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秘密保護法案に対する仁比議員の質問―参院本会議
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秘密保護法案に対する仁比議員の質問―参院本会議

2013-11-28 11:09

     日本共産党の仁比聡平議員が27日、参院本会議で行った秘密保護法案への質問は以下の通り。

     憲法の基本原理を踏みにじる希代の悪法、特定秘密保護法案の乱暴極まる衆議院採決を強行した安倍内閣および衆議院与党の暴挙に、満身の怒りをもって抗議し、安倍総理に質問いたします。

     およそ国の行政機関が保有する情報は、主権者国民のものであります。その国民世論をみるなら、総理、「何が何でも今国会で成立させる」など、もっての他ではありませんか。先週、本法案の廃案を求め、日比谷公園を出発したデモは1万人を超え、夜10時すぎまで国会を包囲しました。日本弁護士連合会、日本ペンクラブ、テレビのキャスター、出版人、演劇人、憲法・メディア法・刑事法・歴史学者など、これまでにない広範な人々が反対の声をあげ、日本新聞協会や日本雑誌協会、日本民間放送連盟も強い危惧を表明しています。どの世論調査でも、反対の声は急速に広がって半数を超え、今国会で成立させるべきではないという声は8割に上っています。

     あなたは、先の参議院選挙でも一切この法案に触れることはありませんでした。にもかかわらず、何を目的に、ここまでして強行しようというのですか。

     国連人権高等弁務官事務所の表現の自由担当特別報告者は、国際人権条約に照らし、「本法案は秘密に関し大変広範かつあいまいな領域を規定するのみならず」「深刻な脅威を含んでいる」と法案段階で異例の懸念を表明しました。国際ペンも反対し、日本外国特派員協会は、法案の全面撤回を勧告しています。総理。あなたはこの国際社会の批判にどう応えるのですか。答弁いただきたい。

    憲法と両立しない

     本法案に、立場を超えてやむにやまれぬ反対の声が噴き上がっているのは、法案の骨格そのものに、国民主権と言論表現の自由をはじめとした基本的人権の保障、平和主義という、侵してはならない憲法原理とおよそ両立しえない重大な危険性があるからであります。

     第一に、特定秘密は、「我が国の安全保障にとって著しく支障を与える恐れがある」など広範かつあいまいな要件で政府が指定し、何が秘密かも秘密とされることです。

     森担当大臣は「原発の情報は秘密とならない」と繰り返す一方、「原発の警備の実施状況は特定秘密たり得る」と答弁しました。ところが、テロ防止の警備態勢と一体のはずの原発の脆弱(ぜいじゃく)箇所や侵入可能経路など、テロリストが知れば資する情報が特定秘密になるのかについての答弁は支離滅裂です。総理。一体どうなるのですか。

     総理は、同盟国との情報共有をいいますが、米国の国際法に違反する通信傍受によって得られた情報など、違法に収集された情報も特定秘密にするのですか。森大臣は「違法に収集された情報の秘密指定は無効」などと答弁していますが、そこにいう「無効」な秘密指定が、誰によってどのように正されるというのですか。正されないなら何の歯止めにもなりません。個別の秘密指定については何のチェックも働かず、国民に指定解除の権利も認めないのはなぜですか。

     これまでも政府は、軍事、外交、原発、TPP(環太平洋連携協定)をはじめ、国民が強く求める情報を秘匿・隠蔽(いんぺい)し、墨塗りにしてきました。その上、法案によれば、政府当局の恣意(しい)的判断で秘密は際限なく広がります。しかも秘密指定は政府の判断で更新でき、解除しても廃棄でき、修正合意では指定期限が60年と延長されるなど、事実上「いつまでも秘密」になるのではありませんか。

     国民の知る権利を奪い、政府が情報を独占して、権力の集中を図る。わが国を、そんな国に断じてしてはなりません。

    一般の国民も対象

     第二に、本法案が懲役10年以下の重罰と威嚇の対象とするのは、限られた公務員のことさらな漏えい行為だけではなく、広く国民のふつうの日常とその自由だということです。

     一般の国民も「特定秘密を保有する者の管理を害する行為により特定秘密を取得した」とされれば、たとえ秘密が漏えいされなくても、未遂、共謀、教唆、扇動も広く処罰されます。この点で、森大臣の「一般の国民が、特定秘密と知らずに情報に接したり、その内容を知ろうとしたとしても一切処罰の対象となりません」とした答弁は、密室の取り調べで自白を強要してきた刑事司法の現実にあえて目を背けさせるとんでもない詭弁(きべん)であります。総理。法案が規定する罰則違反の容疑があり、その事件で必要であれば逮捕・勾留しての取り調べ、捜索差し押さえ、起訴されて被告人として刑事裁判にさらされることはあり得ますね。報道機関や取材の自由に「配慮」がなされたとしても、個別の事件捜査に必要であるなら、強制捜査はあり得ますね。

