主張

憲法解釈変更

9条の有名無実化許されない

 安倍晋三首相が集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認めようとしていることについて、憲法改定の是非に関する立場の違いを超え、批判の声が広がっています。首相のたくらみを許せば、現代国家の立憲主義、法治主義の大原則が破壊されるという批判です。広範な人々とスクラムを組んで、日本を「海外で戦争する国」に変えるため憲法の政府解釈を覆そうとする動きに、ストップをかけなければなりません。

元長官の呼びかけ

 元内閣法制局長官の阪田雅裕氏は、国会内での「超党派議員と市民の勉強会」(20日)で、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更によって、「9条はなくなる」と強調しました。これまでの政府の立場からしても、9条は有名無実になってしまうという警告です。

 国連憲章は、武力の行使を禁止し、国際紛争の平和的解決を定めています。その例外としているのは、個別的自衛権とともに、他国を防衛する集団的自衛権の行使と、国連安保理の決定に基づく集団安全保障措置です。

 政府は1954年に創設した自衛隊の存在を「合憲」とするため、戦力不保持を定めた憲法9条の下でも、「わが国に対する武力攻撃を排除するための必要最小限度の実力の行使」(個別的自衛権の行使)は認められるという見解を示してきました。一方で、海外での武力行使となる集団的自衛権の行使や集団安全保障措置への参加は憲法上許されないとしてきました。

 安倍首相の有識者懇談会(安保法制懇)は4月にも、憲法解釈を変えるだけで、このいずれについても認められるとする報告書を提出しようとしています。これでは、日本は憲法9条を持ちながら、国際法上認められるとされる、あらゆる武力の行使が可能になってしまいます。

 阪田氏は、「わが国の平和主義がそういうものだと国民は思っていたでしょうか。政府は考えていたでしょうか。決してそうではない」と強調しました。

 阪田氏が述べたように、集団的自衛権の行使を認めることは、「自衛隊が海外に行って戦争できる」ようになることであり、「国の形が大きく変わる」ことです。自衛隊員が海外の戦闘で他国の人々を殺し、殺される事態も生まれかねません。そんな重大なことを一内閣の憲法解釈の変更でやるのは、法治国家の根幹にかかわります。

 自衛隊を違憲と考える人にとってはもちろん、「合憲」と考える人にとっても、決して見過ごしにできない大問題です。

 安倍首相は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を認めることが可能だとの考えを繰り返しています。安保法制懇の北岡伸一座長代理は、「憲法を厳格に守っているだけで安全は守れるのか」とまで述べています(21日、日本記者クラブでの会見)。

最高規範性を否定

 これは、憲法についての見解が対立する問題は便宜的な解釈の変更によってではなく憲法改正の議論によって解決するのが筋だとしてきた政府の立場さえ否定するものです。憲法の最高規範性、「憲法で権力を縛る」という立憲主義、さらには国民主権の原則をあまりにも軽んじた考え方です。

 安倍首相の暴走を阻止する広範な世論と運動が急がれます。