主張

コメの価格暴落

主食と地域経済守る国の責任

 実りの秋です。今年は夏から秋にかけ、異常な気象が続きましたが、おいしいおコメが生産されています。にもかかわらずこの秋は価格の大暴落が続き、各地で米作が崩壊しかねない事態です。農協が出荷時に農家に支払う概算金(仮払金)が昨年に比べ、60キログラムあたりの全国平均で3000円前後(20~25%)も下がっています。

生産と地域経済に大打撃

 コメの販売価格は農家収入の大きな柱であり、農村経済にとっても重要な役割をもっています。異常な米価暴落は、生産農家はもとより地域経済にとっても大打撃です。東北各県の知事会や、米作県の市町村長からも政府に対策を求める声があがっています。

 暴落の原因は、前年からの過剰米です。安倍晋三政権が農家の所得安定のために作られた「コメ直接支払交付金制度」の廃止を打ち出し、今年から半減したことも追い打ちをかけています。日本共産党国会議員団は24日政府に緊急申し入れし、前年からの過剰米を市場から隔離し需給の安定をはかること、「直接支払交付金制度」を前年並みに戻すことを求めました。

 コメの需給と価格の安定は、日本の農政の重要な柱です。国民の主食を安定的に供給するとともに、農家と地域の経済を安定させるうえで不可欠です。日本政府は、コメを生産する力が需要を上回り始めた1970年代から生産調整(減反)をおこない、需給と価格の安定策をとってきました。その一方で、世界貿易機関(WTO)協定を受け入れて輸入を解禁し、食管制度を廃止し市場任せにするなど責任を弱めてきました。

 とくに生産調整と、生産者米価が生産コストを下回っている分を補てんするのを目的とした「直接支払交付金制度」(10アール当たり1万5000円)の当面半減、5年後廃止を安倍政権が強行したことは、コメの需給も価格も完全に市場任せにするものです。米価暴落を引き起こした責任は重大です。

 安倍首相は、アメリカ訪問中の講演でも「40年続いた、いわゆるコメの減反廃止を断行する」と自慢しています。米価の異常事態は一顧だにしません。地方創生、農業所得倍増を掲げながら、重要な柱である生産者米価の暴落を当然視する姿勢はまったく無責任です。

 政府は生産を大規模化すれば国際競争力がつくとして、大規模経営、生産法人などいわゆる担い手だけを対象にし、中小農家に農地を吐き出させる農地中間管理機構をつくるなど、環太平洋連携協定(TPP)受け入れを前提にした政策を強引にすすめています。米価暴落と直接支払いの半減で最も打撃を受けるのがその担い手です。「完全に採算割れだ」「機械代金が払えない」「コメ作りをやめる」など悲鳴が噴出しています。

コメ政策の抜本的転換を

 米価暴落を回避する緊急対策とともに、コメ政策を抜本的に見直すことが不可欠です。農家が展望をもってコメづくりに励み、安定的に供給する保障です。

 日本共産党は日本農業を壊滅させるTPP交渉からの撤退をまず求めます。国が生産と供給、価格の安定に責任をもち、生産コストを保障する不足払い制度や水田の多面的機能を生かす直接支払いを確立し、飼料米をふくめた転作条件の整備など多面的な利用をすすめるコメ政策をめざします。