主張

武器輸出拡大

「死の商人」への加速許せない

 武器輸出を基本的に禁止していた「武器輸出三原則」を撤廃し、新たに武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」を閣議決定(4月1日)した安倍晋三・自公政権が、武器輸出拡大に向けた動きを加速しています。同政権が、「積極的平和主義」の名の下に進める、集団的自衛権の行使容認など「戦争する国づくり」の一環であり、憲法の平和原則を空洞化させる重大な動きです。

米の軍需産業を補完

 安倍政権は17日の国家安全保障会議(NSC)関係閣僚会議で、米国へ迎撃ミサイル「PAC(パック)2(ツー)」の部品の輸出を認めることを決めました。「防衛装備移転三原則」に基づく初めての決定です。

 PAC2は、航空機などを撃ち落とす地上発射のミサイルです。今回輸出を認めたのは、ミサイルが目標を追いかけるための高性能センサーの部品です。米軍需企業大手のレイセオン社から設計や製造技術などの使用許可(ライセンス)を得て自衛隊向けにPAC2を生産していた三菱重工業が輸出します。米国がPAC2の中東・カタールへの輸出を決めたことを受け、すでに同部品の生産を終了していたレイセオン社が三菱重工に要請していました。

 「防衛装備移転三原則」の「運用指針」によると、日本が武器を輸出した国がさらにその武器を第三国に輸出する場合、原則として日本政府の事前同意が必要です。ところが、今回の場合は、ライセンス生産品(高性能センサーの部品)をライセンス元(レイセオン社)に輸出するケースであり、例外だとしています。日本政府の同意もなく、米国政府の判断だけで他国への輸出が可能になります。

 知らないうちに日本で製造した部品が組み込まれたミサイル(PAC2)が、カタール以外の他の中東諸国に輸出され、紛争に使用される危険があります。日本政府は、パレスチナとの紛争が続くイスラエルに輸出される可能性も否定していません。

 自衛隊の兵器の調達は、米国を中心にした海外軍需企業からライセンスを得て日本国内で生産する割合が、額にして全体の約2割を占めるといいます。今回の決定は、「米国によるPAC2の生産・維持に寄与する」としているように、米国では生産が終わっているものの、使用は続いている兵器部品を日本で生産させるという、米軍需産業の補完体制づくりの第一歩であることは明らかです。

 17日のNSC関係閣僚会議では、戦闘機に搭載するミサイル技術の共同研究を英国と行うことも決めました。日本政府は、米国を中心に国際共同開発をしている最新鋭戦闘機F35への搭載を目指しています。同機は日本を含め世界各国で最終的に3000機超が配備される見込みで、紛争で使われる危険も小さくありません。

共同開発を積極推進

 政府・防衛省は6月、「防衛生産・技術基盤戦略」を発表し、国内軍需産業の「国際競争力」強化に向け、兵器の国際共同開発・生産の推進を打ち出しました。その先頭に立って、英国、フランス、オーストラリアなどとの協力関係構築を図ってきた安倍首相の姿は異常です。

 武器で潤う「死の商人」国家へと国のあり方を根本的に変える政治は、絶対に認められません。