自民党の萩生田光一(はぎうだ・こういち)総裁特別補佐は23日のフジテレビ番組で、政府が河野洋平官房長官談話の検証作業を実施することに関し、「新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいい。(安倍晋三首相も新談話を)どこでも否定していない」と述べ、検証結果によっては新たな談話を発表すべきだと指摘しました。

 同日、萩生田氏は記者団に対しても、菅義偉(すが・よしひで)官房長官が河野談話の作成過程の検証作業を行うと繰り返し述べていることを指摘し、「検証の結果と、河野談話の中身と事実の違うものがあれば、それは国民に知らしめるべしだ」「新たな政治談話を出すことは全然おかしなことではないと思う」と語りました。談話見直しに固執し、新談話もあり得る考えを示したものです。

世界の不信呼ぶ「挑発」

 安倍晋三首相の側近の一人として知られる自民党の萩生田光一総裁特別補佐が、首相が日米韓首脳会談へ向け日本を出発した当日に、「河野談話」の見直しは当然ありうるという姿勢を示したことは、韓国をはじめ国際社会を「挑発」する重大発言です。

 安倍首相は14日の参院予算委員会で「河野談話」について「安倍内閣で見直すことは考えていない」と言明しました。韓国側はこれを関係打開のサインとして「評価」。アメリカ政府の仲介で、核セキュリティーサミット(ハーグ)の場で日米韓3カ国首脳会談が実現する運びとなりました。しかし、日韓修復の見通しは依然として立たず、首脳会談の場で歴史問題は話し合われないとされています。

 「河野談話」をめぐっては、菅官房長官が「河野談話」の作成過程の検証作業を行うとの姿勢を崩さず、「河野談話」の見直しはしないという首相発言と矛盾した対応をとっています。

 こうしたなかで、検証から「新たな事実が出てくれば、新しい談話を発表すればいい」という発言は、「談話見直し否定」の否定にほかなりません。首相側近の発言であるだけに、韓国や国際世論の不信と批判を呼ぶことになり、首脳会談そのものに悪影響を与える可能性さえあります。

 ハーグへの出発にあたり首脳会談を「未来志向の日韓関係に向けた第一歩としたい」と述べた首相の言葉をも打ち消す発言です。

 萩生田氏は、安倍首相の代理として昨年8月15日に靖国神社に玉ぐし料を奉納しました。昨年末の安倍首相の靖国参拝強行に米国政府が「失望した」と声明を出すと、「オバマ政権だからだ」などと批判しました。「われわれのほうがディサポインテッド(失望)だ」と米国を逆批判した衛藤晟一首相補佐官らと並ぶ、「靖国」派=日本会議国会議員懇談会の中心人物の一人です。

 こうした勢力の跋扈(ばっこ)を容認する安倍首相の姿勢は、外交の行き詰まりを深め、いっそうの国際的孤立を招くことになります。(中祖寅一)