消費税増税と「一体」の大企業減税に固執する安倍晋三首相の姿勢が異常です。来年4月から消費税の税率を8%に引き上げる“条件づくり”として、首相は法人税の減税に執着。税収不足を懸念する財務省さえ押し切って、法人税の実効税率引き下げの検討を指示しました。

 大企業減税のメニューは、それだけではありません。(1)震災復興のための法人税増税の前倒し廃止(2)設備投資減税(3)法人実効税率の引き下げなど空前のばらまきをすすめようとしています。庶民からは消費税増税(税率8%)で8兆円も吸い上げて大企業にばらまく“逆立ち政治”です。

 とくに復興法人増税を1年前倒しで廃止し、企業に9000億円負担軽減するのは異常というほかありません。復興はまだ道半ばであるうえ、住民税・所得税の増税はそのままでなぜ法人税増税だけを廃止するのか、まったく説明はつきません。

 また、消費税増税法でも、「消費税の収入については…年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」とされています。法人税の実効税率引き下げは、公共事業などの臨時の支出と違って、恒久措置ですから、増税法の規定に反することになります。この点の説明はなにもありません。

 首相の異常な姿勢の根底には、「大企業が潤えば景気はよくなる」という究極の“トリクルダウン”(滴り落ち)理論があるようです。大企業減税のバラマキも“トリクルダウン”政策の税金版にすぎません。旧自公政権以来の大企業応援政治のもとで、大企業は空前の収益をあげ内部留保をため込みながら労働者の収入は減少したように、貧困と格差を拡大させた破綻済みの「理論」です。

 こうした動きに与党内からも「法人税を減らしても企業の内部留保を増やすだけ」、「税収が減っては財政再建の建前にも、社会保障を充実するという『公約』にも反する」と、批判の声も上がっています。

 メディア関係者からも「所得の再配分で国民の生活を安定させるのが政治の基本だが、いまや政治が機能せず、政治の体をなしていない」という声が漏れます。

 主権者国民の声を無視し、ひたすら「企業天国」を目指す政治に批判が巻き起こるのは避けられません。(中祖寅一)