私たちが普段何気なく感じている「香り」「匂い」は,何故感じるのでしょうか?
空気は窒素78%,酸素20.1%…と習いますが,この匂いの分子は,どのくらいの濃度なのでしょう。たとえば,バナナの匂いの分子,酢酸イソペンチルが大気濃度20 ppm(百万分の一)で,バナナの匂いを感じるとすると,私たちは空気の分子を100万個集めたとき20個程度の分子で,バナナの匂いを感じることになります。人間の五感の能力は分子数十個を感じるくらいに高いのです。
原子や分子は「目に見えない」から「わからない」と感じることがあるかもしれません。しかし,私たちは「色」として,また「匂い」として,分子を五感で感じることができます。決して,原子や分子は見えないわけではありません。五感を動員して,原子や分子を感じ,イメージとしてみることができるのです。そして,科学者の中でも化学屋はそれを専門にしています。目に見えない粒子を自分の思うままに操って,この世界に存在しない新しい物質を創り出す。これが化学者の中でも合成屋の仕事です。講座を通して,科学のおもしろさ,不思議さを感じて貰えればと思います。