ネット党首討論 志位委員長の発言
インターネットを通じた初の党首討論となった11月29日の「ネット党首討論会」(ニコニコ動画)。日本共産党の志位和夫委員長の発言で、TPP(環太平洋連携協定)、消費税増税、原発問題という重要争点で、「自民党型政治」と日本共産党との対決点が鮮明になりました。
(写真)「ネット党首討論会」で発言する志位和夫委員長(右)=11月29日、東京・六本木
わが党が伝えたいこと
いよいよ古い自民党型政治のゆがみを断ち切る改革のときがやってきた
冒頭、「わが党が伝えたいこと」をテーマに各党党首が発言しました。
志位 “民主党にはだまされた。かといって自民党には戻るわけにはいかない。日本の政治をどうしたらいいのか”。多くの国民のみなさんが感じておられるのではないでしょうか。
民主党政権は、「政治を変えてほしい」という国民のみなさんの「政権交代」に託した願いをことごとく裏切って、いまでは自民党とうり二つの政党になってしまっていると思います。なぜこうなったのか。
多くの国民がやめてくれといった、消費税増税、原発再稼働を強行した。その根っこには国民そっちのけ、「財界が中心」の政治のゆがみがあります。
沖縄が島ぐるみで反対しているオスプレイの配備を強行し、TPP(環太平洋連携協定)に暴走している根っこには「アメリカいいなり」のゆがみがあります。
政権は代わったけれども、「アメリカいいなり」と「財界中心」という古い自民党型政治から抜け出すことができなかった。ここに失敗の原因があると思います。
日本の政治を大きくみますと、この自民党型の政治がいよいよ行き詰まって、外交でも内政でも、日本の直面する問題に答えを出せなくなった。打開策を示すことができなくなった。耐用年数が尽きてしまったというのが現状だと思います。
いよいよこの古い自民党型政治のゆがみを断ち切る改革に踏み出して、「国民が主人公」といえる新しい日本への改革に取り組んでいくときがやってきた。それを担う政党は日本共産党だと考えています。
私たちはこの間、「経済提言」、「即時原発ゼロ提言」、「外交ビジョン」、「尖閣提言」、「震災復興提言」、さまざまな分野で改革のビジョンを示し、その実行のために行動してまいりました。
「提案し、行動する。」日本共産党を大きく伸ばしていただいて、明るい未来がみえてくる総選挙にしていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
TPP
「守るべきものは守る」はありえない――絶対に許してはならない、食料主権・経済主権を守れ
TPPについては、野田佳彦首相が「守るべきものは守る」としつつ、オバマ米大統領との間で「交渉参加に向けて協議を加速することで合意した」と交渉参加を示唆。これに対し、志位氏は次のように指摘しました。
志位 総理が「守るべきものは守る」といいました。しかしTPPは、2国間のFTA(自由貿易協定)と違い、「守るべきものを守れない」という仕組みになっています。
これは「例外なき関税ゼロ」というのが大原則です。(そのことは)昨年11月の参加9カ国の会議で確認されています。最近、メキシコやカナダが参加していますが、この原則を丸のみすることが条件になっています。
ですから、TPPに参加したら「例外なき関税撤廃」となり、農業は壊滅します。「非関税障壁」も撤廃され、医療、雇用、食の安全も危険にさらされます。
「守るべきものは守る」ということはTPPではありえない。私たちは絶対にこれは許してはならない、絶対反対です。食料主権、経済主権を守ることが大切だと考えております。
自民党の安倍晋三総裁は「反対」としながらも「聖域なき関税撤廃を前提条件とする限り」と表明。日本未来の党の嘉田由紀子代表は「現状におけるTPP参加は反対」、公明党の山口那津男代表も「いま参加を決定するのは拙速」と述べるにとどまりました。
一方、みんなの党の渡辺喜美代表は「賛成」を強調。民自両党を「腰の引けたような言い方」だとけしかけました。
消費税増税
暮らしも経済も財政も壊す――「消費税に頼らない別の道」を探求すべきだ
なぜ不公平税制をたださないのか――まず大企業と富裕層に応分の負担を求めよ
話題は消費税増税に移り、志位氏が討論の口火を切りました。
志位 今のデフレ不況は、国民の所得が減り、消費が冷え込み、内需が落ち込む、そしてまた所得が減るという悪循環に陥っています。こんな大不況のときに、大増税をかぶせたらどうなるか。国民に13・5兆円もの負担増を強いる。結局、所得をそれだけ奪うということですから、日本経済の底がどーんと抜けてしまいます。
そして経済が悪くなったら、税収も入ってこなくなります。1997年に消費税を5%に引き上げたときに、当時若干上向きだった景気が一気に不景気になった。国と地方の税収は結局、90兆円から76兆円にどーんと減ってしまいました。
