主張

介護改悪意見書案

高齢者と家族に安心の制度を

 介護保険改悪の議論をしてきた厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会が、意見書案を大筋まとめました。年末の正式決定を受け、安倍晋三政権は改悪法案を来年の通常国会に提出する構えです。国の責任を後退させ、利用者、家族、介護労働者に重い負担と痛みを強いる意見書案には部会の委員からも異論が出ています。高齢者が増加し、公的介護の役割がますます重要になるとき、改悪は完全な逆行です。必要な介護から締め出され、行き場を失う高齢者を激増させることは許されません。

道理のなさが浮き彫り

 いま狙われている介護保険改悪は、消費税大増税と社会保障改悪の「一体路線」の大きな柱の一つに位置づけられているものです。

 社会保障費の抑制・削減の中期的な日程・段取りを定めた「社会保障改悪プログラム法案」(今国会で審議中)には、“来年の国会に介護改悪法案提出・再来年4月に改悪実施”の方針が書き込まれています。こんな改悪日程を勝手に決めて国民に押し付けること自体、まったく不当です。プログラム法案は廃案にするのがスジです。

 重大なのは、国民に「自助努力」を迫るプログラム法案が、介護分野でも「(個人の)自助努力が喚起される」仕組みづくりを政府に求め、その方針にそって介護改悪が具体化されてきたことです。

 改悪法案の骨格となる介護保険部会意見書案には介護保険の従来のあり方を大きく塗り替える項目が次々と書き込まれました。

 一定所得以上の高齢者の利用料の1割から2割への引き上げは、2000年の介護保険開始以来、初の利用料増です。「一定所得」といっても対象は65歳以上の5人に1人にもなる案が検討されています。1割負担でも経済的理由からサービスをあきらめる人が相次いでいます。所得に応じて保険料を払っている高齢者にまで“利用料の応能負担”を迫ることは、制度の根幹にかかわる大問題です。

 特別養護老人ホーム入所者を原則「要介護3以上」にすることは高齢者、家族の実態を無視しています。自宅介護をしながら、せっぱ詰まった思いで入所を待つ人たちの願いに背く改悪は、家族が、高齢者の介護度悪化を願う“非人道的”な結果さえ生みかねません。

 「要支援1、2」の利用者を国基準の介護保険給付から全面的に切り離し、市町村事業に「丸投げ」する方針は、「軽度の介護外しは許されない」との批判と運動の広がりで全面改悪は断念させました。しかし、要支援者の約6割が利用する“命綱”の訪問介護と通所介護を市町村事業に移す方針には固執し、撤回していません。要支援者の国基準のサービス切り離しの道理のなさは明確です。訪問介護と通所介護の市町村事業への“丸投げ”方針も断念すべきです。

“家族”への逆行許さず

 公的介護保険は、高齢者の老後の人権と尊厳を保障し、家族の負担を軽くするために導入されたはずです。国の責任を大後退させる意見書案は、その理念に反します。「家族介護」に再び依存することは、高齢者と家族の暮らしを危機に追い込み、現場を疲弊させる結果にしかなりません。

 介護大改悪を許さず、高齢者が安心して年を重ね、介護に携わる人たちも希望をもてる安心の制度への改革・拡充が急がれます。