主張

過去最低の出生数

子育ての希望奪う社会を正せ

 日本の少子化が依然、深刻です。昨年1年間に生まれた子どもの数は約103万7千人にとどまり過去最低を更新しました。女性1人が一生に産む子ども数の推計値である合計特殊出生率はわずかに上昇したものの、少子化に歯止めはかかっていません。

 子どもを持ちたいと希望してもさまざまな困難を前に二の足を踏む―。そんな社会がいつまでも続いていいはずがありません。誰もが安心して子育てできる社会へ転換を急ぐことが政治の責任です。

若者を痛めつける異常

 政府が最近公表した少子化をめぐる統計数字は、結婚、子育てが、世界でもきわめて困難な日本の現実を浮き彫りにしています。

 出生数の減少傾向は変わらず、結婚数も約67万組で戦後2番目の低さです。合計特殊出生率1・41は16年ぶりの1・4台への回復ですが、20代での出産をためらっていた「団塊ジュニア」(1971~74年生まれ)世代が30代に出産時期を遅らせた一時的現象です。人口を維持できる水準2・07にはおよびません。フランス2・01、イギリス1・91、スウェーデン1・90と比べても低さは歴然です。

 第1子の平均出産年齢が昨年30・3歳と過去最高になり、男女とも初婚年齢が上がっていることも、20代では結婚や子育てが難しい実態の反映です。

 結婚・出産は、個人の選択であり、その権利が尊重されるのは当然です。問題は、結婚、子育てを願っても日本社会のゆがみが、希望の実現を妨げていることです。

 20~30代の労働者の年収は10年前と比べ、最も多い所得分布層でみて100万~300万円も低下しました。若者の2人に1人が非正規雇用で、非正規の30代前半の男性が結婚している割合は正規雇用の半分以下です。希望の子ども数をもてない理由について30歳未満の既婚女性の8割以上が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えています。

 不安定雇用と低賃金、重い経済的負担を強いられる子育て世代が将来に希望をもてるはずがありません。世界でも異常な長時間労働、第1子出産前後に女性の半数以上が仕事をやめる職場の現状を放置することはもはや許されません。

 歴代政権はここ20年間、少子化対策を掲げてきましたが、子育て世代を痛めつけてきたゆがみの根本を変えようとはしていません。それどころか大企業のもうけを優先し、雇用破壊・低賃金をもたらす政治をいっそう拡大させました。

 安倍晋三政権の「成長戦略」は、子育て世代に苦難をもたらす政治をさらに加速させるものです。「解雇自由化」や「サービス残業合法化」は、日本をますます子育てが困難な国にしてしまいます。子育て世代を使い捨てる「ブラック企業」が横行する社会など絶対にあってはなりません。

人間が大切にされてこそ

 結婚・子育てを「重荷」と感じさせる社会に未来はありません。

 子どもの安全が確保される認可保育所の増設など政治の役割はますます重要です。育児休業制度の改善なども急がれます。

 安心して子育てできる社会の実現は、安定した雇用と賃金、ゆとりある働き方、経済的な安定がなくてはなりません。日本共産党は、人間らしい働き方が保障される社会へさらに力を尽くす決意です。