主張
ギャンブル依存症
カジノ解禁は亡国への道だ
日本の成人の4・8%(男性8・8%、女性1・8%)、推計536万人にギャンブル依存症の疑いがあるという厚生労働省研究班の調査が衝撃を広げています。
世界でも最悪のギャンブル依存の広がりが実証されたことで、安倍晋三政権が秋の臨時国会でねらうカジノ賭博場の解禁・合法化の危険性が鮮明になっています。
まともな対策がない日本
ギャンブル依存症(病的賭博)は、ギャンブルへの衝動が抑制できず、経済的、社会的、精神的問題が生じているにもかかわらず、やめることができない病気です。世界保健機関(WHO)は精神疾患と定義しており、世界的にその対策と治療・回復のための社会基盤づくりが課題になっています。
研究班は同じ方法で行われた比較可能な諸外国の調査結果もあわせて公表しました。豪州は男性2・4%、女性1・7%、米国1・58%、フランス1・24%、韓国0・8%となっており、日本の高さが際立っています。
厚労省の補助を受けて同じ研究班が2008年に行った調査研究では、日本の成人男性の9・6%、女性1・6%という深刻な数値が出されていました。これはカジノ推進派にとってきわめて都合の悪い事実でした。推進派の論客である美原融・大阪商業大学客員教授は「常識的に考えてこんなに多いはずはない」「データが古い。数字が独り歩きし、医者でもない人が数字だけをあげて盛り上げている」と攻撃しています。
今回の調査は、昨年7月に実施された最新データです。536万人という推計は、医者でもない人がいっていることではありません。北海道立精神保健福祉センターの田辺等所長は日本の依存症有病率の高さについて(1)パチンコなどギャンブル体験の日常化(2)サラ金など資金入手が容易であること(3)女性への普及―をあげています。日本の現状が世界に例のないものであることを示しています。
競馬など公営賭博の元締めになっている農水省、経産省などは、依存症の対策は何もしていません。パチンコを取り仕切る警察庁は、業界団体による形ばかりの相談センター設置でよしとしています。その結果、医療機関を受診する依存症患者は年間わずか500人です。大多数の患者と家族、周辺の人たちは、適切な救済を受けられず、苦しみ続けています。
カジノ推進派は「カジノは、パチンコや公営賭博とは違う高規格施設で、優良顧客だけを集めるから依存症患者は増えない」といいます。日本のカジノは厳格な規制下に置くから、依存症やさまざまな社会的問題を起こすことはないというのです。
しかし、現在国会に提出されているカジノ法案に、そのための具体的な方策は何も書かれていません。そんな規制や対策などできるはずがないからです。
政治の誤りただすとき
日本は刑法で賭博を禁止している国です。「社会の実情に合わない」(岩屋毅・カジノ議連幹事長)などと、まともな説明も無しにカジノ合法化をすすめ、それを「成長戦略の目玉」(安倍首相)に位置づけるなど許されません。多くの国民の不幸の上に、特定の勢力の法外なもうけを図る亡国のカジノ政治。これにストップをかける世論と運動を広げるときです。