主張

東電福島原発事故

収束宣言の撤回こそ大前提だ

 使用済み核燃料冷却プールなどでの停電事故や放射性物質を含む汚染水の地下貯水槽からの水漏れなど、東日本大震災で重大事故を起こした東京電力福島第1原発で、事故やトラブルがあとを絶ちません。事故は発生から2年以上たっても真っただなかです。にもかかわらず安倍晋三首相が、事故の「収束」を宣言した前政権の宣言を、「安倍政権では『収束』ということばを使わない」というだけで撤回しようとしていないのは重大です。事故の収束と対策にあらゆる力を結集するうえでも、「収束」宣言の撤回は大前提です。

被災者苦しめ東電は増長

 野田佳彦前政権が「収束」を宣言したのは、大震災から半年余しかたたない一昨年12月でした。あまりに早すぎる「収束」宣言は、避難生活を続ける多くの被災者からも、原発事故に心を痛める内外の関係者からもきびしい批判をあびました。日本共産党は昨年9月発表した「『即時原発ゼロ』の実現を」の提言のなかで、「『収束宣言』が被災者・被害者を苦しめています」「東京電力の不遜で傲慢(ごうまん)な態度を増長させ、賠償切り捨ての助け舟にもなっています」―と指摘しました。相次ぐ事故やトラブルは、その指摘の正しさを証明しています。

 事故から2年以上にわたって仮設の配電盤や変圧器を使い続け、電気設備なら当たり前のネズミなどの侵入による感電事故を防ぐ対策さえとらなかったため、立て続けに停電事故を引き起こしたのはその最たるものです。3月にネズミが仮設の配電盤に侵入し長時間にわたって停電事故を起こしたあと、東電は総点検し対策をとるといってきました。ところが先日には再び変圧器で感電したネズミが見つかり、冷却システムをとめなければならなかったのです。事故に対する東電の緊張感のなさとその場しのぎの対応は明らかです。

 事故で破壊された原子炉から漏れ出る放射性物質で汚染された水を地下貯水槽に保管し、汚染水漏れ事故を起こしたのも同じです。日本共産党の井上哲士議員が参院予算委員会(23日)でも追及したように、地下貯水槽の構造はもともと大量の水をためるためのものでありませんでした。地上のタンクが足りないことを理由に地下貯水槽を使い続け汚染水漏れ事故を起こした東電の責任は重大です。

 「収束」宣言を撤回せず、東電まかせを続けた政府や原子力規制委の責任こそ問われます。井上議員に「収束」宣言の撤回を迫られた茂木敏充経産相は「炉は安定しているが、全体的には不安定」などと弁解しました。核燃料がメルトダウン(溶融)し、炉のどこでどんな状態にたまっているのかもわからないで、どうして「安定」といえるのか。政府がこうした態度を改めない限り、東電をきびしく指導できないのは明らかです。

被災者支援や賠償にも害

 政府が「収束」宣言を出したため、公的な支援や東電による賠償が打ち切られたり、避難や除染のための「線引き」が強行されたりするなど、被災者が苦しめられているのは重大です。しかも政府は原発事故の原因も明らかになっていないのに、全国の原発の再稼働まで策しています。「収束」宣言の撤回は、事故の収束と被災者支援にとっても、「即時原発ゼロ」の実現にとってもいよいよ重要です。