主張

新国立競技場計画

意見に耳を傾け仕切り直しを

 2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる国立競技場(東京都新宿区)の建て替え計画に、建築の専門家や市民団体から異論が相次いでいます。巨大な施設が景観を破壊することや、多額の改築費用や維持費が膨張していることなど多くの問題点が明らかになっています。将来の東京のまちづくりや国や都の財政負担など国民の暮らしに影響する問題でもあります。国民の疑問や不安を置き去りにして建設を急ぐのは、あまりに乱暴です。

巨大施設は時代に逆行

 国立競技場の建て替え計画は、現在の競技場を解体し、跡地に8万人収容の巨大スタジアムを新築するものです(19年完成予定)。延べ床面積は約22万3千平方メートルで、現競技場の4倍を超え、高さも現在の2倍以上にもなります。

 国立競技場がある明治神宮外苑は、都心に残る貴重な緑地です。そこにそぐわない巨大施設が出現することに著名な建築家などから「自然や景観を著しく損なう」などきびしい批判が上がったのをはじめ、周辺住民からは施設の巨大化にともなう立ち退きへの不安の声が続出しました。

 国立競技場を管理運営する日本スポーツ振興センター(JSC)が5月末の有識者会議で承認した基本設計では、国民の批判を意識して、高さを当初より5メートル低い70メートルにする手直しなどはしたものの、巨大施設をつくる方針はあくまで堅持しました。総事業費は昨年の単価をもとに1625億円と算出しましたが、消費税5%時の試算のため今後膨張することは避けられません。国と都の費用分担も決まっておらず、今後の火種です。

 会議では委員から「建築家や専門家などから疑問の声が上がっている」と慎重論もありましたが、JSCは「時間がない」などと押し切りました。計画をめぐる議論の進め方自体、あまりに拙速です。

 五輪などのために巨大施設を建設することは、世界的な潮流にも逆行しています。巨大施設は五輪後に使用回数が減るなど「お荷物」になった例は少なくありません。

 新国立競技場も年間維持費がいまの5億円から大幅にはね上がるとされています。スポーツ競技だけでその金額はまかなえず、コンサートもできる設備整備も計画に加えるなど費用がかさむ「悪循環」にもなっています。巨額な維持費は将来世代に重いツケを回す事態になりかねません。

 国際オリンピック委員会(IOC)の環境基準は、競技施設について「まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない」などと明記しています。この規定に照らせば、新競技場計画の道理のなさは明白です。

解体工事は延期を

 現在の競技場は5月末で閉鎖し、7月に解体開始の予定です。日本建築家協会は、「様々な代替案が出ている状況の中で解体工事に進むこと」を危ぐし、解体延期を政府、都、JSCに要請しています。日本共産党都議団は、各界の意見を聞き情報公開のもとでの計画の早急な見直しを求めています。

 多くの国民の同意や納得を抜きに巨大施設の建設を急ぐことは将来に禍根を残します。東京五輪・パラリンピック成功を願う人たちの思いとも相いれません。幅広い意見に耳を傾け、計画を抜本的に見直すことが求められます。