主張

債務不履行の回避

米国民の批判浴びた強硬右翼

 世界をやきもきさせた米議会の与野党対立が瀬戸際で決着し、米国債のデフォルト(債務不履行)は当面回避されました。確かに、問題が4カ月足らず先送りされただけで、解消したわけではなく、今後も混乱は予想されます。しかし、自国民と世界を“人質”にしてまで、歴史に逆行する特異な立場を押し付ける右翼強硬派議員の策動は、米国民からますます孤立しないではいられません。

公的保険つぶそうと

 米議会の対立は米政府機関の一部閉鎖を招いただけでなく、債務上限引き上げの手だてを縛り、債務不履行の危険が迫っていました。基軸通貨国の債務不履行という未踏の領域に踏み込むことで、リーマン・ショックを上回る重大な金融危機と世界的な景気後退を招く危険が警告されてきました。今月開かれた20カ国財務相・中央銀行総裁会議の声明は、米国に「緊急の行動をとる必要がある」と強調していました。

 米議会の与野党対立は、オバマ政権による医療保険改革をめぐるものです。国民皆保険制度をもたず、医療保険は民間企業が中心の米国で、改革は5000万人近いとされる無保険者の解消をめざしたものです。公的医療保険制度の整備は米国民にとって重要な成果であり、後退させることのできないものです。

 ところが、野党・共和党は「小さい政府」を信奉する立場から公的保険制度の整備を敵視してきました。背景には、公的保険を押しとどめたい保険会社の議会工作もあるとみられます。

 なかでも、公的保険制度の実現をあくまで阻止するため、新年度予算と債務上限引き上げに徹底的に抵抗してきたのが、「茶会」系など右翼強硬派の議員たちです。小選挙区制のもとでこれらの議員は、予備選を勝ち抜き、再選を確保するために、支持基盤である保守層の歓心を買おうとして過激な動きをとってきました。政策論争ではなく、医療保険改革の実施を妨害し、オバマ政権にダメージを与えようとするものでした。

 それが国民生活を掘り崩し、国民の離反を招いています。下院で多数を占めるにもかかわらず、世論調査での共和党の支持率は20%台に落ち込んでいます。そのもとで、同党指導部も妥協せざるをえなくなり、来年2月7日まで国債の発行を認め、1月15日までの暫定予算を成立させることで合意しました。共和党のベイナー下院議長も「敗北」を認めました。一時は注目を浴びた「茶会」系議員の主張は、共和党内でさえ孤立せざるを得ないものです。

求められる債務抑制

 米国債は日本や中国をはじめ海外で保有されています。今回の事態に直面して、米国が責任ある対応をとるよう日本や中国などが求めたのは当然です。年明けにふたたび同様の混乱を招かないためには、米国で政府のあり方をめぐる議論が熟することが必要です。

 米国が対外債務を野放図に積み上げることは基軸通貨国としての責任に反します。とりわけ、米国がアフガニスタンとイラクでの誤った戦争で、軍事費を大規模に支出したことは重大な問題です。戦争は両国の国民と米国民にも大きな被害をもたらしました。債務抑制には軍事費の削減と対外政策の転換が不可欠です。