テレビ東京系「週刊ニュース新書」
「躍進する共産党! いま何を目指すのか?」―こんなテーマで3日に放映されたテレビ東京系「田勢康弘の週刊ニュース新書」。番組冒頭から「共産党が躍進した秘密」に迫っていきました。
「共産党が躍進した秘密」は?―正面から対決で揺るがない政党求めていた
田勢 共産党の躍進を、私なりにその理由を分析しますと、いろんな政党、野党が「何でも反対の政党ではない」といい続けていました。それで、本当に自民党に反対してくれる政党は共産党以外なくなったんじゃないかという思いが広がった。どうですか。
志位 その通りだと思います。いま、国民のなかに、安倍内閣のやっていることは危ないぞと。例えば、消費税の大増税、原発の再稼働、憲法9条の改定、どうも危ない方向に行っているぞという危機感といいますか、不安感が広がっていると思うんですね。
そのときに、きちんと野党の立場で正面切って対決する政党、頼もしく、揺るがない、ブレない、そういう政党を求めていたという感じがします。
同時に、対決するうえでは、対案を持っていなくちゃ、対決できません。私たちは今度の選挙で、どんな問題でも対決と同時に対案を示す。アベノミクスに反対すると同時に、大企業の内部留保を活用して賃上げで景気回復をはかろうという対案を示しました。そういうことも一定の評価をいただけたのではないかと思います。
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番組中で挿入されたVTR(事前録画映像)では、共産党に1票を投じた有権者にその理由を聞きました。
「一番まとも。頑張ってほしい」との声から、「(主張が)通る、通らないは別として、(自民党に)強く言ってくれる党といったらここしかない」(男性)、「好きではないけれども、こちら(自民党)が勝ち過ぎたらいけないから」(女性)という声まで紹介されました。
ネット選挙―「共産党のイメージが変わった」(水原氏)
VTRで、田勢氏が赤旗編集局を訪れ、選挙結果の紙面を見ながら「獲得議席数以上にすごかった」と感想をのべた場面を番組で紹介。党本部を訪ねたVTRでは、ネット上に立ち上げた特設サイト「カクサン部」も登場し、キャラクターの「雇用のヨーコ」などが紹介されました。
水原恵理アナウンサー やわらかいイメージで、変わりましたね。
志位 そうですね。ネット選挙ですから、共産党の政策が若い人たちにすっと入っていくような、そういう工夫もしました。
水原 民主党をはじめ、多くの野党が議席数を大幅に減らすなか、共産党が躍進しました。ただ、社民党、生活の党なども共産党と同じように「脱原発」「反TPP」などを訴えましたが、大敗しました。この違いはどこにあるとお考えですか。
志位 社民党と生活の党について、私がコメントするのは控えたい。他の党のことですから。
水原 自民党に反対するという点では同じですが、共産党が伸びた理由は。
志位 ブレないで一貫してスジを貫くということは、評価されたと思っています。
若者と雇用問題―「一番反応があったのが共産党。若い人の投票率上がればもっと伸びる余地」(田勢氏)
田勢 今度の選挙の特徴は、若い人がかなり共産党を支持したんじゃないかと思います。やはり、ネット選挙でも一番反応があったのは共産党の候補者、それから共産党そのものだと思います。ですから、若い人たちの投票率が上がっていけば、これからかなり共産党も伸びる余地はまだあると思います。
志位 若い方々、とくに雇用の問題は大きかったですね。「ブラック企業」と言われていますが、若い人を大量に採用して、ひどい働き方をさせたあげく、病気にさせ、辞めさせていく、という企業のあり方でいいのかという問題をずいぶん問題提起しました。
さっき「雇用のヨーコ」が出てきましたけれども、「雇用のヨーコ」が「ブラック企業にお仕置きよ」と言っているビラがあるんですよ。そういうものも作ったんですけれども、多くの若い人たちに受け取っていただけるという状況がありました。若いみなさんが人間らしい雇用を求めているなと強く思いました。
田勢 私も大学で長い間、教壇に立っていて、学生の就職活動の厳しさを現場で見ているものですから、そういうときに、共産党の候補者、とくに東京の候補者が自分の体験を話しておられました。何十社も申し込んでも全部落ちるという。ああいうことが共感をよんだような気がしますよね。
志位 東京の吉良(よし子)さんにしても、大阪の辰巳(孝太郎)さんにしても、自ら歩んできた道、そのもののなかで大変な就職難、就職氷河期といわれるような状況のなかで苦しんだ。その声をそのまま届けたいという話でした。若い方々の心にすっと響いたんじゃないかと思います。
