主張

正社員リストラ

企業のモラルが問われている

 正社員にたいする悪質で卑劣なリストラ・解雇が大企業職場を中心に横行しています。昨年13万人の大規模な人員削減を強行した電機産業では、半導体大手のルネサスエレクトロニクスが8月末までに三千数百人の削減を目標に退職強要を繰り返しています。同社は、昨年も5700人の目標を大幅に上回る七千数百人を早期退職させたばかりです。労働者の自由意思を踏みにじり、何度も面談に呼び出して退職を強要するのは、明確な権利侵害であり違法です。国民のくらしの土台である雇用を乱暴に奪う、企業の違法行為を許すことはできません。

「成長戦略」の先取り

 ルネサスの人員削減は、今後の大企業による正社員リストラの広がりを予知させる重要な内容がみてとれます。課長職の労働者を総合職に降格させ、早期退職の対象者にするやり方は事実上の「指名解雇」にほかなりません。多い人で8回も面談に呼び出して精神的に追い詰める手口、退職に応じなかったら会社都合による「整理解雇」を実施すると脅迫するなど、違法、横暴の総動員です。労働者を追い出すためなら何でもやるという姿勢があからさまで、モラルや社会正義のかけらも感じられません。

 退職に追い込む決め手として使っているのが「キャリア相談」です。上司から「退職願」と「再就職支援サービス利用申請書」の用紙が渡されます。申請書には、パソナ、ランスタッドなど5社の「再就職支援会社」の名があり、希望する会社を選択するようになっています。

 会社は、面談で労働者に「キャリア相談を受けろ」とくりかえします。退職して新しい職探しの相談に行けという意味です。パソナなどの「再就職支援会社」は、すでに社内で労働者が来るのを待ち構えています。労働者を追い出す企業と、受け皿になる企業が一体になってリストラを推進する構図ができています。

 これは安倍晋三政権が「成長戦略」でめざす労働の流動化政策の先取りといえるものです。安倍政権は、雇用を「維持型」から「移動支援型」に変える方針です。これまで雇用を守る企業の支援に使ってきた1千億円を超える「雇用調整助成金」を、労働者を切り捨てる企業を支援するために使う、百八十度の転換をうちだしています。

 企業が、労働者の再就職を職業あっせん会社に委託する費用は、労働者1人100万円前後が相場だといわれます。これが国の助成金の活用で企業負担が軽くなり、職業あっせん会社も利益が転がり込みます。しかも労働者の再就職先は、待遇が悪化するケースが5割近くで、非正規雇用も少なくありません。身勝手なリストラの横行で、雇用不安がますます深刻になることが懸念されます。

連帯の力ではねかえす

 安倍政権の「成長戦略」による雇用破壊と、これを先取りした大企業の無法なリストラや解雇から、雇用と人権を守るたたかいの重要性が高まっています。日本IBMが労働者に「成績不良」のレッテルをはって突然、「ロックアウト解雇」するような無法も絶対に許すわけにはいきません。退職強要や不当な解雇に断固反対し、労働者、労働組合の連帯の力ではねかえそうではありませんか。