主張

安倍政権復活

国民の意思踏みにじるなら

 自民・公明連立の、安倍晋三政権が復活しました。政権交代などでいったん首相をやめた政治家が再び政権を担当するのは、吉田茂元首相いらいです。

 安倍氏は総選挙中から、野党を体験し「自民党は変わった」と主張してきました。しかし、総選挙政策でも、公明党との連立政権合意でも、党・内閣の布陣でも、多少目先を変えただけで、中身は異常な大企業本位の経済政策と超タカ派ぶりの突出というのでは、国民との矛盾は避けられません。

政権投げ出した1度目

 安倍氏が2006年9月に最初に政権を担当したときも、その前年に小泉純一郎首相が仕掛けた「郵政選挙」で自民・公明は衆院で3分の2を超す議席を確保していました。しかし、小泉「構造改革」による国民生活の破壊に加え、安倍首相が打ち出した「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げた教育基本法の改悪や改憲策動でまたたく間に支持率が低下、いっせい地方選や参院選挙にも敗北して、わずか1年で政権投げ出しに追い詰められることになりました。自民党政権自体、その後の福田康夫、麻生太郎の2代の首相の短い政権を経て、政権交代しなければならなくなりました。

 2度目の政権を発足させた今回も、自公は先の総選挙で衆院の3分の2を超す議席を確保しましたが、国民世論との乖離(かいり)はますます深刻です。3分の2を超す議席自体、民主党の“敵失”と選挙制度のゆがみに助けられたもので、得票率で見ればわずか4割そこそこ、有権者比では小選挙区で24%、比例代表ではわずか15%の支持しかありません。国民の意思を踏みにじれば「虚構の多数」が追い詰められるのは必至です。

 しかも野党に転落していた3年余り、自民党は民主党をたきつけて消費税増税などを強行するとともに、自らは綱領を改定し、集団的自衛権の無制限の行使や自衛隊を「国防軍」にする改憲案を発表するなど、タカ派路線を鮮明にしてきました。今回の公明党との連立政権合意にも、改憲論議の加速を盛り込んでいます。党三役や閣僚への女性起用など、多少目玉を作ったぐらいでは、国民との矛盾激化を免れることはできません。

 新政権の顔ぶれも、安倍氏の2代あとの首相で“盟友”といわれる麻生太郎元首相の副総理と財務・金融担当相への起用、「原発派」で知られる甘利明氏の経済再生担当相への起用に加え、安倍氏に近いタカ派の下村博文氏の文部科学相、党内でも「靖国」派で知られる古屋圭司氏や稲田朋美氏の入閣、沖縄での米軍新基地の建設をにらんだ岸田文雄氏の外相と小野寺五典氏の防衛相就任など、異常な経済政策の推進でも改憲などタカ派路線の準備でもあからさまな布陣です。国民との矛盾の拡大は避けられません。

政治のゆがみ正さぬ限り

 安倍氏は政権発足前からオバマ米大統領や財界団体の経団連首脳などとの会合を重ね、「アメリカいいなり」「財界中心」の政治のゆがみを正すそぶりさえ見せません。これでどうして「自民党は変わった」などといえるのか。

 安倍政権が国民の意思を踏みにじり続ける限り、第1次政権と同じく国民との矛盾を深め、やがて立ち往生することになるのは、避けられそうにない現実です。