主張
公務員の「身上調査」
憲法違反の思想調査やめよ
国の重要な情報の外部流出を防ぐという口実で、国家公務員に特定の秘密を扱う適格性があるかを調べる「身上調査」を政府が進めていることが、国会でも大問題になっています。
秘密にされる情報は防衛省や外務省など23府省庁で41万件を超えます(日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への政府答弁書)。身上調査は外国の諜(ちょう)報(ほう)活動から秘密を守るためといいますが、本当の狙いは国民やメディアの目をふさぐことにあります。そのために対象者の思想・信条などを調べ上げるなど言語道断です。憲法違反の思想調査はただちにやめるべきです。
アメリカの軍事要求
特定の秘密を“適格者”だけに取り扱わせるというのは、2007年、第1次安倍晋三政権が決定した「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」にもとづくものです。しかし「国の重要な情報」を保護するというだけで、どの分野のどの情報が「特別に秘匿すべき情報」(特別管理秘密)なのかや、「適格性確認」のための基準も手順も公開していません。国民はもちろん国会にも判断材料さえ与えないのは、民主主義をふみにじる言語道断の態度です。
身上調査は憲法違反につながる重大なものです。本紙が入手した防衛省の内部資料(15日付既報)がその危険性をうきぼりにしています。「身上明細書」と、その記入の仕方をこと細かく記したマニュアルで、19項目あります。個人に関するものだけでなく、交友関係の記入も求めています。
とりわけ見過ごせないのが「所属団体」の項目です。「宗教団体」や「政治団体」の記入を指示しています。憲法が国民に保障している思想・信条の自由をないがしろにするもので、まさに思想調査というほかありません。こんな憲法違反につながる身上調査は即刻やめるべきです。
政府は秘匿情報を明らかにしませんが、41万件を超える「特別管理秘密」のうち防衛省が約4万5千件、外務省が約1万8千件、軍事偵察衛星の情報収集衛星を運用する内閣官房が約31万8千件という数字をみれば、中心が軍事・安保関係の情報であるのは明白です。
安倍政権が憲法違反の身上調査まで強行して「特別管理秘密」の保全に固執するのは、アメリカ政府との約束が背景にあります。07年の「日米秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)は、「政府職員」に「秘密軍事情報取扱資格の付与」とそのため職員が「信頼し得るか」の詳細な調査を求めています。狙いはアメリカが日本に提供している秘密情報の保全を徹底させることです。安倍政権が23府省庁に秘密保全の責任をもたせているのは、こうした要求に応えるためです。
「知る権利」行使して
政府が進めている秘密保全の徹底化は公務員の思想・信条の自由をおかすだけでなく、国民やメディアが政治の実態を知ることもできない状況にすることを意味します。憲法が保障する国民の知る権利の侵害そのものであり、許すわけにはいきません。
安倍政権が日米軍事同盟絶対の危険な政治を強行し、日本の平和と安全を脅かしているとき、「知る権利」を積極的に行使し、国民が国政の重要な情報を知ることができるようにすることこそ重要です。