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「いじめ」のない学校と社会を―共産党の提案と取り組み
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「いじめ」のない学校と社会を―共産党の提案と取り組み

2013-02-20 11:44

    「いじめ」のない学校と社会を

    共産党の提案と取り組み

    党いじめ問題対策チーム責任者・書記局長代行 山下芳生さんに聞く

         いじめ、体罰の問題が大きな社会問題となっています。日本共産党は第6回中央委員会総会で、中央委員会主催の「いじめ問題シンポジウム」の開催など、とりくみの強化をよびかけました。昨年11月28日に発表cee26351f8d3bfe3c50521aa4ebc071fdcb3b51eされ、反響をよんだ提案「『いじめ』のない学校と社会を」のポイントと今後のとりくみ等について、党いじめ問題対策チーム責任者の山下芳生書記局長代行に聞きました。

    “子の命守る”最優先に

     ――「提案」をつくった経過から伺います。

     昨年夏、大津市のいじめ自殺事件が報道されました。なぜ深刻な事件が続くのか。子どもの命を守るにはどうすればいいか。党として政策をつくるべき時だと考えました。そこで党の中にチームをつくり、「まず現実から学ぼう」と現場の方々からの聞き取りを始めました。

     そのなかで問題の深刻さを痛感しました。「いじめ」被害者とご家族の苦悩は、はかり知れません。心に異常をきたしてしまった子ども、死ぬまで追いつめられた子ども。軽微に見える言葉でも、食事が喉をとおらなくなることがあります。何より、こうした子どもたちの苦悩を代弁しようと思い、提案では「いじめ」は「いかなる形をとろうとも人権侵害であり、暴力です」と述べました。

     ――政策は二段構えですね。

     ええ、社会が二つの点で事態を打開することをよびかけました。

     第一の柱は、目の前の「いじめ」から、子どもたちのかけがえのない命、心身を守り抜くことです。いわば緊急のとりくみです。

     第二の柱は、根本的な対策として、なぜ「いじめ」がここまで深刻になったかを考え、その要因をなくしていくことです。「いじめ」の芽はどの時代・社会にもありますが、ここまで深刻化しているのは、教育や社会のあり方の問題だと考えました。

    緊急のとりくみ

     ――では、第一の柱のポイントを説明ください。

    6cd5b39ead9e2deada7b845384b0a24ccd121f17 「いじめ」を隠蔽(いんぺい)したり、「けんか」「トラブル」と捉えたり、子どもを守れないケースが長く続いていることを、何としても止めなければと思いました。その点で貴重なのは、「いじめ」を解決した、辛くも子どもの命を救った等の経験が各地で積み重ねられていることです。その経験に学べば、事態は打開できると考えました。それが提案の五つの方向です。(表)

     第一は、子どもの命最優先の原則の確立です。学校には多くの仕事がありますが、子どもの命を守ることほど大切な仕事はないはずです。このことをはっきりさせて「いじめ」への曖昧な対応をやめようということです。

     第二は、ささいなことに見えても様子見せず、教職員と保護者で情報を共有して対応することです。被害者はプライドもあり、報復も怖く、「いじめられてる?」と聞いてもなかなか認めません。おとなが「ひょっとして」と何か感じた時は、相当深刻になっている場合が少なくありません。

     第三は、子どもの自主的活動の比重を高め、いじめの起きにくい人間関係をつくることです。運動会を通じて団結ができ、いじめになりそうな時も「やめなよ」と声がかかるようになったなどの話を伺いました。授業時間を増やそうとするあまり、各地で運動会や文化祭など子どもたちの自治的な活動が減っていることは心配です。

     第四は、被害者の安全確保と加害者への対応です。被害者は命の危機にあるといっても過言でなく、安心・安全が一番です。加害者は、いじめを反省し、いじめをやめ、人間的に立ち直るまで、徹底した対応が必要です。そのためには、「いじめ」に走った悩みやストレスを聞き取り、よりそう愛情が欠かせません。厳罰主義は、子どもの鬱屈(うっくつ)した心をさらにゆがめ、いじめを陰湿化させます。

     第五は、被害者や遺族の方の真相を知る権利の尊重です。遺族の方はなぜわが子が死ななければならなかったのか知りたいと切実に思います。ところが多くの場合、調査は不十分で、納得できません。しっかりした調査は、再発防止のためにも不可欠です。遺族が真相の解明に参加できるようにすべきです。

     以上の基本方向は、子どもの命を守るという一点で、多くの人が一致できるものにするよう心がけました。また、基本方向は完成されたものではなく「試案」と位置づけました。多くの方のご意見を伺い、よりよいものにしたいと思っています。

    教育・社会の改革と重ね

     ――「いじめ」解決を支える条件整備にもふれていますね。

     「提案」では、教員の「多忙化」解消などの条件整備、深刻なケースに対応する「いじめ防止センター」の設立、「いじめ」防止に関する法制化、教育行政の数値目標化を止めるなどの施策の改善をあげています。

