「慰安婦」強制連行示す文書
安倍内閣 存在認める
否定派の論拠総崩れ
赤嶺議員への答弁書
河野洋平官房長官談話(1993年)の発表にあたって政府が収集した資料の中に、日本軍による「慰安婦」の強制連行を示す記録があったことが日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への答弁書(18日)で明らかになりました。安倍晋三首相は「強制連行を示す証拠はなかった」などとして、河野談話の見直しを主張していますが、もはや成り立ちません。
道理のなさ
安倍内閣は2007年、民主党の辻元清美氏(当時、社民党)への答弁書で、軍の関与と強制性を認めた河野談話を継承するとしながら、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と書き込みました。07年の答弁書の狙いが、河野談話が認めた軍の関与と強制性を否定することにあったことは明らかです。
安倍首相をはじめ日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)ら慰安婦「強制」否定派は、この答弁書を利用して河野談話を攻撃。強制性の範囲を、募集の過程で軍が直接に強制連行していたかどうかに矮小(わいしょう)化して、「証拠はなかった」と問題をねじまげてきました。
しかし、「慰安婦」問題の本質は、本人の意思に反して、慰安所に拘束され無理やり働かされたことにあります。いくら軍が直接に強制連行していないと強弁したところで、騙(だま)されたり、脅されたり、人身売買されていれば、とても正当化できるものではありません。
そして、苦しみの大本となった慰安所は軍によって設置され、慰安所と「慰安婦」は軍により管理されていたのです。軍による強制連行の有無だけで、軍の関与と強制性を認定した河野談話を否定できるものではありません。
そのうえ、赤嶺議員への答弁書では、これまで安倍首相ら慰安婦「強制」否定派が問題を矮小化したうえで「ない」と主張してきた文書ですら、「あった」ことが明らかになったのです。もはや慰安婦「強制」否定派の根拠は総崩れです。
虚偽性明らか
政府は河野談話にあたって1991年12月から93年8月まで関係資料を調査し、関係者からの聞き取りを行い、関係資料は内閣官房外政審議室が文書にまとめています。
赤嶺氏は、その中に「バタビア臨時軍法会議の記録」が収録されていることを指摘。安倍内閣の答弁書は資料の出典を認め、「ご指摘のような記述がされている」と答えました。
バタビア臨時軍法会議(スマラン事件)は、日本軍がジャワ島スマランなどでオランダ人女性らを慰安婦として使う計画を立て、その実現に直接・間接に関与したことを明らかにしたものです。「慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」などと記されています。
この事件は、歴史研究者や市民団体など関係者が広く指摘していたもので、自民党有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の提言(07年)でさえ、「(軍や政府による強制連行は)ジャワ島における『スマラン事件』があった」と認めているものです。
政府は、赤嶺議員の答弁書で初めて、この事実を公式に認めましたが、強制を示す文書を保有していたことを認めた以上、07年の答弁書の虚偽性は明らかです。安倍内閣はただちに07年答弁書の誤りを認め、撤回し、戦争犯罪を反省するべきです。(佐藤高志)