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際立つ「自共対決」 ネット党首討論―志位委員長の発言
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際立つ「自共対決」 ネット党首討論―志位委員長の発言

2013-06-30 18:11

    際立つ「自共対決」 ネット党首討論

    志位委員長の発言

     日本共産党の志位和夫委員長が28日に出演したニコニコ動画の「ネット党首討論」は視聴者の疑問・質問に答える形式で進められ、経済・外交政策をめぐる「自共対決」の様相がくっきり浮かび上がりました。司会は、ジャーナリストの角谷浩一氏でした

    国民へのメッセージ

    景気・原発・憲法――どんな問題でも自民党と対決し、抜本的対案を示す

      冒頭、各党党首が1分間ずつ視聴者に訴えました。安倍晋三首相は「次元の異なる3本の矢の政策で日本を覆っていた空気は大きく変わった」と発言。公明党の山口那津男代表は「連立政権の経済対策は確実に実績を生みつつある」、みんなの党の渡辺喜美代表は「アベノミクスが大胆な金融緩和をおとりになったのは大変結構だった」と追随しました。

     民主党の海江田万里代表は「中間層を厚く、そして豊かにする」というだけでその方法を語りませんでした。欠席した日本維新の会の橋下徹共同代表はメッセージを寄せ、日本軍「慰安婦」発言への国内外の批判に対し「批判を恐れず突き進む政党」などと開き直りました。志位氏は次のように訴えました。

     志位 私たちはとくに三つの点を訴えたいと思います。

     第1は、国民の所得を増やして景気回復をはかるということです。そのために、大企業が抱えている260兆円の内部留保の一部を活用して、賃上げと非正規社員の正社員化をはかり、景気回復の突破口を開きたい。消費税増税には断固反対です。

     第2は、原発ゼロの日本をつくりたい。(福島原発事故の)原因の究明もされていない、事故の収束もされていない、15万人が避難されているもとでの再稼働や原発の輸出は論外です。再生可能エネルギーへの抜本的な転換が必要です。

     第3は、日本国憲法を守り、生かしたい。9条を変えて「戦争する国」につくり変えることには断固反対です。96条を変えて改憲のハードルを下げることにも私たちは反対です。9条を生かした平和日本をつくりたい。

     どんな問題でも自民党と対決し、抜本的対案を掲げて頑張りたいと思います。

    経済政策(1) TPPで雇用はどうなる?

    首相「TPPで雇用は影響を受けない」

    志位「TPP、『成長戦略』で雇用のルール破壊がすすむ」

     続いて司会の角谷氏が「景気回復は国民誰もが望んでいる」と提起し、経済政策をめぐる討論が始まりました。「ある企業では世界同一賃金の話が話題になったが、TPP(環太平洋連携協定)で雇用も自由化されると日本人の仕事がなくなり、給料が安くなるのではないか。アベノミクスの成果を相殺してしまう気がする」(兵庫県の20代男性)との視聴者の質問を受け、安倍首相は「TPPにおいて日本の雇用制度が影響を受けることはない」と弁明。渡辺氏は「TPPで雇用制度が破壊されるとか国民皆保険がなくなるとかいうのはまったく荒唐無(む)稽(けい)な議論」と述べ、自民党政治に加勢する立場を示しました。海江田氏も「交渉の過程の中でお話をしていただきたい」とTPP交渉参加を後押ししました。

     志位 TPPというのは、人・モノ・金(の移動)を国境なく自由にしていく、そしてアメリカ型のルールを日本に押し付けるという枠組みですから、当然、雇用のルールの破壊は強く危惧されます。ですから私たちは絶対に反対です。

     アメリカとの関係でいいますと、雇用の問題では90年代から、たとえば派遣労働の自由化がアメリカから外圧としてかけられて、そして99年に派遣労働が原則自由化される。2004年には製造業にまで拡大される。こういうやり方が「使い捨て労働」のまん延を招いてきた。こういう問題があります。

     さらに、いま安倍内閣の下で進められている「成長戦略」には、解雇を自由にする「限定正社員」、あるいは裁量労働制を拡大して残業代ゼロを拡大していく、さらに派遣労働をまったく野放図に自由化する、そういう内容が盛り込まれております。まったく雇用のルールを壊すことになる。反対です。

    経済政策(2) 賃金低下の原因は? どう転換?

