主張
軍事費概算要求
「戦争する軍隊」へ危険な加速
防衛省は2015年度軍事予算(防衛予算)の概算要求で、過去最大となる5兆545億円を計上しました。前年度比1697億円、3・5%の増で、5兆円の壁を越えました。垂直離着陸機オスプレイや水陸両用車、無人偵察機など新兵器の導入も次々と盛り込み、「海外で戦争する軍隊」へと自衛隊が変貌するのを一層加速する危険な内容となっています。
5兆円の壁突き破る
15年度の軍事予算は、安倍晋三自公政権が昨年末に閣議決定した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(14~18年度)」(中期防)を具体化するものです。
「大綱」・「中期防」は、歴代政権が基本理念としてきた「専守防衛」の建前を後景に追いやり、陸・海・空の自衛隊が一体となって、海外派兵をはじめ多面的な軍事作戦を迅速かつ継続的に展開する「統合機動防衛力」の構築を打ち出しました。そのために「防衛力の『質』及び『量』を必要かつ十分に確保」(「大綱」)すると強調しました。今回の概算要求が5兆円を突破したのは、軍事力の「量」の確保という方針の反映です。
軍事予算は、第2次安倍政権発足まで漸減傾向にありました。ところが、同政権が初めて編成した13年度予算で増加に転じ、今回の概算要求で3年連続の増となるのは必至です。深刻な財政難にあるといって国民に消費税の連続増税を押し付けておいて、軍事予算を突出させることはまったく筋が通りません。
「質」の点でも重大です。
防衛省は今回の概算要求で、オスプレイ、水陸両用車、無人偵察機、新たな早期警戒管制機などの導入を正式に決めました。
「島しょ防衛」を口実に、米海兵隊のような敵地への上陸侵攻=“殴り込み”作戦を主任務にした「水陸機動団」や水陸両用車部隊を長崎県佐世保市に創設し、オスプレイ部隊を佐賀空港に配備する関係経費も盛り込みました。
佐世保の「水陸機動団」と水陸両用車部隊、佐賀のオスプレイ部隊などを一体のものとして、「日本版海兵隊」をつくるという「大綱」・「中期防」の構想を本格的に具体化しようとする動きです。
見過ごせないのは、上陸侵攻作戦で、「水陸機動団」やオスプレイ、水陸両用車などを輸送し、作戦の指揮統制をしたり、負傷兵などの医療を行うことができる「多機能艦艇」の導入を念頭に、海外での調査の実施を決めたことです。
「多機能艦艇」といいますが、米海兵隊が地球的規模で展開する“殴り込み”作戦の海上拠点として使用している強襲揚陸艦にほかなりません。
際限ない軍拡競争に
「大綱」・「中期防」は、軍事力の「質」と「量」の必要かつ十分な確保が「抑止力」を高めることになると強調しています。
「抑止」とは、相手よりも軍事的に強いことをみせつけ、相手が報復を恐れて攻撃を思いとどまるようにすることです。しかし、相手が「抑止」されまいとすれば、さらに強くなろうとし、際限のない軍拡競争の悪循環に陥ります。
安倍政権が7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認と合わせ、周辺諸国との軍事緊張を高め、東アジアの平和な環境づくりに逆行する軍拡の道を阻止することがいよいよ重要です。