新規制基準3カ月
いま日本の原発50基(東京電力福島第1原発1~4号機は廃炉決定のため除外)は一つも稼働していません。原子力規制委員会の「新規制基準」が7月に施行され、4電力6原発10基の再稼働に向けた審査が行われています。加えて先月27日、東京電力は汚染水問題が非常事態にもかかわらず、柏崎刈羽原発6・7号機の再稼働の申請をしました。規制委は事業者に注文をつけながらも、再稼働の資料提出を促すなど審査を早めようとする動きをみせています。(柴田善太)
規制委は新基準施行3カ月にあたる8日、再稼働申請審査中の6原発10基について、重大事故が起きた場合の対策の有効性や、地震・津波・火山対策など主な審査29項目の電力会社の資料提出状況リストを示しました。(表)
提出数が一番多い四国電力伊方原発3号機でも提出済みが10項目で、3分の1の状態です。
規制委の更田(ふけた)豊志委員は、事故の発生頻度と影響を計算上評価する「確率論的リスク評価」と、原発設計の前提となる想定される地震による最大のゆれを示す「基準地震動」の提出が1原発もないことについて、「この点の説明がないと次に進めない」と指摘。「効率的審査」のために資料提出時期のめどを示すことを電力会社に求めました。
また、規制委の担当者は「書類の提出数が多いから進んでいるわけではない」と、内容に問題があることも指摘しています。
新基準での再稼働にむけた会合は10日で31回になりました。毎回、規制委側、電力会社側それぞれ約15人が向き合い、電力会社の報告を受け規制側が問題点を指摘する形で行われます。
審査では時には厳しいやりとりも交わされています。関西電力は大飯原発、高浜原発周辺の三つの断層が「連動して動かない」という主張を繰り返し、連動の可能性を指摘する規制委側の専門家に「間違っている」と迫る局面も。結局、規制委が追加調査を求めました。
一方で見解が分かれても「よし」とする事例もあります。九州電力川内原発の敷地内に過去の火山噴火で発生した火砕流が到達した可能性について、九電が「ない」としたことに対し規制委は「あるという立場だ。(九電提出の)資料は古い知見だ」と指摘をしながら、「検討してほしいことはあるが大筋で一段落」と、この点での審査を終えました。
規制委の担当者は「われわれのマンパワーがいっぱい、いっぱいということもある。(再稼働を)申請しているんだからちゃんと(資料を)出してほしいという事業者へのメッセージ」と述べ、審査を加速させる構えを示しています。
新規制基準 東京電力福島第1原発の事故を受け、原子力規制委員会が原発の安全審査のため新たにつくった基準。7月から施行されました。原子炉の炉心溶融・損傷、格納容器の破損、放射性物質の拡散など過酷事故への対策を盛り込む一方、原発敷地境界での放射線量を規制した立地指針や、事故が起きたときの住民避難計画などは外されています。過酷事故対策でも多くの問題点が指摘され、「再稼働ありき」の基準となっているのが特徴。すでに、北海道電力泊原発1~3号機▽関西電力大飯原発3、4号機▽同高浜原発3、4号機▽四国電力伊方原発3号機▽九州電力川内原発1、2号機▽同玄海原発3、4号機▽東京電力柏崎刈羽原発6、7号機について審査の申請が出ています。