「好きじゃないけど期待する」人には―今度はまるごと好きになってもらう努力を
田勢 一方で、年配の人のなかに、VTRにもありましたけれど、「共産党は好きじゃない。だけどもう期待できるのは共産党だから入れるんだ」と。こういう人も相当、いるような気がしますよね。
志位 いらっしゃると思います。いまの野党の全体の状況のなかで、とくに主要な野党がどれも自民党の亜流みたいな政党になってしまっているなかで、きちんと国民の声で「ダメなものはダメだ」「ならぬものはならぬ」と言う政党がほしいという思いで、投票してくださった方はたくさんいらっしゃると思います。
そういう方々にはですね、今度は共産党を丸ごと好きになってもらうような努力はしていきたいと思っています。
「安倍政権にどう対峙」―どんな問題でも対案示していきたい
「安倍政権にどう対峙(たいじ)」というテーマでも志位さんに肉薄。番組は、憲法、消費税、原発などで自民党の悪政と対決する日本共産党の政策を紹介し、番組進行役の一人、中川聡アナウンサーが「このなかで真っ先にやるべきこと、力を入れることはなんでしょう」と志位氏に問いかけました。
志位 どれも大事ですが、暮らしの問題が大きいと思います。「アベノミクス反対」とありますが、アベノミクスがやろうとしていることは、たとえば「雇用の流動化」の名で解雇の自由化をはかる、あるいは派遣労働をもっと増やす、こういう方向には断固反対ですし、消費税増税には断固反対です。
どうやって不景気を打開していくのかといえば、私たちは大企業の内部留保の一部を活用して安定した雇用と賃上げにあてる。だいたい大企業の内部留保の1%を活用したら、8割の大企業で月額1万円の賃上げできますから。そういう方向で暮らしと雇用をよくしていく。国民の所得を増やして景気回復をということにうんと取り組んでいきたいと思っています。
田勢 そこで尋ねたいのが原発です。半世紀近い原発でプルトニウムが40トンある。使用済み核燃料が1万7000トンくらいある。福島の事故を起こした1号機から4号機をどうやって廃炉するか決まっていない。この問題をどうしますか。
志位 今、問われているのは原発を再稼働させていいかどうかで、大争点だと思います。今、言われたように再稼働させたら、また核のゴミが出てくるし、プルトニウムが出てくる。
何より、福島の現場にいくと(事故が)収束していません。放射能汚染水が海に漏れていたというのも大問題になっている。そして何よりも15万人という方々が、不自由な先の見えない避難生活を強いられている。こういうもとで再稼働などできません。
できないのだったら、やっぱり原発はとめたまま廃炉にする。そして、廃炉の決断をして再生可能エネルギーへの大転換を決断するというのがまず、出発点として必要だと思います。
憲法―改悪阻止に向けた一点共闘を
番組では、自民党がおしすすめる憲法改定が問題に。「改憲勢力が(国会で)3分の2を占めるには公明党がどういうスタンスをとるかが重要になってくる」として、日本共産党と公明党が「お互い(改憲反対で)協力することはあるのか」との質問が出ました。
志位 公明党と直で、今、そういう関係をやる条件はないと思います。
ただ改憲手続きの要件を定めた憲法96条改定問題は、「立憲主義を壊すものでダメだ」という声が、9条をかえてもいいという人も含めて広がっている。だから、この一点で協力できる勢力とはどの勢力とも協力して阻止していきたいと思います。
自民党の元幹事長の古賀誠さんが「しんぶん赤旗」に登場して、「96条改定大反対」ということもいっていますから、この一点で協力できる勢力とは協力して食い止めていきたいと思っています。
田勢 憲法改正を今よりもしやすくするために96条を変えるという発想と、(「集団的自衛権」行使に関する)憲法の解釈を変えるために内閣法制局の長官を変えるという発想が、非常に似ている。ねじれ解消の結果、これが出てきたかというのはビックリする。
志位 正面から問題を堂々と問うというのではなくて、まさに邪道で、ことを進めてしまおうというやり方だと思います。
麻生発言―ナチズム肯定、民主主義否定の暴論
水原 憲法改正という点でいえば、ドイツのナチス政権を引き合いに出した麻生副総理の発言が問題になっていますが、どう受け止められましたか。
志位 発言の詳細をよく読みましたが、どう読んでもナチズム肯定、民主主義を否定する暴論だと思います。なにしろ、ワイマール憲法を機能停止に追い込んだプロセスを、(麻生氏は)「あの手口を学んだらどうかね」といった。この部分は明瞭です。
ナチスがワイマール憲法をどうやって停止においこんだかといったら、国会放火事件をデッチあげる。反対派をどんどん弾圧する。そして、「授権法」という「全権委任法」を通して、憲法機能を停止させる。暴力と弾圧で憲法を破壊したわけです。