     しかも逮捕・勾留や、捜索差し押さえの令状にも、起訴状にも、判決にも、一体どんな情報に近づいたことが罪とされるのかさえ、明らかにされないのではありませんか。憲法が保障する国民の裁判を受ける権利、弁護を受ける権利を踏みにじり、裁判の公開原則を侵すものに他なりません。

     そんな暗黒社会を断じて許すことはできません。総理。何が秘密かもわからないまま、被疑者扱いされ、適切な弁護も受けられずに、最終的には刑事裁判で無罪とならなければ、処罰の対象となるかどうかわからない。そんな重罰法規を作るのなら、それだけで民主主義社会の基礎である知る権利、言論・表現の自由は萎縮させられ、取り返しのつかない傷を負うことになるのではありませんか。

    国民監視の仕組み

     第三に、政府が、秘密を取り扱う者に行う「適性評価」の名の下に、「家族、父母、子、兄弟姉妹、配偶者の父母、子、同居人の氏名・生年月日・国籍・住所」にはじまって、犯罪・懲戒の経歴、薬物の影響、精神疾患、はては飲酒の節度や借金など信用状態まで、広く国民のプライバシーを根こそぎ調べ上げる国民監視の仕組みが作られることです。その対象も、公務員のみならず、国から事業を受注して特定秘密の提供を受けた民間企業やその下請け企業で働く労働者、派遣労働者も含まれるのです。

     その調査と評価について、森大臣は各大臣が「当該行政機関の職員」に行わせるといいますが、具体的に、どのような体制で調査し、収集した情報はどのように扱うのですか。法案にいう「必要事項の照会」や「関係行政機関の協力」の名の下に、公安警察や、すでに自衛隊に置かれその活動が地方裁判所で違法とされた情報保全隊などによって行われることになるのではありませんか。明確にお答えください。

     重大な人権侵害法案と処罰規定がかくもあいまいかつ広範で、質疑を行えば行うほど、適用範囲が逆にあいまいになっていくところに、法案の危険な本質があらわれています。

     総理。法案準備過程の審議内容を明らかにすべきではありませんか。それさえ墨塗りにした上、担当大臣の答弁が二転三転と迷走しています。これでは、法案を現実に運用する行政機関、そして捜査機関の恣意的乱用を野放しにすることになるのではありませんか。それとも、あえてそれを狙っているのですか。法案準備過程にも関与せず、法案所管部局への指揮命令権限さえ持たない大臣を担当大臣に任じた総理の責任は重大です。

     なぜ安倍政権は「何が何でも」今国会で成立をと暴走するのか。「安全保障のためなら、秘密にして当たり前」だというなら、大本営発表で国民を欺いたあの戦争の誤りを再び繰り返す道です。あなたがまずやるべきは、「大量破壊兵器がある」と米国の誤った情報をうのみにして強行したイラクへの自衛隊派兵を、徹底して検証し、猛省することではありませんか。「米軍とともに海外で戦争をする国」をつくる、そのために国民の目と耳と口をふさぐ秘密保全体制を作ろうというのが本法案強行の狙いであります。

    国会議員も対象

     同僚議員の皆さんに警鐘を鳴らしたい。この法案は、国会議員をも処罰の対象としています。

     たとえ政治的立場は違っても、国民を代表し、巨大な行政権力・官僚機構に断固として迫ってこそ、国会議員ではありませんか。憲法と相いれない法案の危険は、衆議院における修正によっていささかも減じられていません。これを国民に押しつける資格など政府にも、国会にもありません。まして、会期末まであと1週間しかない今国会で強行しようなど、「国権の最高機関」たる国会の自殺行為は絶対にありえない。

     参議院がそうした道をたどってはならない。断固、廃案にするほか無いことを厳しく指摘して、質問を終わります。

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