主張

年金・手当の削減

暮らしの現実を見ない暴走だ

安倍晋三政権が公的年金や一人親家庭への手当などの削減を、10月分から実行します。すでに8月から実施されている生活保護費の過去最大の削減に続く、国民生活破壊の暴走です。安倍政権の「アベノミクス」による物価高騰などで暮らしはますますきびしくなり、国民は生活の支えを切実に求めています。その現実をまるで無視し、社会保障給付削減と消費税増税を容赦なく強行する安倍政権になんの大義もありません。

困難抱える世帯を直撃

 10月分(12月受け取り分)からの年金削減は、昨年の国会で民主党政権が提案し、民自公3党などの賛成で成立した年金改悪法にもとづくものです。老齢年金、遺族年金、障害年金について、現在の支給額を3年かけて2・5%引き下げる計画です。10月から1%、来年4月から1%、再来年4月から0・5%と連続カットです。過去に例のない規模とやり方です。

 同じ時期、消費税税率は来年4月から8%、再来年10月から10%へ大幅にアップしていきます。頼みの年金はどんどん目減りする半面、買い物するたびにかかる消費税は重くなる―。高齢者の暮らしを直撃する政治に怒りの声が上がり、年金受給者が「納得できない」と全国各地で不服審査請求に立ち上がる運動を開始したのはあまりに当然です。

 10月からの給付減は年金受給世帯にとどまりません。一人親家庭約109万世帯が受給している児童扶養手当も削減されます。最初の半年に0・7%カット、3年で1・7%もの削減です。なかでもシングルマザー世帯の所得は子どものいる一般世帯の4割以下です。いまもギリギリの生活を強いられている母子世帯の手当削減は、世界最悪の水準の母子家庭の貧困状態をますます加速します。

 重度の障害者と障害のある子どもへの手当(のべ約40万人が受給)、平均年齢が78歳を超える被爆者の約17万人が受給している健康管理手当なども3年連続でカットされます。障害や原爆被害で特別な支援が必要な人たちへの支給を削り込む冷たい仕打ちです。

 困難を抱えている人を狙い撃ちにする年金・手当削減はなんの道理もありません。政府が持ち出す削減理由は“過去の物価下落時に支給額を下げなかった”です。この理由は実態とかけ離れています。物価の下落幅が大きいのは、もっぱら大型テレビやパソコンなど高齢者や母子世帯がひんぱんに購入するものではありません。それどころか食料品などは上がっています。お年寄りや子ども、障害者に切実な医療費などは大幅に引き上げられています。過去の物価下落時に年金・手当額を据え置いたのも、受給者の生活状態がとても引き下げできる状態になかったことを想起すべきです。

消費税増税の中止を

 パンなどの食料品、電気代などの値上げが本格化しているいま、年金・手当の削減の強行は国民の暮らしに計り知れない打撃を与えます。暮らしを壊す暴走をやめさせるたたかいが急がれます。

 年金・手当の削減は消費を冷え込ませ、「デフレ不況」克服にも逆行します。いま必要なのは年金・手当を充実させる社会保障の再生と改革です。国民生活と日本経済に大打撃となる消費税増税の強行など断じて容認できません。