    首相「デフレだから賃金が下がる」

    志位「賃下げこそデフレの原因、労働のルールをつくり働く人の所得を増やす」

     賃金が低下し続けている問題について、安倍首相は原因をデフレに求め、「デフレのなかで賃金を上げようと思ったって上がりませんから、まずはデフレから脱却して、しっかりと企業が収益を上げていく」と述べました。渡辺氏も「デフレだから賃金が下がる」と述べ、安倍首相と同様の認識を示しました。志位氏は次のように発言しました。

     志位 安倍さんの発言は、デフレと賃金の関係が逆転していると思うんです。デフレがあるから賃金が下がったのではない。長期にわたって国民の賃金が下がり続けている。1997年をピークにしてずっと下がっている。だからこそ、ものが売れなくて内需が冷え込んでデフレが起こっているわけです。

     なぜ下がっていったかというと、労働市場の規制緩和ですよ。そしてその象徴が派遣労働の拡大ですよ。そして(政府は)その道をもっとやろう、派遣の拡大をもっとやろう(としている)。正社員についても今度は「限定正社員」をつくって職種や地域限定の正社員とし、工場をたたんだらそっくりクビにできる、そういう首切り自由の正社員をつくっていく(といっている)。

     こういう方向にいったら、もっと賃金が下がっていきます。デフレをもっとひどくする。それが、いま政府が進めている道だと思うんです。

     ここを転換して、働く人の所得を増やす。そのためには労働のルールをしっかりつくり直す。派遣法も抜本的に改定する。均等待遇のルールをつくる。これが必要です。

     志位氏の指摘に、安倍首相は「今年の夏、大手65社でボーナスが増えます」と弁明するのが精いっぱい。労働分野の規制緩和には口をつぐみました。

    外交政策(1) 米国いいなりから対等な関係をどう築く?

    首相「安保改定で日米は対等になった」

    志位「世界でも異常な基地の実態、安保条約を廃棄して対等・平等の友好条約を」

     外交政策にテーマが移り、視聴者から「日本とアメリカはどのような関係にあるのがベストか。いまのバランスだとあまりに日本がアメリカのいいなりのように感じる。対等な関係性を築くためにはなにが必要か」(青森の30代の男性)との質問を受けて、討論に入りました。

     安倍首相は1960年の安保条約改定でアメリカに日本の防衛義務を負わせ「だいたい対等になった」と主張。各党も「日本の全体的な国力といった関係でアメリカの力を借りることが前提」(山口氏)、「日米関係は外交・安全保障の一番の主軸」(海江田氏)、「(日本の平和と安全は)アメリカと同盟関係を結んで守っていく」(渡辺氏)と述べ、自民党政治を追認する姿勢を際立たせました。

     生活の党の小沢一郎代表は「本当の信頼と同盟を築くためには日本も自己主張する」と日米軍事同盟を前提にし、社民党の福島瑞穂党首は「政府が少しずつでもいうべきことをきちんと言うべきだ」と述べたものの日米安保条約には触れませんでした。志位氏は次のように語りました。

     志位 日本ほど、世界のなかでもアメリカいいなりの異常が際立った国はないと思います。

     米軍基地一つとっても、沖縄のような狭い地域にあれだけの外国軍の基地が置かれているところは、世界広しといえどもあそこにしかありません。沖縄が島ぐるみで反対している普天間基地の辺野古「移設」、あるいはオスプレイの配備を頭越しに強行する。こういう情けない姿勢をとっている国もありません。

     横田、厚木、横須賀と、首都圏に三つもの巨大な米軍基地をもっている国もありません。

     空母と海兵隊という海外への「殴りこみ」専門の部隊に本拠地を提供している国もありません。

     日米安保条約というものを見直す時期にきているのではないか、安保を廃棄してアメリカとは対等・平等の友好条約に切り替える時期がきているというふうに考えております。

    外交政策(2)  アジアのなかで日本の安全をどう守る?

    首相「アジアの安保環境は厳しい、米国の報復力が必要」

    志位「アジアの23カ国で軍事同盟国は2カ国だけ。ASEAN方式を北東アジアに」 

    安倍首相が「アジアの安全保障環境は厳しい」「もし日本が攻撃をされたときに、報復をするのはまさに米国」「その報復力によって抑止力が保たれている」と弁明したのに対し、志位氏は次のように発言しました。

     志位 安倍さんは「アジアの安全保障環境が厳しいので日米安保が必要だ」ということをおっしゃったと思いますが、アジアの23の国のなかで軍事同盟に入っているのは日本と韓国だけなんです。

     東南アジアには、かつてSEATO(東南アジア条約機構)という軍事同盟がありましたけれども、いまはそれは解体されて、軍事同盟はなくなっております。軍事同盟の代わりにASEAN(東南アジア諸国連合)という、いわば平和の地域共同体がつくられて、紛争問題があっても平和的な話し合い、外交交渉によって解決する。これがASEANの当たり前の流れになっている。

     この「ASEANウェイ(方式)」といいますか、これを北東アジアに広げるという発想が必要ではないでしょうか。

     北東アジアにも6カ国協議という枠組みがあります。そういう枠組みを使って、紛争があっても外交交渉、対話によって解決する。そのことが今一番大事であって、そのための一番の財産は憲法9条だと思います。9条を生かした平和外交によってアジアの平和に貢献する日本になるべきだと思います。

    外交政策(3) 歴史問題にどう向き合うか?

