主張
大企業向け減税
国民へのつけ回し 筋が通らぬ
安倍晋三政権が20日、今年初めての「産業競争力会議」と「経済財政諮問会議」を開き、「産業競争力」の強化など、「アベノミクス」の加速を打ち出しました。中でも見過ごせないのは、法人税減税の具体化を持ち出したことです。
経済財政諮問会議では、現在約35%の法人実効税率を10%も引き下げる案まで出されました。国民には今年4月からの消費税率の8%への引き上げに続き、来年10月からは10%に引き上げようとしているのに、法人税率は大幅に引き下げるというのは筋が通りません。どこまで国民へのつけ回しと“たかり”を続けるのでしょうか。
恩恵は一握りの大企業
国税と地方税を合わせた法人への実効税率は繰り返し引き下げられており、東京を例にとると現在35・64%です。3年間の時限措置で上乗せされていた復興特別法人税は、1年前倒しで廃止されることになっています。さまざまな租税特別措置や設備投資などの政策減税もあるので、実際の税負担はもっと軽くなっています。
法人税はもともと赤字の企業には課税されないので、法人税減税の恩恵を受けるのは一握りの大企業だけです。安倍政権は、法人税を減税し大企業のもうけが増えれば、雇用も賃金も拡大すると経済の「好循環」を売り物にしてきましたが、実際にはもうけが増えても内部留保に回す大企業がほとんどで、雇用や賃金の改善には結びつきません。年明けのマスメディアなどの調査でも、今年売り上げや利益が増えると見込む企業が大半でも、従業員の賃金を上げるという企業は5社に1社以下です。7割の企業が「未定」というありさまです。法人税が下がり、利益が増えても、経済が「好循環」する保証はありません。
経済財政諮問会議で企業経営者や学者などの民間議員は、日本国内への投資を拡大するため、法人税を「アジア諸国並み」に引き下げると言い出しました。日本の法人実効税率は、アジア諸国よりは高いものの、アメリカよりは5%も下回っています。社会保障のための負担を含めれば、欧州諸国さえ下回ります。企業が投資するのは賃金などのコストや近くに市場が確保できるかなどの条件によるもので、税金さえ下げれば投資が増えるというのは幻想です。「投資拡大」の口実も成り立ちません。
法人税を減税すれば税収が減り、ただでさえ赤字が続く財政がさらに悪化するのは明らかです。さすがに麻生太郎財務相は、法人税率を10%引き下げれば約5兆円も税収が減ると指摘しました。しかし安倍首相は、「レベニューニュートラル(増減税同額)」でなくても検討は進めると、法人税減税に前のめりです。まず法人税を減税し、そのつけはあとからというのでは危険このうえありません。
大企業応援政治の転換を
万一、法人税減税の穴埋めに消費税の税率が10%を超えさらに増税される事態にでもなれば、それこそ国民の暮らしも経済も破綻してしまいます。大企業への大盤振る舞いのつけを国民に転嫁し、国民にたかって穴埋めするなどというのは絶対に許されません。
大企業応援の政治から暮らし応援の政治に抜本転換すべきです。理屈の立たない法人税減税は中止し、消費税増税の中止など、国民の暮らしと経済を改善すべきです。