「政府の能力に疑問」「海洋放出か」
東京電力福島第1原発で大量の汚染水漏れが明らかになったことに、世界のメディアの注目が集まっています。日本政府が3日に発表した汚染水問題の基本方針に対しても、厳しい目を向けています。
2020年五輪の開催地を決める国際オリンピック委員会総会が開かれているアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、同原発での汚染水対策について、4日の記者会見で質問が集中しました。
アルゼンチン紙リオネグロ(4日付電子版)は、東京招致委員会の竹田恒和理事長が同会見で、「大気中と水中の放射能の測定値はいかなる異常も示していない」と述べたことを紹介。「(汚染)水の危機は明らかに懸念となる。2020年までフクシマがどう進展するのか誰も予知できない」と指摘しました。
同日付の米紙ニューヨーク・タイムズは汚染水対策の不備を指摘する長文の記事を掲載。日本政府が発表した汚染水対策の基本方針について、「東京が立候補している2020年五輪開催地を決める国際オリンピック委員会をにらんで発表されたのではないかと多くの専門家が考えている」と疑念を表明しました。
海洋汚染では
漁業資源への影響から、海洋汚染に神経をとがらせる報道もあります。
4日付の韓国紙・朝鮮日報(日本語電子版)は、日本政府が改良と増設に150億円を投じるとしている多核種除去設備(ALPS)について、「現在設置されているALPSの1日処理容量は200トン程度で、原発から出る汚染水400トンを処理するにはまったく足りない」と指摘しています。
フランスのメディアは、原子力規制委員会の田中俊一委員長が2日の外国特派員協会での会見で、「基準値以下の汚染水を海に放出するのはやむをえない」と発言したことを即座に報道。ヌーベル・オプセルバトゥール誌(2日付電子版)は、「間もなく意図的な海洋放出か」との見出しで報じました。
原子力行政批判
前出のニューヨーク・タイムズの記事は、原発周辺や海洋での環境汚染が事故から2年以上経過した今も累積し続けていると指摘。「専門家は、政府や東電がこうした複雑な危機に対応する技術や能力を持っているのか疑問を持ち始めている」と不信を表しました。
米誌スレート(5日付仏語電子版)は、「日本、“原子力ムラ”に病む国」との論考を掲載。「安倍政権に支えられた原子力ムラは(汚染水から)国民の注意をそらし、全てが解決すると納得させたがっている」とのテンプル大学日本校、ジェフ・キングストン教授の言葉を紹介しています。