その手口に「学んだらどうかね」というのは、日本の政治家としても失格だといわなければならないと思います。
中川 であれば、今後は辞任要求や内閣不信任案につなげていこうという考えはあるのでしょうか。
志位 辞任すべきだと思います。
第2次世界大戦後の国際秩序というのは、日独伊の行った侵略戦争は不正不義のものであって、二度と繰り返してはならないというのが共通の土台となっている。この土台をひっくりかえしてしまったら、国際政治に参加する資格はありませんし、国政にも参加する資格はないと思っています。
「価値観外交」―世界共通の価値観に逆らえばどの国からも相手にされなくなる
田勢 特に世界は安倍政権を右傾化の心配があると見ているわけです。アメリカを含めて。こういう問題が出てくると国内の問題にとどまらない。日本は(世界で)孤立するおそれもあります。
志位 よく安倍さんは「価値観外交」といいますが、「価値観」というなら、先ほどいった日独伊のファシズムと軍国主義を二度と許さないというのが(国際政治での)共通の「価値観」だと思います。
これはアメリカも含めて世界中の「価値観」です。それに逆らうような方向の発言を安倍さん自身もやっているところに根っこがあると思います。そういうやり方では世界のどこの国からもまともに相手にされなくなる。ですから、その根を絶つ仕事が大事になってくると思います。
「一点共闘」―一致する一点で草の根レベルで声をあげよう
「野党共闘は先導できるか」とのテーマでは、参院の東京選挙区で当選した山本太郎氏が登場。「共産党は頭脳明(めい)晰(せき)な集団。経済至上主義への反対勢力が連携する必要がある」とコメントしていたことが紹介され、志位氏が受け止めを聞かれました。
志位 私たちは、大きい政党でも、小さい政党でも、無所属の方でも、政策的立場が一致して、お互いに共同の意思があれば、協力するという立場でやってきましたし、これからもやっていくつもりです。
田勢 たとえば憲法96条でも、自民党の古賀さんが「赤旗」で意見を述べられる。自民党の中でもそういう人がいるわけです。幅広い国民レベルでの反対をどうやって結集していくかは共産党の一つの重要な責任だと思います。
志位 それは大変、重要です。国会の中だけでみないで、国民レベルでみたら、憲法9条の改定も、96条の改定も反対が多数派です。ですから、いかにその流れを大きな流れにしていくかが、決定的だと思います。
たとえば憲法9条については大江健三郎さんなどが「九条の会」をつくられて7000もの草の根の組織があります。これをうんと発展させていく必要があると思います。
「96条の会」には、9条の立場を超えて慶応大学の小林節さんから奥平康弘さんまで入って共闘がされていますから、「一点共闘」と私たちはよんでいますが、一致する一点で草の根レベルで声をあげていくことが大事だと思います。
日本への提言―国民の声で動く新しい政治を
最後に「日本への提言」をフリップで示すよう促された志位氏は、「国民の声で動く新しい政治」を掲げ、次のように述べました。
志位 今、国民の多数の声と安倍政権のやる方向がねじれていると思います。「ねじれ解消」といいますが、「ねじれ」は変わっていない。消費税の問題も、原発の問題も、憲法の問題も。ですから、国民の多数の声で動く新しい政治をつくっていきたいと思います。
「番組あとがき」―ショパンを好きか嫌いか
番組では、マスコット猫「まーご」も登場、志位氏に首をなでられ、気持ちよさそうに寝ころびました。最後に、番組恒例の「今日のあとがき」で、田勢氏がピアニスト、アルフレッド・コルトーの言葉―「世の中には2種類のピアニストがいる。ショパンを弾くピアニストと、弾かないピアニストだ」を引用しました。
田勢 志位さんは若いころ、ピアニストをめざされたことがあるとか。
志位 ピアニストではないんですが、音楽家をめざしたことはあります。
田勢 ショパンは好きですか、嫌いですか。
志位 大好きです。いくつかは練習したこともあります。
田勢 ピアニストはどなたが弾くショパンが一番?
志位 もう亡くなったんですけど、スヴャトスラフ・リヒテルさんですね。コンサートは来日のたびに通いつめました。ショパンも素晴らしい演奏がたくさん残っています。
田勢 私はアシュケナージとかアルゲリッチのショパンを聞いているんですけど。
志位 アルゲリッチさんもいいですね。リヒテルのショパンの中で特に忘れられないのは、練習曲の4番をものすごい速さで弾いているのがあるんですね。これは素晴らしい演奏が残されています。
番組はなごやかなうちに終わりました。