    首相「就任後、多くの国々を訪問した」

    志位「侵略戦争と植民地支配への反省がなければ、アジアでも世界でも通用しない」

     安倍首相は就任後に訪問した国々の名前をあげ、「アメリカとの同盟関係の存在はアジアの安定にきわめてプラスになっている」と弁明しました。志位氏は次のように発言しました。

     志位 たくさんの国の名前が挙がりましたが、韓国と中国がないんですね。これは一つの大きな問題だと思います。その理由は何か。

     私は歴史問題に対する態度があると思うんです。「村山談話」の見直しということを総理は言われておられます。「侵略の定義は定かでない」とも言われております。一体どこを見直すのか。

     「村山談話」の一番の核心の部分は、過去、「国策を誤り、植民地支配と侵略を行った」ことへのおわびです。この核心部分を引き継ぐのかと何度総理にただしても、引き継ぐといわない。ここが一番の問題だと思います。

     こういう態度がある限り、アジアの国々との心を開いた交流ができない。

     第2次世界大戦後の世界は「日独伊が行った戦争は侵略戦争」という前提の上にできているわけですから、国際政治で通用しなくなると思います。

    視聴者からの質問(1) アメリカとの関係を断ち切るのか?

    対等・平等の日米友好条約を結ぶ。紛争問題は外交交渉による解決に徹する

     視聴者からの質問に各党党首が答えるコーナーに移り、志位氏に対しては「共産党は改革提言のなかで、アメリカの言いなりをやめ、基地も安保もない日本を目指すと掲げている。気持ちはわかるが、韓国、中国、北朝鮮との関係が思わしくないなかで、アメリカとの関係を断ち切るのは得策ではないのではないか」(大分の30代男性)との質問が寄せられました。志位氏は次のように答えました。

     志位 私たちは異常なアメリカいいなりを正そうといっています。日米安保条約はその根源ですから、これは国民の合意で廃棄していこうということをいっていますが、アメリカとの関係を断つというのは私たちの方針ではありません。

     それに代えて、本当に対等・平等の関係での日米友好条約を日米間で結んでいこう、本当の友人になろうというのが私たちの大きなビジョンです。

     さきほど東南アジアの国々の話をいたしましたが、東南アジアの国々はアメリカとの軍事同盟を解消した後、「反米」になっているわけではありません。それぞれ友好の関係を築いているわけで、そういう関係を日本も築いていくことは可能だと思っています。

     たしかに中国との関係で紛争問題があります。尖閣の問題などでは、私たちは日本の領有の正当性は国際法上も歴史上も明らかだということをはっきりいっています。こういう問題はいろいろありますけれども、そういうことも含めて、外交交渉による冷静な解決が必要だと思います。

     東南アジアでも同じような領土問題が中国との関係でありますけれども、「南シナ海行動宣言」というのを結んで、問題をエスカレートさせずに、交渉によって、対話によって解決する枠組みをつくっています。そういう枠組みをつくりながら、日本の平和と安定も守っていくことは十分に可能だと考えています。アメリカと縁を切るわけではありません。

    視聴者からの質問(2) 児童ポルノ禁止法案をどうみるか?

    現行法で取り締まることができる。単純保持の禁止などは人権侵害につながる

     国会で継続審議となった児童ポルノ禁止法改定案について、視聴者の質問を受け、各党代表が態度表明しました。山口氏は「改正は必要だ」、安倍首相は「子どもたちをポルノ産業から守るということをきっちり進めていこうという流れ」と発言。志位氏は次のように述べました。

     志位 児童ポルノは子どもに対する最大・最悪の虐待行為であって、おとなの責任で根絶しなければならないのは当然だと思います。

     ただ、いまインターネット上に流布されている児童ポルノはそのほとんどが現行法で取り締まることが可能です。

     一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、アニメや漫画などの創作物も規制対象にするということになりますと、これは児童ポルノ問題の解決に役に立たないばかりか、表現の自由、あるいは人権の侵害につながってきますので、私たちは反対です。

    最後の訴え

    “対決者の党”“建設者の党”――二つの役割を大いに発揮していきたい

     最後に各党党首が視聴者への訴えを行い、志位氏は次のように語りました。

     志位 二つの役割を大いに発揮していきたいと思います。

     一つは“対決者の党”としての役割です。いまアベノミクスの問題にしても、原発の問題にしても、憲法の問題にしても、安倍内閣の進んでいる方向に危機感や不安感を持っている方々はたくさんいらっしゃると思う。そういう方々にとって、もっとも頼りになる“対決者の党”としてのがんばりをやりたい。

     同時に、打開策をしっかり提示する“建設者の党”としての役割も果たしたいと思っています。


     ニコニコ動画 2006年に株式会社ドワンゴが設立。不特定多数の利用者が投稿した動画を共有しインターネットで視聴できる「動画共有サイト」です。07年から自作の番組などを配信する「ニコニコ生放送」を始めました。28日の「ネット党首討論」の視聴者数は10万人を超えています。

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