広がる賃上げ世論
労働総研調べ
資本金10億円以上の大企業が保有する内部留保が、前年度比で5兆円増の272兆円(2012年度)に達することが全労連・労働運動総合研究所(労働総研)の調べでわかりました。大企業が内部留保を着実に積み増す一方で、民間企業労働者の年間平均賃金は、賃金のピーク時に比べ約60万円も減っています。
大企業は、法人税の引き下げや租税特別措置による減免という優遇策の恩恵を受けつつ、定期給与の抑制や非正規雇用化など労働者に犠牲を強いることで、内部留保を増やしてきました。
1997年度の約142兆円と比べると約130兆円も増やしています。(金融、保険を除く約5000社が対象)
企業ごとにみると、突出して多いのがトヨタ自動車です。前年度より1兆341億円増の15兆2025億円になりました。持ち株会社では、第1位が三菱UFJフィナンシャル・グループの9兆9193億円で、3位、4位も巨大金融機関が占めています。
これに対して民間企業労働者の年間平均賃金は、賃金のピークだった1997年の約467万円から、2012年には約408万円と約60万円も減っています。
この賃金抑制と非正規雇用化が、長引く「デフレ」不況の原因です。昨年から景気回復にむけて賃上げを求める世論が広がっています。しかし、東京新聞の報道では、賃金の増額をおこなうとした企業は主要321社中19・3%にとどまっています。
全労連・国民春闘共闘は、大幅な賃上げを求めています。
内部留保 企業の収益から原材料費や人件費などの諸費用を引いた利益をもとに税金を払い、株主配当などを除いたものを企業が蓄積したもの。
各社の内部留保1%活用で 81社が1000人以上雇用
国公労連試算
国公労連は『2014年国民春闘白書』をもとに、大企業の内部留保の一部を活用することによって、大幅な雇用増や賃上げが可能だとする試算をまとめています。
試算によれば、雇用創出にかかわって、それぞれの企業が内部留保をわずか1%活用するだけで、主要企業131社のうち81社で1000人以上の雇用(年収300万円、1年間)が可能だ、としています。このうち7社で1万人以上、16社で5000~1万人未満の雇用が可能です。
企業ごとにみると、トヨタ自動車では内部留保の1%を活用するだけで5万人を超える雇用増になります。日本経団連の米倉弘昌会長の出身企業である住友化学では、1734人の雇用増が可能です。
正規従業員全員に1万6千円以上の賃上げをする場合、102社で内部留保3%未満を取り崩すだけでできます。さらに、95社では、内部留保の3%未満を取り崩すだけで、当該企業に働くすべての労働者に対して月1万6千円以上の賃上げができます。
トヨタ自動車の場合、正規雇用労働者33万3千人、非正規雇用労働者8万3千人に対して月1万6千円の賃上げを実現するには、内部留保の0・67%を取り崩すだけでできます。
日本経団連の米倉会長は、新年メッセージで「民主導の力強い持続的な経済成長の実現にまい進する」と表明。「企業業績の改善が、投資の拡大と雇用の創出、そして賃金の引き上げにつながる『経済の好循環』をつくり出すべく努力していく」としています。
しかし、今回の試算で明らかなように、内部留保を一部活用すれば、「経済の好循環」を待つことなく新たな雇用の創出も、賃金の引き上げも可能です。
2014年春闘にむけて全労連・国民春闘共闘は、時給120円以上、月額1万6千円以上の賃上げと、最低賃金要求として時給1000円、日額8000円、月額17万円の到達を目指すとの方針を掲げています。