「オール・ジャパン」といいながら…
消費税増税と一体でバラマキ
政府は今月中に策定する消費税増税に伴う経済対策に、復興特別法人税の前倒し廃止を盛り込もうとしています。消費税率を引き上げて国民から吸い上げる一方で、大企業には震災復興の税負担すら免除するやり方に、「復興は半ばなのに、大企業だけに空前のバラマキとは、許せない」と批判の声が上がっています。
復興特別法人税は、東日本大震災の復興財源にあてるために2012年度から3年間の期限で上乗せ徴収しているものです。今検討されているのは14年度末の上乗せ終了予定を1年前倒しして、13年度末に特別税を廃止しようというものです。
復興財源としては企業への課税のほかに所得税と住民税が増税されています。所得税は37年12月までの25年間、住民税は23年度末までの10年間、上乗せされます。スタートの段階から庶民負担が企業より重くなっていました。それを消費税増税による景気悪化対応としての企業減税の実施は、企業を二重三重に優遇するものです。
東日本大震災からの復興財源は、11年12月に成立した復興財源確保法にもとづいています。個人・企業から幅広く徴収することになったのは、復旧・復興のための財源は、「今を生きる世代全体で連帯し、負担を分かち合う」(11年9月13日、野田佳彦首相=当時=の所信表明演説)という考えからです。経団連も当時は「経済界としては、オール・ジャパンで復興を支える観点から、法人税につき一定の負担を分かち合うことを否定するものではない」(経団連「12年度税制改正に関する提言」)としてきました。
復興特別法人税は、恒久的な法人実効税率の引き下げとセットで実施されました。法人実効税率を5%引き下げると同時に、法人税額の10%を復興特別税として上乗せ徴収するという形になっています。企業にとっては、実質負担は震災前よりむしろ下がりました。
安倍晋三政権は今回の復興特別法人税の前倒し廃止に加えて、「近い将来に法人税を5~10%軽減」することを検討しています。
庶民には復興特別所得税・住民税を続け、さらに消費税増税を押し付けておきながら、大企業には減税することが「企業が最も活動しやすい国」をめざすアベノミクスの本質です。
被災者は納得しません
いわて生協常務理事 磯田 朋子さん
いわて生協も加わる「くらしを考えるネットワークいわて」は6月と9月、宮城、福島の両県の人たちと、政府や国会議員に消費税増税中止の要請をし、被災者の声も届けてきました。それを無視して庶民への増税だけを強行し、「景気対策」と称して復興法人税を打ち切って大企業をうるおすのは、納得がいきません。
増税は住宅再建を切実に願う被災者をさらに苦しめるものです。
釜石市に住む義理の父母は津波で3階部分を残して自宅を流されました。狭い仮設住宅での生活を強いられ、「将来が見えず、お金をあまり使えない」と嘆いています。買い物をして重い荷物を持っても、タクシーを使わずに歩いて帰ります。
住宅再建のための国・県・市の補助もありますが、遠く及びません。
27日の「消費税大増税ストップ! 国民集会」に参加し、発言します。被災者の実情を知らせ、4月からの増税を必ず阻止したい。