生活保護基準の引き下げと連動して、自治体が行っている高校生の「奨学金貸付事業」を縮小する自治体が相次いでいることがわかりました。奨学金貸し付けの収入基準などが生活保護水準を基準にしているためです。安倍内閣は「他の制度に影響させない」と繰り返し答弁していましたが、2015年度にも縮小する自治体がさらに増える見通しで、国の対応が問われます。

7県が変更

 都道府県で実施している高校奨学金は全国で16万1000人が利用しています(2012年度)。

 本紙の問い合わせに、茨城、栃木、千葉、長野、富山、和歌山、徳島の7県が今年度から所得基準を変更すると回答。高知、鹿児島などでは2015年度以降に変更を検討すると答えました。

 長野県では、世帯全体の収入が生活保護世帯の1・5倍以下を基準にしており、保護基準の引き下げにともない、奨学金貸し付けを受けられなくなる人がでてきます。13年度の利用者は831人、貸付額は公立で月額1万8千円、私立は3万円です。

 茨城県は、高校生本人を含む3人世帯について、奨学金支給対象となる給与収入が351万9千円以下から344万円以下に引き下げました。4人世帯では、424万3千円以下から418万5千円以下に引き下げられました。昨年度の利用者は133人でした。

 富山、徳島両県は、奨学金支給の基準を引き下げたものの、所得控除額(所得から引くことができる額)を上げたので、実質的に減らないように緩和されると県側は説明。一方、栃木や千葉は、生活保護基準の見直しとは別に、参考にしている日本学生支援機構が給与所得者の控除額を見直したことなどによる緩和だと説明しました。

支援行わず

 政府は自治体に対して、さまざまな制度利用者に生活保護基準「見直し」の影響が及ばないよう「依頼」しているだけで、影響がないようにする財政支援は一切おこなっていません。

 奨学金だけでなく、小学校や中学校の学用品費や給食費を補助する「就学援助」(155万人利用)の制度についても縮小の動きが広がっています。東京区部では中野、杉並両区が、生活保護基準引き下げに連動し、就学援助の認定基準を引き下げました。

 中野区は、標準4人世帯の認定基準(生活保護世帯の1・15倍以下)を、413万円から390万円に引き下げました。現在2958人の利用者ですが約200人減る見込みです。

 杉並区は、4人世帯の認定基準(生活保護世帯の1・2倍以下)を、418万円から今年度394万円に引き下げました。担当者は「現在約5600人の奨学援助の認定者が数百人程度減るのではないか」と話します。区では教材費や修学旅行費の補助を別途、実施するとしています。(浜島のぞみ)