主張

軍事費概算要求

侵略のための軍隊になるのか

 2014年度予算の概算要求が30日締め切られ、このなかで防衛省は今年度より1390億円多い4兆8928億円の概算要求を提出しました。

 安倍晋三政権は年末に新しい軍拡計画「防衛計画の大綱」を策定する作業を進めています。概算要求にもりこまれている「離島防衛」や警戒監視能力の強化、弾道ミサイル防衛、サイバー攻撃への対応強化などはすべてその先取りです。とりわけ重大なのは自衛隊の“海兵隊化”と敵基地攻撃能力の保有の推進です。日米軍事同盟を優先し、歯止めのない軍拡を加速する安倍首相の“暴走”は危険です。

“海兵隊化”と敵基地攻撃

 軍事費は昨年度まで10年連続で削減されていましたが、安倍首相が政権に復帰してすぐに見直し、今年度予算で400億円増やしました。14年度概算要求は、それをはるかに上回ります。まさに大軍拡への本格的突入です。

 安倍政権が狙っている自衛隊の“海兵隊”機能の強化では、米海兵隊が使っている水陸両用車を13億円かけて2両購入することにしました。今年度予算で購入した4両と合わせて6両になります。大型の「おおすみ」型輸送艦を、上陸作戦にも使えるよう改修し、水陸両用車を輸送し、発進できるようにすることも狙っています。

 防衛省は6月に米国で陸海空3自衛隊の部隊と米海兵隊で行った水陸両用戦闘能力強化のための共同訓練を今後も行うとしています。米海兵隊の最新鋭輸送機オスプレイの自衛隊への導入をめざしているのも“海兵隊化”を加速させるためです。

 “海兵隊化”は、自衛隊が米海兵隊のように世界のどこの戦争にも“殴り込む”軍隊になることです。米国が自衛隊に米軍戦略の補完的役割の強化を迫っている中で、「離島防衛」が目的であるかのように言って“海兵隊化”を進めるのは国民をあざむくものです。

 防衛省の概算要求が、長距離攻撃と爆撃能力をもつ最新鋭のF35戦闘機を4機購入するために693億円を計上したことも重大です。12年度4機、13年度2機購入と合わせて10機になります。安倍首相が国会で、「F35の能力も生かしていくことも検討しなければならない」とのべているように、F35の拡充は「敵」のミサイル発射基地など「敵基地攻撃」に活用することを含んだものです。「自衛」の範囲を超えて他国の領土を先制攻撃できる能力をもつこと自体憲法違反であり、許されません。

 “海兵隊化”も敵基地攻撃能力強化も、自衛隊を「専守防衛」を大義名分にした軍隊から、侵略のための軍隊に変えるものです。安倍首相は日本が攻撃もされていないのに米国とともに海外で戦争する「集団的自衛権」の行使にふみだそうとしていますが、それだけに自衛隊に海外で戦争する能力をもたせるのは危険です。

統合運用強化も狙う

 防衛省は概算要求の公表と一体で、「防衛省改革の方向性」と題する文書を発表しました。自衛隊で文官と制服組の垣根をなくし、自衛隊の統合運用を強化し、より実践的に「戦争する軍隊」に変えることを狙うものです。

 国民生活を圧迫する軍事費の拡大を許さず、安倍政権が狙う危険な軍拡の道を阻止することがいよいよ重要です。