ですから、増税は、暮らしも、経済も、財政も壊すもので、これは中止すべきです。
私たちは「消費税に頼らない別の道がある」ということを具体的に提案していますが、そういう方向を本当に探求すべきだと思います。
この指摘に対し、自民党の安倍総裁は、「志位さんが言った97年の事例は参考にしている。経済が悪い状況、デフレが進行する中においては、消費税はあげない」と釈明しましたが、「(社会保障)給付が増え、それに対応していく責任感を持たないといけない」と述べ、あくまで大増税を強行する考えを示しました。
野田首相は増税と一体で社会保障を切り捨てながら、「どなたも、どこかで、社会保障の出番を待つならば、みんなで等しく分かちあおうというのが消費税だ」と強弁。公明党の山口代表も民自公で消費税大増税を強行しておきながら、特定品目だけ税率を見直す「軽減税率」の導入をいい立てる逆立ちぶりでした。一方、未来・嘉田氏は「凍結」と述べ、「今やるべきはムダをなくすことです」と述べました。
これに対し、志位氏は次のように述べました。
志位 総理の発言を聞いて、“社会保障の財源だからしかたがない”という話がありましたが、なぜ「不公平税制」をただそうとされないのでしょうか。
いま所得税は所得1億円を超えると、逆に税の負担率が下がる。富裕層に対する減税のバラマキをやってきた結果です。
法人税の実質負担率(国税分)は、中小企業が26%に対して大企業は19%ですよ。これは大企業優遇税制をずっと続けてきた結果です。
まず不公平税制をただして大企業・富裕層に応分の負担を求めることが先じゃないでしょうか。
その上で、社会保障を抜本的によくしていくためには、所得税の累進を強化する―累進課税の強化によって新たな財源をつくればいい。なぜ消費税でなければいけないのか。なぜ弱いものいじめの税金に固執するのでしょうか。
この指摘に野田首相は所得税や資産課税などについて「格差是正の観点からの見直しは必要だ。いつも共産党からご指摘いただく証券優遇税制についても廃止する」と述べざるをえませんでした。
原発政策
「即時ゼロ」を実現しながら、緊急措置として火力でつなぎ、再生可能エネの爆発的普及を
原発政策で、野田首相は「2030年代原発稼働ゼロを目指す」としながら、「安全が認められたものは再稼働を行う。重要電源として位置付ける」と述べ固執する姿勢を示しました。
安倍氏は、「原子力政策を推進してきた結果、低価で安定的な電力を得て高度経済成長を勝ち得てきた」と無反省ぶりを露呈。「3年以内に動かすかどうか決めていく。10年間でエネルギーのベストミックスを考え確定していきたい」として固執する姿勢を表明しました。山口氏は「国民の理解を得て再稼働の是非を判断していく」としました。嘉田氏は「10年後を目指して卒業していく」と語りました。志位氏は、次のように主張しました。
志位 日本共産党は「即時原発ゼロ」を実現しながら、緊急の措置として火力でつなぎ、再生可能エネルギーの爆発的な普及に取り組みたいと考えています。
この間、原子力委員会がきわめて衝撃的な試算を発表しています。“このまま再稼働を進めたら、10年以内に福島の原発事故と同じような大量の放射性物質を放出する大事故が起きる”という試算です。こういう大事故が起こったら、いったい誰が責任を取るのか。
それから、大飯原発の直下にも活断層が否定できないことは原子力規制委員会も明らかにしました。
原発はただちになくすという政治決断をやってこそ、再生可能エネルギーへの本腰を入れた普及もすすむと考えます。
憲法問題
集団的自衛権とは、日米が一緒に戦争ができる国づくりが狙い――世界に誇る9条を宝として守る
最後に、各党が主張を述べ、志位氏は次のように述べました。
志位 きょう議論されなかった大きな問題があります。それは憲法の問題です。
いま「集団的自衛権を行使できるようにせよ」という声がずいぶんあちこちで起こっていますが、私はたいへん危険だと思っております。
集団的自衛権というのは、日本がどの国からも攻撃されていないのに、アメリカが海外で戦争を始めたら、一緒になって戦争ができるような国にしよう、海外で戦争ができる国づくりをしようというのがその狙いです。
憲法9条そのものを変えて「国防軍」、「自衛権」、「自衛隊」を書き込む、こういう議論もあります。憲法9条があったおかげで、戦後日本の自衛隊は、ただの一人も外国人を殺していません。一人の戦死者も出していません。私は、9条は世界に誇る宝としてぜひ守り抜いていきたいと思います。
嘉田氏は「政治家としての小沢さんを尊敬している。小沢さんの力を日本の政策実現、未来のために使わせていただく」と述べました。