同世代の尾崎豊は最後まで「大人」に抵抗していた。

彼は「学生運動の最後の花火」みたいに僕には見えた。


その後、尾崎豊はあっけなく死んで、チェルノブイリが忘れられ「不良」は劣化してDQNとなり、大人への抵抗は「中2病」と冷笑され、戦後日本の「思春期」は終わった。



その後の日本社会は、若者が「不良」になる余裕さえなく、バラバラにされた個人はそれぞれの「生存戦略」に迷い、結果的に「公務員」や「外資系」あるいは「上手く儲けてる(かに見える)新自由主義のカリスマ」などに向かった。


もはや「危うい自由」なんかより「組織内での地位向上」の方が現実的な生存戦略だ、という時代になって久しい。


つまり「いい子」になるしか生きられない時代になったのだ。


いや・・そういう雰囲気が蔓延しているのが今の日本ということだろう。



今回ヤンサンで取り上げた「ワールドトリガー」はそんな「いい子たち世代」のマジメな格闘が描かれた漫画だった。


「進撃の巨人」のような「腐った大人達」への怒りはこの漫画には感じられない。


この漫画の中の若者たちは「信じられる大人に見守られ」「仲間と試行錯誤や失敗を重ね」「助け合いながら現実の問題に向き合う」という夢のような青春を送っているのだ。


「若者の闘いはかくあって欲しい」という祈りのような漫画だ。


ヤンサンの中でおっくんが「こういうのがやりたかったんだけど、できなかったんすよ!」と言っていたけど、本当に今の社会は「まともに闘うこと」ができない。



「いい子」でも「満足のいく闘い」ができない。

かといって「不良」では生きていけない。


そんな中で「報われない、いい子」が日本中に溢れている。

みんな不安で泣いている。


僕にはそう見える。



【いい子とは何か?】


しかし、そもそも「いい子」とは何だろう。