     法制化は、学校などで安全に生きることを子どもの権利として重視し、それを保障するための学校の安全義務、行政の義務を定めるものです。同時に、子どもへの厳罰化など間違った方向の法制化を批判しています。 

     ――根本的な対策として、教育や社会の改革も呼びかけていますね。

     はい。それが大きな二つ目の柱です。

     「いじめ」が深刻化し、日常化しているのは、子どもたちが強いストレスの下におかれ、過去とは比べられないような、いら立ちを抱えているからではないか、と考えました。

     その一つが教育のあり方です。受験競争が低年齢化し、お稽古ごとも増え、「時間的ゆとりがない」という子どもが4割います。国際的な調査では、「孤独を感じる」という子どもの割合が日本はダントツに高く、「ありのままの自分でいい」という自己肯定感情も低いです。また勉強が分からない、つまらないということも大きなストレスの原因になっています。

     社会に目をむければ、国民の中に「貧困と格差」が急速にひろがっています。競争万能の考え方が社会に浸透し、人間的な連帯が弱まり、弱い立場の人々を攻撃するような風潮も強まりました。それを正当化するため、競争に負ける方が悪いという「自己責任論」の考え方も広がっています。

     こうしてみると、社会自体が「いじめ社会」とも言うべき傾向を強めていると言えます。親たちのゆとりも奪われ、子育てへの不安も強まっています。

     このように社会全体がギスギスしていることは、子どもにいい影響を与えるはずがありません。

     のびのび育つべき多くの子どもたちが、いら立ちをためこんで、孤独感につつまれている。これは、競争的な教育制度や社会のあり方が、子どもの成長といよいよ相いれなくなっていることを示していると思います。

     ――社会や教育の改革とともに、子どもの参加を強調していますね。

     子どものいら立ちや孤独感の裏には、「自分らしく生きたい」「本音で語り合える友だちがほしい」などの前向きな願いや鋭い正義感があると思うんですね。その力が発揮されることを信頼しよう、と。

     そのためには、子どもの声に耳をかたむけ、子どものさまざまな社会参加を保障することが大切です。これは子どもの権利条約の精神とも合致するものです。

    体罰は許されない

     ――暴力・体罰の問題も深刻です。

     大阪の高校部活で教員の暴力により生徒が自殺するという痛ましい事件が起こりました。この事件は氷山の一角で、いまだに教育の場で暴力・体罰が少なからずあることを示しています。

     肉体的な苦痛や恐怖で子どもに言うことをきかせることは、成長途上の子どもの体だけでなく、心に複雑で深い傷を残します。体罰や暴力を教育の場でおこなうことは絶対に許されません。しかし、政界の一部には体罰を肯定する風潮があり、克服される必要があります。なぜ体罰がいけないのか、多くの方々と根本から考えあい、なくしていきたいと思います。

     スポーツ界での暴力も重大な問題です。人間的な営みであるスポーツと人間性に反する暴力とは相いれません。多くの一流選手が、暴力は競技力向上にも有害だと告発していますが、とても共感できます。

     ――今後のとりくみについてお願いします。

     「いじめ提言」は、いじめ被害団体、研究者、保護者、教職員、教育行政、識者など多くの方々から歓迎されています。

     提言を読んで話し合ったり、すべての校長先生や教職員に郵送したり、教育委員会の方と懇談するなどのとりくみが始まっています。こうしたとりくみをさらに発展させたいと思います。

     3月16日に予定されている中央委員会主催の「いじめ問題シンポジウム」は幸い、多彩な方をパネリストとしてお招きすることができました。実り多い集いとして成功させたいと思います。

    来月16日にいじめ問題シンポ

     日本共産党中央委員会主催の「いじめ問題シンポジウム」が3月16日(土)午後1時30分から、平和と労働センター・全労連会館2階大ホール(東京都文京区湯島2の4の4)で開かれます。みなさまのご来場をお待ちしています。

    パネリスト

     小森美登里さん NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事

     1998年、高校入学間もない一人娘の香澄さんをいじめによる自死で失う。いじめのない社会をめざし、2002年、同プロジェクトを立ち上げる。

     福井 雅英さん 北海道教育大学教職大学院教授

     中学校教諭を経て現職。「子どもカンファレンス」を提唱。札幌市生徒の自殺に関する調査検討委員会委員長。

     山下 芳生さん 日本共産党書記局長代行・参院議員

     党いじめ問題対策チーム責任者として、提案「『いじめ』のない学校と社会を」を取りまとめる。

     ほかに教員、青年のパネリストを予定しています。

    申し込み方法

     参加希望の方は、メールあるいはファクスで、下記の項目を書いて、お申し込みください。応募は3月8日(金)正午をもって締め切りとし、応募数が多い場合は抽選とします。抽選結果は、3月11日(月)をめどにメールあるいはファクスで連絡します。

    宛先

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