米国のケリー国務長官とロシアのラブロフ外相がシリアの化学兵器を2014年前半までに廃棄させる国際的枠組みで合意したことで、シリアに対する一方的な軍事攻撃は回避される見通しとなりました。

 この背景にあるのは、一方的な軍事攻撃は許されないとする世論が米国をはじめ各国で急速にたかまり、政府と議会の態度に大きな影響を与えたことです。米国などがシリア政府が化学兵器を使用したと断定して、一方的な軍事攻撃を主張し、準備していた状況から、武力ではなく外交的手段で、化学兵器廃棄への道筋をつけた今回の合意は、国際平和のうえでも大きな意味を持っています。

 日本共産党は、シリアへの軍事攻撃の動きが出てきた8月30日、「違法な軍事攻撃の企てに強く反対する」との志位和夫委員長の談話を発表。「化学兵器の使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大な残虐行為である」と批判するとともに、「国際社会が一致して化学兵器の廃棄を迫ることこそが、この問題の解決の道」と指摘しました。

 日本共産党はこの立場で、国際社会の一致した努力をすすめるために、国連安全保障理事会のメンバー国と20カ国・地域(G20)の在日大使館・代表部を党国会議員が訪問、大使らと懇談しました。届けることができるすべての在外公館にも談話を届けました。

 志位委員長は11日、シリアのワリフ・ハラビ駐日臨時代理大使と日本共産党本部で会談し、化学兵器廃棄と内戦の政治解決を提起しました。志位氏は、シリアの化学兵器禁止条約への参加と化学兵器の国際管理・廃棄というロシアの提案を「問題の政治的解決の道を示したものとして歓迎・支持する」と表明しました。

 さらに3年近くに及ぶシリア内戦について、「シリア政府と反政府勢力の双方が真剣な政治対話を開始し、双方を包括する暫定政権樹立をめざす」努力を求めました。

 ハラビ氏は、志位談話と二つの提案を本国に伝えると表明しました。

 発表された米ロの合意では、シリアでの化学兵器廃棄が進まない場合には国連安全保障理事会での武力行使を含む制裁を検討するとされています。その上、ケリー米国務長官は枠組みが実行されない場合の米国による一方的軍事行動の選択肢は消えていないと発言しています。今後、さまざまな曲折が予想されますが、一方的軍事攻撃を許さない国際世論をさらに強めていくことが求められています。

 (外信部長 西村央)